第237話 帰還。

『ただいま~。今戻ったよ~。』


 そう通信を行いながらも、リュフトヒェンとアーテルは鹵獲した竜機を牽引している縄を切り、浮遊魔術をかけて重力を緩和させながらリュフトヒェン領の街の近くに着陸させる。

 そして、二体の竜も、街近くに作られた着陸路に着地していく。

 鹵獲した竜機から大人しくパイロットが出てくると、彼はそのまま捕らえられて牢屋へと連れていかれる。

 とはいうものの、リュフトヒェンは彼を痛めつけたり処分するつもりはない。

 彼から操縦方法を聞かなければならないからである。

 さらに貴重な竜機に対しての情報源でもあるため、彼自身はパイロットをそのままこの国に受け入れる予定である。


 ともあれ、竜機を確保したセレスティーナは、パイロットが下りた後の竜機を魔術で探知したり、直接触れたりして確認をする。


「うーん、ある程度は理解できますが、やっぱり専門家がいないと整備が難しそうね……。ところでご主人様。これも機械なので予備パーツが必要だと思うのですが、そこはどうするのですか?」


『うん、辺境伯ルクレツィアが鹵獲した機体があるので、あれをこちらに譲ってもらって予備パーツにする予定。後は撃墜した竜機とか破壊した竜機のパーツも全て集めてこっちに送ってもらう予定だけど……。』


 とはいえ、比較的傷の軽いノーム・エルフリーデはともかく、ほかの機体は全て撃破された機体ばかりであり、まともなパーツを回収するのは難しいだろう。

 何とか今の状況でやりくりしていくしかないのが事実である。


「分かりました。ともあれ、私たちが魔導帝国の侵略を退け、複数の竜機を破壊したのは事実。竜都の民衆たちも上空の空中戦を魔術映像として地下シェルターで流したので、ご主人様の信頼度もアップしていると思います。

信頼度・信仰度が上がれば、さらに神竜としての階位がアップするかもしれません。」


『戦争を娯楽として流すのはどうかとは思うけど、まあ信仰度と忠誠心を上げるためには仕方ないか……。負けたらフルボッコ言われそうだけど。』


リュフトヒェンは人々の信仰度によって神竜へと変貌しているが、それは逆にいうと人々の信仰によって力が左右されるので、常に民衆の支持を受けていければならないということでもある。

それはポピュリズムにも繋がりかねない危険な状況ではあるが、今のところは好循環が出来上がっているので問題はない。

(問題は支持率が下がったときだが)

だが、とりあえず戦争に勝ったのなら問題はないだろう。

これを大々的に報じれば、空戦の映像もあって支持率は問題ないはずである。




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