第206話 陣地構築

「はぁ~。陣地構築とかクッソめんどいですわねぇ~。」


 辺境伯は皆が一心不乱に土木工事を行っている中深いため息をついた。

 要塞構築では航空機動部隊の機動力に対抗できない。それでも地上用の竜機ノームが襲いかかってくる時に対応できるよう、辺境伯は対空陣地を作る事によって対空・大地攻撃の防御を行おうとしているのだ。


 今考えられている陣地は、国境から領地の内面に入り込めば入り込むほど、相手に対空・大地問わずにダメージを与えられていく構造になる予定である。

 いわゆる縦深防御構造である。


 こちらの陣地内部に入れば入るほど、より激しい攻撃を受けていき、敵は高い消耗を強いられ、摩耗していく。

 こちらの陣地を明け渡す代わりに、より敵の犠牲者を増加させる戦術だ。

 これならば、いかに強力な力と装甲を誇る竜機であろうとダメージを与え続けて破壊する事は可能である。

 さらに両面にはそれを見下ろすように小高い丘が存在しているので、そこにも様々な火器や大砲を備え付けた砦を作る予定である。


 欠点としては自分の領地に入り込まれて、ある程度領地が荒らされる事を前提としなければならないという事だ。

 戦術とは言え、自分の領地に敵が入り込まれてよしとする領主はいない。

 さらにこれに加えて、縦深防御陣地に様々な対空兵器なども装備し、空からの侵入に対しても攻撃を仕掛けられるようにしている。


 高速で空を飛翔する竜機も、縦深防御陣地からの広い面積の対空砲火を完全に躱し切るのは難しいだろう。

 いわば、面制圧の対空砲火である。


「辺境伯様、面倒臭いとか言わないでください。部下の士気がめっちゃ下がってしまいますから。自ら率先して陣地防衛の穴掘りなどを行って下さるのはありがたいのですが……。」


確かに辺境伯自らが陣地構築をしているとなれば、士気は上がる。

だが、皆の士気を下げる発言もするのでプラスマイナスゼロといった所だ。


「仕方ないでしょう~。何でこんな金も手間もかかる事をしなければならないのか~。

全く魔導帝国のクソどもが……。」


この陣地構築や新型武装の開発のために、多大な支出が出てしまっているのは事実だ。

愚痴りたくなるのも分からなくはないが……と部下が思っている中、叫び声が響き渡った。


「た、大変だー!国境から敵が侵攻してきたぞ!!」


それを聞いた瞬間、彼女の目付きが吊り上がった。


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