第220話 教皇庁の暗躍
「どういう事なのこれは!」
ドン!と乱暴に拳を机に叩きつける音がする。それは枢機卿の一人であるヨハンナである。
スパイなどを利用して調べ上げた神聖帝国の状況は目に余るものがあった。
国自体が腐敗しているのはまだいい。
だが、至高神の神殿でも平然と悪魔崇拝が行われている。
自分たちの崇める象徴に汚物をかけられたり、その前で平然とサバトや乱交を行っているのだ。もはやほぼ完全に悪魔信仰に乗っ取られつつあるといっていい。
これは教皇庁を激怒するに余りあった。
「神聖帝国の至高神の司祭までが悪魔の洗脳にかかっているとは……!
これ以上の放置はできないわ!
何としても聖戦を発動してでも悪魔どもの根拠地を滅ぼすべきよ!!」
その彼女の激怒に対して、ほかの枢機卿は椅子に座ったまま、ふうむ、と自分の顎鬚を触ったりくつろいだ態度を見せている。
とはいうものの、彼らもこんな舐められたことをされては黙っているわけにはいかない。何らかの対抗策をとらなければならない。
「だが、こちらはあのケダモノどもの国の処置に頭を悩ませているところだぞ?
到底、こんな不安定な状況では聖戦の発動はできない。
二方面の攻勢は避けよ。軍事の基本だが今のこの状況に通じる物がある。」
「……では、お互いをぶつけ合わせればいいのでは?
ケダモノどもの国を一応自治領か国として認定し、神聖帝国と食い合わせる。
どちらが傷ついてもこちらの利益になる。
何なら両方纏めて弱った所を叩き潰せばよい。そちらの方が我々にとっては最適でしょうな。」
その言葉に、その場にいた枢機卿たちは皆うなづく。
「分かりました。それでいきましょう。同時に神聖帝国の皇帝の戴冠を取り消す方向に行くということで。悪魔崇拝を好き勝手野放しにしている奴らの権威など我々教皇庁が守る理由などない。」
教皇庁からして見ても、神聖帝国の行っている事は完全に喧嘩を売っている行為だ。
断じて悪魔の巣くう国など認めてはならない。
そのためならば、成り上がりの竜どもが治める国を上手く利用しなければならない。
その見解は、この場にいる枢機卿たちの意見の一致するところであった。
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