第274話 簡易量産型魔導高射砲

「簡易量産型魔導高射砲?」


 会議室に集められた時計塔の魔術師たちは、セレスティーナが作った魔導高射砲の設計図を見ながら、ルクレツィアの言葉をそのままオウム返しした。

 セレスティーナの作り出した魔導高射砲は確かに高性能で威力も高いが、コストがかかり、魔力を込めるのも高位の魔術師でないといけないという大きい欠点がある。

 その欠点をなくし、比較的低コストで普通の魔術師でもマガジンに魔力補給ができる簡易量産型を作れないかというのを、時計塔の魔術師たちに頼んでいるのである。

 その設計図を見ながら、魔術師たちは喧々諤々とそれぞれ自分たちの意見を言い出して改善している会議が開始された。


「ううむ、やはり小型化だな。小型化すれば馬でも運搬も楽になり、よりスムーズに運搬ができる。」


「いや、ただ小型化しただけでは意味がない。魔力の質の関係上、威力が落ちるのは仕方ないが最低限にしたい。射程距離の低下もできるだけ軽減したいので、砲身は伸ばして、口径をより小型化したらどうだ?

 口径がより小型化すれば、魔力の収束も高まり貫通力も高まる。」


「貫通力が高まっても威力は高まらないだろう?どうするんだ?」


「魔力弾は炸裂モードにしておこう。相手の体にめり込んだ瞬間に炸裂すれば多少なりとも威力は増せる。容易に分解可能で、人力での運搬も可能にしておきたいな。そうすれば整備性もよくなるはずだ。」


 そういう風にやんややんやと相談して、仮の設計図を作り出し、今度はドワーフたちと協力してそれを実際に作っていく。

 コスト減と軽量化のために、砲身を薄めに作ってみたら魔力に耐え切れずに破裂してしまったりのハプニングなどもあったが、それは砲身に抗魔術文字を彫り込む事によって薄さを保ったままの生産を可能にした。

 こうして簡易量産型の高射砲は一応は完成したが、まだ試作品。

 まだまだ実験、もしくは実戦テストが必要だ、と彼らが考えていた時に、一つの通信が飛び込んできた。


「敵襲!少数の敵が国境を越えて進行してきました!威力偵察と思われます!!」

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