第241話 兵士派と穏健派

「……『兵士派』がこちらとコンタクトを取りたい?」


 その情報は速やかに穏健派の重鎮であるゾーンにも伝わっていた。

 兵士派からの使いと名乗るエージェントは、ゾーンに極秘通信を行うことができる古代遺跡から発掘された水晶玉を手渡していった。

 兵士派とはいえ、軍部の一部なのだからコンタクトを取るとおびき寄せて命を奪うつもりなのか?と警戒していたが、こんな極秘通信が取れる古代のアーティファクトを手渡してくるとなると向こうも本気らしい。

(そもそもその気ならエージェントがすでに彼の命を奪っているだろう)

 ゾーンの居場所をつかんでいるという事は、彼がシャルロッテと繋がりを持っていることも恐らくは知っているのだろう。

 それならば、シャルロッテとゾーンと兵士派の三勢力で会談をしたほうが早い、と判断した彼は、それをシャルロッテの元へと持ち込んできた。


「まったくウチに厄介事ばかり持ち込んでこの疫病神が……。アタシあんまり関係ないでしょ?そちらの事はそちらで何とかしなさいよ。」


「いやぁ、申し訳ない。だが、ここまで来たらもう一蓮托生だろ?」


 そのゾーンの言葉に、思わず彼女の額に青筋が浮かび上がるが、はぁと深いため息をついてそれを受け流す。


「で?アタシ知らないんだけど、兵士派ってアンタ的にはどうなの?軍部ってロクでもない存在じゃなかったの?」


「まあ控えめに言ってマシな方なクソだな。竜機派に比べば比較的圧制やら何やらはマシだったが……。ただ単に竜機派に押されてほとんど何もできないからこそマシだったのかもしれない。」


「ちょっと……。本当に大丈夫?アタシ不安なんだけれど。」


 と、いうものの、少しでも戦力になるのなら協力関係を結んでおいた方がいいだろう。シャルロッテはため息をつきながら、その水晶玉を起動させろ、と指示を出す。

 そして、その水晶玉を起動させると、そこには禿頭の壮年の男が姿を現す。


『ふむ、お二人とも初めましてかな?私は兵士派の重鎮を務めている”将軍”というものだ。以後お見知りおきを願おう。』


「……初めましてだな、率直に言おう。アンタたちの力を借りたい。

 そちらの状況はどうなっているんだ。」


『そちらも思っている通り、竜機派は軍事クーデターを企み、我ら兵士派を勧誘している。今は我々が渋っているので動かないが、そのうちに彼ら単独でクーデターを仕掛けるのは目に見えている。そのための対策を行いたい。』


 理想を言えば竜機派のクーデターを前もって鎮圧して、彼らを暴走させないようにするのが一番であるが、穏健派にも兵士派にもそれだけの力はない。

 その部分を何とかする必要があるのは、ゾーンも将軍も同意見だった。


「手を結ぶのはいいけど、アンタたち兵士派だけでは竜機派は抑え込めないだろう?

 そこらへんはどうなんだ?」


『まあ、嫌がらせ程度しかできんね。いざというときに隔壁を下ろして孤立させたり、食べ物に毒を混ぜたり、、竜機に乗り込む前に取り押さえたりその程度だ。

我々兵士派は竜機派より遥かに数は多いのでね。』




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