第271話 レギオンと外骨格地竜

 神聖帝国のある一部。そこでは、蠢く肉塊が無数に蠢いていた。

 数十体もの人間の上半身のみが中心部のスライムのような球体。

 脚部は存在せず、体を支えているのも、下部にある上半身が腕を脚代わりとして移動している。そして、彼らは皆、完全に発狂、精神崩壊していた。

 それは、帝国派が作りだした生体兵器「レギオン」と呼ばれていた兵器である。

 エキドナの落とし子から抽出した混沌の因子を魔術的に培養。

 あらゆる存在を取り込み、融合させる強い生命力のある培養混沌に、次々と兵士を放り込み「死なない兵士」を作り上げようとしていたのである。

 だが、訓練にコストのかかる兵士を使う前に、流人や身寄りのない者、孤児などを利用して作り上げたのが、このレギオンである。

 以前と異なり、人体実験を行って人間の脳の構造を研究した神聖帝国は、そのレギオンの何十もの人間の頭部に遠隔操作を行える魔術針を打ち込むことによって、遠隔操作が行えるようになっていたのだ。

 だが、制御ができるようになったとはいえ、それは敵味方が判別できるようになった程度のものだが、それでも神聖帝国にとっては問題ないらしい。


 そして、高い壁によって隔離されている隣には、地竜を魔術で歪めて自分たちの思うがままに改造した外骨格地竜たちが存在していた。

 彼らもただ突撃するだけしか能がない竜たちではあるが、その突進力と制圧力は並大抵のものではない。


 その肉塊を見ながら、ゼヌニムは満足げに頷きながら、手を振る。

 すると、レギオンと外骨格地竜たちに対して、無限食糧タングリスニがそこに放り込まれる。

 哄笑を上げる無限食糧タングリスニを、レギオンたちと外骨格地竜たちは粉砕して貪り食らっていく。

 逆に無限食糧タングリスニに貪り食われるレギオンたちなどもいるが、彼女にとっては些細な事だ。

 そのまさしく蟲毒そのものの状況を見て、ゼヌニムは満足げに頷く。竜皇国の動きは彼女も把握はしているが、小賢しい戦術や戦略など不要。このレギオンたちと外骨格地竜によって数で全てを踏みつぶし制圧する。そして、サマエル様を降臨させて、この地上全てを薙ぎ払い、我々に従うごく少数の人間のみを残す。それが彼女の考えだった。

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