第255話 ノーボディとの決着

 大魔術をまともに食らったノーボディ。

 いかに竜機でとっさに結界を張ったとはいえ、真空刃と雷撃の嵐の中心部にいてただですむはずはない。

 彼の体はほとんど砕け散り、残っているのは頭部ぐらいのものだった。

 当然、エンジンも失い、頭部だけになったノーボディは重力に従い、下へと落下していく。

 頭部のキャノピーもひび割れ、内部の複数の脳もほとんど潰れている中、ノーボディの頭部は哄笑を上げる。


《痛くない!痛くない!苦しみを感じない!ああそうだ!これこそが俺の求めていたものなんだ!!ああ、痛みのないのが―――こんなに楽なんて!!》


 はははは!はははは!とノーボディの頭部はそのまま落下していき、そして天蓋結界に接触して粉微塵に砕け散った。

 彼にとっては、それこそが唯一の救いだったのかもしれない。

 思わず悲しい目でそれを見るリュフトヒェンだったが、戦争でそんな感傷を持っていれば次に死んでしまうのは自分自身である。


《戯け!のんびりしてるでないわ!戦いが終わってから感傷に浸るがいい!

で、これからどうするんじゃ!》


《市民側と連絡を取って天蓋結界を解除する。そして、上空から敵竜機を排除して帝都を確保するんだ。そうすれば、クーデターは失敗すると軍部の奴らも気づくはずだ。》


《そう上手くいくんかのぅ……。まあいい、やってみるか。》


そんな彼らの会話を他所に地上では動揺が広がっていた。

こちらを守るべき竜機が帝都に爆撃を仕掛け、帝都に攻撃を仕掛けてくるはずの竜が帝都を守護していたのだ。

それを見上げながら観戦していた民衆の間で動揺が広がるのは当然だった。


「静まれ!あれは味方だ!我々の味方である!敵国に属する竜であるが、我々の苦難のために立ち上がってくれたのだ!!あれは我々の味方である!!」


その瞬間、市民から歓声が上がった。

味方でありこちらを守ってくれるはずの竜機から攻撃を仕掛けられ、敵であるはずの竜がこちらを守ってくれるこの混乱状況の中、「あれは味方であり信頼できる存在である」と断言してくれる誰かが民衆には必要だったのである。






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