第270話 ママン、負担の肩代わりする。

 さて、今のリュフトヒェン、というか竜皇国は、魔導共和国への食糧・物資支援、そして、神聖帝国の兵士残党への食糧支援、さらに竜皇国の兵士たちへの兵站と三つものタスクをこなさなければならない羽目に陥ってしまった。

 本来ならば、落ち着いた時に準備を整えて神聖帝国に攻撃を仕掛けるべきなのだが、以前の帝国の残党を取り逃がして神聖帝国を建国させてしまったトラウマもあるため、今こそ攻め込むべき機会と無理を押しても戦争準備を行っているのである。

 そして、その負担はリュフトヒェン自身にも及んでいた。


『ああああ!書類仕事が終わらないぃいい!!』


 そう、それは無数の書類書類書類であった。

 久しぶりに竜都に拠点を構えたリュフトヒェンやセレスティーナは、山のような書類仕事に追われてしまうことになった。

 軍を纏め上げて運用するのは専門家である辺境拍ルクレツィアに一任し、兵站や武器補充などはシャルロッテに一任し、資材・物資・食料を竜都へと搬送していく。

 それだけでも書類仕事が大変なのに、さらに神聖帝国残党や魔導共和国などの物資や食料の搬送もあるのだ。

 当然ながら、書類がたまっていく一方である。

 さらに、食料生産のために”大釜”も全力起動してガンガン食料生産を行わなければならない。

 一時期の食料余り、豊作貧乏に追われていた時期とは逆転し、食料が必要とされ、高く売れていくのに、農家たちは一転して嬉しい悲鳴を上げている。

 豊作貧乏の際に、農家たちを支えるために穀物などを国費で購入していたため、竜皇国の兵站には余裕があるが、到底他国に支援できるほどではない。

 そうなれば、頼るのは輸入か”大釜”による生産だが、それにはリュフトヒェンの魔力=体力を消耗することになる。デスクワークも書類仕事も見た目より遥かに体力勝負の仕事だ。ここに大釜の負担がかかると、流石に人間離れした竜の体力でも負荷が大きかった。


「……ふむ。ならば、大釜の負担は私が賄いましょうか?書類仕事?というのはまるで分かりませんが、その程度なら私でもできます。母を褒めてもいいんですよ?いつもの二倍増しで。」


ぶいぶい、とティフォーネはリュフトヒェンに対して無表情のままダブルピースをする。まあ、私の魔力を受けきれるかは分かりませんが、同じエンシェントドラゴンロードが作ったものだし、大丈夫でしょう、多分、などと物騒な事を言っているが、多分大丈夫だろう。

それに大釜の負担がなくなって、その分を他に回せるのなら非常にありがたい。

大人しく、リュフトヒェンはティフォーネに頼むことにした。

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