第275話 迎撃

 むろん、彼らも敵がいつ強襲してくるか分からないため、警戒は備えてあった。

 国境線沿いにワイバーンに乗った竜騎士を定期的に飛行させる上に、偵察用の気球を上げて観察することによって警戒網を敷いていたのである。


『敵影確認!数およそ20!国境線を突破しました!!』


 竜騎士は上空から目視で敵を確認して、こちらに魔導通信を行ってくる。

 数が20というのは兵士としては少ないがそれは問題ないだろう。

 何せ、その20というのは全て怪物だからだ。

 無限食糧タングリスニにレギオン。

 両方とも、エキドナの落とし子の細胞と人間を流用して作成された存在であり、レギオンは無限食糧タングリスニを貪り食らい巨大化しながら、竜皇国内部を進行する。


「進行方向を予測しろ!速度と先に存在する村を算出しろ!」


「で、ですが相手は怪物ですよ!?気まぐれに方向を変える可能性も……。」


「人間の兵士相手よりもマシだろうが!簡易量産型魔導高射砲は今何門量産されている!?5門?十分だ!全て分解して竜騎兵に持たせろ!!」


「戦場を予測するんだ!あいつらの進行方向にある川を探し出せ!そこを防御線にする!!」


 作戦担当者たちは大至急怪物たちの進行方向や速度を予想して、さらに足止めできる地形、つまり川を探し出してそこを仮の主戦場へと設定する。

 川は天然の防壁である。しかもあの怪物はわざわざ迂回するなり、橋を探すなりそんなことはせずに、まっすぐバカ正直に突っ込んでくるに違いない。

 これが人間ではなく怪物の軍勢の欠点でもある。

 軍略ができる頭のいいゴブリンやら悪魔が指揮をとれば別だが、頭が悪い思考能力のない怪物ではただ進軍させるだけになってしまう。


 これ以上国土を侵攻させるわけにも、国民に被害を与えるわけにもいかない。

 至急兵士たちを戦場予定地へと向かわせ、分解した試作実験魔導高射砲も大至急向かわせて陣地を構築してレギオンたちを迎え撃つ形を取る。


「簡易量産型魔導高射砲、組み立て完了!魔力充電開始!!」


「了解!次の組み立てに移れ!敵は待ってはくれんぞ!通常の大砲も運び込め!!」


そんな風に戦争体制を整えていると、上空の竜騎兵から通信が入ってくる。


『目標接近!射程内へと侵入!戦闘態勢に入れ!!』

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