第205話 魔術高射砲の開発

『え?高高度用の大砲を作成しろって?ドワーフたちに?』


 辺境伯から届いたその要望に、書類仕事を行っていたリュフトヒェンは驚いた顔を見せる。まさかそんな注文がこちらに来るとは思っていなかったからである。

 恐らくは、彼自身というより、彼の配下であるドワーフ族を頼りにしているのであろう。正式な依頼できちんと金も払うというのなら、断る理由は別にない。


『無茶言うなぁ……。他にも対戦艦用のぶどう弾も量産してほしいって?

 まあそれはいいけど……。それだけじゃ竜機の機動性にはついていけないでしょ?

 アレだ。車輪と大砲を組み合わせてみれば?そうすればスムーズな移動ができるでしょ?』


 つまり、12ポンドナポレオン砲である。

 このナポレオン砲は、前装式滑腔砲であり、榴弾だけでなくぶどう弾なども発射できるようになっている。

 ただ、ぶどう弾の子弾は砲撃と同時に飛散し始めるため、射程距離は短い。

 つまり、高高度の迎撃を行いたい辺境伯の思想とは離れているといえる。

 榴散弾や榴弾の開発、理想は三式弾の開発であるがそこまでは流石に難しいだろう。

 そんな風にリュフトヒェンは考えていると、そんな彼女にセレスティーナが話しかけてくる。


「それでご主人様。新型魔術砲台の開発を行いたいと思いますがいいでしょうか?

 恐らく資金を使う上に私がしばらく付き切りになってしまいますが……。」


 それでも、魔導帝国と面している向こうの防備を固めるのは優先的に行わなければならない。今まで戦火に襲われていない辺境伯領土に魔導帝国が襲い掛かってきたら激戦どなることは間違いない。

 彼女の言葉に、リュフトヒェンは頷く。


『まあ仕方ないか。書類仕事は他の部下に割り振っておいて。それで、どんな感じに仕上げるの?』


「まあ、原理としては以前船の搭載した魔術砲台と同じ原理ですね。

 あの砲台の砲塔をさらに長く伸ばして、高高度の敵でも当てられるように改良する予定です。

 もっとも、さらに強力な魔力を付与しなくてはいけないので、私のように高位の魔術師の魔力を魔力マガジンに込めなければいけませんが。」


 つまり、簡単に言うと魔術高射砲である。

 大砲やバリスタよりもさらに高高度の敵に対して大仰角を与えて高角射撃ができるようにした魔術砲台の開発を行おうとしているのだ。

 初弾の速度、威力、旋回・俯仰の迅速さなども実戦での取り回しがスムーズにいけるように開発を行わなければならない。

 さらに、魔術弾ならば、三式弾のように敵の近くで炸裂し、魔術弾の子弾を周囲に散布することによって、飛行対象にダメージを与えることもできる。


『……ちなみに、価格は?』


「さあ……。事実上のワンオフな上に試作品なのでどれだけかかる事やら……。

世話にはなっているので、多少は勉強させてもらうつもりですが、こればっかりは……。」


やっぱり軍備は金がかかるなぁ、とリュフトヒェンはため息をついた。

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