第240話 竜機派VS兵士派

 そして、その後軍部は軍事クーデターを準備を進める事になった。

 軍事力を所有している軍部がクーデターをためらう理由など何もない。

 時間を置けば、穏健派の対して支援が供給され、こちらが不利になるという判断の元である。

 クーデターを成功させるためには、奇襲の成功と資源の確保が必要である。

 軍部といえども完全に一体ではない。それぞれに分かれている勢力を説得しなければならない。


 軍部は大まかに二つに分かれる。つまり「竜機派」と「兵士派」である。

 これは簡単に分けると「竜機の発掘・復活にできる限りコストをかけるべき。竜機は兵士千人分の威力を発揮するからだ」という派閥と「竜機はコストがかかりすぎる。最終的に戦いを決するのは兵士なので、もっと兵士にコストをかけるべき」という派閥である。

 今までの戦いでは、竜機の力によって諸国を制圧していた竜機派が圧倒的に有利であり、兵士派は常に冷や飯食らいと言っても過言ではなかった。

 予算のほとんどを竜機派にとられた兵士派は装備も食料も弱く、それがさらに弱兵化を招くという悪循環に陥っていたのだ。

 そんな兵士派はここ昨今の竜機の損失によって息を吹き返していた。

「竜機だけではなく、熟練の兵士も育てなくてはならない!兵士の育成を甘く見たことが竜機の損失に繋がったのだ!」という意見である。

 そして、そんな彼らがクーデターに協力してくれ、といわれても素直に協力などするはずもなかった。

 

「なに?クーデター?……それで?我々に何の得があるのかね?とりあえず話を右に左に揺さぶって適当に流しておいてくれたまえ。そんな事をしても得をするのは竜機派ではないか。我々兵士派はずっと竜機派の下につくだけの召使いではないのだぞ。」


兵士派の重鎮、通称”将軍”はそう言って竜機派からの使者を追い返した。

いうまでもないことだが、クーデターは速度と奇襲が命である。

兵士派が賛同しないことに、彼らは非常にいらだっているに違いない。

”将軍”は少し考えた後で、近くの兵士に通達を頼んだ。


「ああ、君。穏健派への通達を頼むよ。うむ、あのいけ好かない竜機派の下について奴らに尻尾を振るよりは、奴らに目にものを見せてやった方が実に痛快ではないかね?」


その言葉に、兵士たちはにやりと不敵に微笑んだ。



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