第276話 迎撃2

 竜皇帝内部のとある川沿い。そこには簡易量産型魔導高射砲を組み立てて敵を待ち構えている兵士たちが存在していた。

 試作実験で実射すら行っていない魔導高射砲の実験テストには最適ではあるが、下手をすればこの五門が全て暴発して破壊されてしまう可能性もある。

 そのため、上流の川の流れを堰き止め、いざという時には洪水でレギオンたちを押し流してしまう最終プランも存在し、別動隊が実際それを行っている。


「目標射程圏内に到達!撃てー!!」


 レギオンたちが川の向こう岸に近づいた瞬間、簡易型魔導高射砲は火を噴いて魔力弾を発射する。

 曲射ではなく直接、直線状に魔力弾を放つ直射だが、バカでかい図体をしているレギオンたちには容易く命中する。

 だが、貫通力が強すぎるために、柔らかい肉の体を持つレギオンの肉体に突き刺さり、それを貫通するだけで彼らには逆に大したダメージを与えられていない。


「魔力弾を変更!!貫通モードから炸裂モードに切り替えろ!魔力の再装填急げ!!」


 周囲の射手の言葉に呼応して、魔術師たちが魔導高射砲のマガジンを排出し、そこに新しく魔力を込めたマガジンを再度装填する。

 大達人(アデプタス・メジャー)のような選ばれた魔術師ではなく、哲人(フィロソファス)や実践者(プラクティカス)といった中堅の魔術師が数人がかりでも容易に魔力補給ができるようになっているのが今回の改善点である。

貫通モードではなく、炸裂モードの魔力弾がレギオンの肉体に命中した瞬間、内部で膨れ上がり爆発し、肉片を周囲にまき散らす。

 まるで風船が破裂するようにレギオンの肉体は炸裂弾によってバンバンと弾け飛んでいく。もちろん再生は行われていくが、やはり生体兵器という観点である以上、炎に焼かれたり爆発で焼かれたりすると再生能力が落ちることが確認できたのは幸いである。


「足だ!脚部を狙え!足を吹き飛ばせば歩けなくなるぞ!!」


レギオンは巨大な肉塊を無数の人間の脚で動かしているという不自然極まりない存在である。その弱い脚部を炸裂弾で吹き飛ばしてやればよい。

発射された炸裂弾が、5~6本の脚部を吹き飛ばすと、レギオンはバランスが取れなくなってそのまま前のめりに倒れこむ形になり、地面に倒れこんで動けなくなる。

他の脚もジタバタと動いてはいるが、そもそも接地していないため意味がないのである。さらにバランスが極めて悪いその体形では、一度倒れたら起き上がることはできなかった。

そんなレギオンを邪魔だ、と言わんばかりに後方のレギオンが引き裂いて貪り食らっていく。


「有効打を確認!足だ!足を吹き飛ばしていけ!!」



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