第273話 意見の衝突
「だから!もう兵力も集まってるんじゃろう!!さっさと攻め込むべきじゃ!
ええと、兵は速度を貴ぶとか言われてるんじゃろう!妾人間の軍略とかよく知らんけど!」
「だから素人は黙っていてくださいまし~。今は一門でも多く砲台を、戦力を増やす時でして~。そうすれば犠牲になる兵士たちを少しでも減らせますから~。
この戦いだけでなく、我々はその先を見据えなければなりません~。
そのために少しでも犠牲になる兵士を少しでも減らす努力が必要なのです~。」
竜都の会議室で喧々諤々とやりあっているのは、人間形態のアーテルと辺境拍ルクレツィアである。
アーテルはここまで兵力が揃ったのだがら、一気呵成に畳みかけるべき、という考え方である。竜の考えからすれば、敵国の住人がいくら被害にあっても知ったことではない。純粋に速攻をかけるべき、という考えなのだろう。
それに対して、ルクレツィアは怪物の兵士たちに対して通常の兵法などは通じない。
ならば兵士たちの犠牲を出す前に少しでも強力な兵器を揃えるべき、という判断である。そのため、金と権力で魔術塔の魔術師の連中を従えて、急遽魔導高射砲のさらなる増産を急いでいる。
どちらが正しいなどという事はない。単純な考え方の違いでしかない。
だが、「めんどくさいから一気に攻め込もうぜ」というアーテルの考え方よりは、慎重論的なルクレツィアのほうが支持を集めるのは当然といえた。
「チッ!仕方ないのぅ。ここは引き下がってやる。アリア!お主の妹を連れてこい!妾の舌に見合った料理人になったか確かめてくれるわ!」
まあ、実際は毎日アーテル様の料理を作ってる専属料理人になってるんだけどね、というアリアの顔を余所に、アーテルは乱暴に足音を立てながらその場を立ち去っていく。おそらくはむかつくのでやけ食いでもするつもりなのだろう。
まあ、それだけで治まってくれるならそれでよし、彼女としても自分の意見が却下されて少しむかつく程度の感情なのだろう。
「ともあれ~助かりましたわ~。てっきり同じ竜のよしみで向こうの意見を採用すると思いましたから~。」
会議室の上座にいる小型化したリュフトヒェンに対して、ルクレツィアはにこやかに話しかける。最終的に責任を取って判断を下したのは最高責任者の彼だったが、ルクレツィアにとってはありがたかったらしい。
『まあ、戦略の素人の意見と専門家の意見じゃそりゃあねぇ。ともあれ大丈夫?アーテルの意見も間違ってはいないし、神聖帝国から攻め込まれる可能性もあるでしょ?』
「まあ、その時は正面から受けて立てばいいことですわ~。戦争の状況を完全に把握することは出来ないのでして~」
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