第253話 ノーボディとの対決2
空中に見えない魔術式が散布されているこの状況。
それは飛行している存在にとって極めて嫌な展開だった。
何せどこを飛行していきなり爆発するかさっぱり分からないのだ。
アーテルのように魔術のこもった咆哮か、全空域を巻き込むような魔術で一掃するという手もあるが、それにはやはり大量の魔力消費が必要となる。
もしそういう手段があったとしても、魔力を消費して弱った所を叩く。それがリュフトヒェンの策略だったが……。
《あ、ああ!ああああああああ!》
ノーボディはそんな物など全く気にせずにこちらへと突っ込んできた。
当然の事ながら、魔術式が起動し、爆発を起こしノーボディの機体を傷つけていく。
だが―――。
《痛くない!痛いけど痛くない!実感を!俺に肉体の実感を寄越せ!
俺には痛み以外の実感が必要なんだぁああ!》
ノーボディの機体には痛覚機能は付与されていない。
当然、機体が損傷しても痛みなどは感じない。
(彼が感じているのは失った肉体の痛みの幻肢痛だけである)
失った肉体の実感を求めて、痛みに苦しむ彼は次々と魔術式を炸裂させつつ、まっすぐアーテルとリュフトヒェンの元へと突っ込んでいく。
爆発するより早くその空域を駆け抜けてダメージを最小限にする。
そのあまりにあまりな脳筋方法を見て、アーテルは哄笑する。
《ははははは!なかなかいい胆力と凶暴性を秘めているではないか!
惜しいのぅ!竜族ならば良い竜になれただろうに!!》
横から真っすぐこちらに突っ込んでくるノーボディに対して、水平飛行中から45度バンクし、そのまま斜めに上方宙返りし速度を高度に変えるシャンデルという機動を取り、そのまま下に存在するノーボディに対して、アーテルは自らのドラゴンブレスを叩きつける。
《―――!?》
ためらうことなく、そのまま直線の猛烈な速度で上から降り注ぐ魔力粒子加速法であるアーテルのドラゴンブレスを回避するノーボディ。
だが、それでも余波は完全に回避しきる事は難しく、ノーボディの下半身……尻尾と右エンジンが余波によって完全に融解し、粉砕されてしまう。
だが、それでも残った左エンジンと魔術機関による物理法則・慣性無視の力によって、ノーボディは飛行を行っていた。
《あ、ああああ!食わせろ!食わせろ!食うことだけでしか俺は実感を得られないんだ!!俺の体!俺の体どこにあるの!?俺の体ぁあああ!!》
その叫びに答える存在は誰もいなかった。
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