第204話 地脈と天候操作
秘密警察組織を作ったとはいえ、まだそんな専門的なノウハウのない竜神殿の神官たちは、それぞれの地域で住民たちの相談に乗ったり地道な情報収集を行っていた。
そういったどうでもいい噂話や情報から異変を感知するのは、配下の神官たちに任せてはいるが、やはりきちんとしたノウハウがない以上、不安は募るが任せるしかない、という状況である。
そんな中、膨大な書類仕事を行いながら、ふとセレスティーナは同じく書類仕事を行っているリュフトヒェンに対して問いかける。
「今更ですが、神聖帝国への地脈の供給を断ち切ってもいいのでは?
敵国ですし、別に遠慮はいらないでしょう?」
まあ、確かにそれは道理である。
地脈の権限はリュフトヒェンが握っているのだから、神聖帝国の領土に流れ込む地脈の流れを遮断して不毛の大地にしてやればいい、というのは戦略的には正しい。
しかし、リュフトヒェンは眉をしかめながら言葉を放った。
『それも考えたけど、絶対大規模な飢饉が起こってあふれ出した難民がこちらの国に流れ込んで大騒動になるでしょ?
大量の難民を全て追い返すのは不可能だし、混乱した国境付近に大量のスパイを送り込んでくるかもしれないし、厄介になりそうかなぁって。それに、多分ママンも切れそう。』
「?ティフォーネ様が切れるんですか?敵国なのに?」
『あの人、敵国だか何だか知らないが仕事はきちんとこなせってタイプだから……。
自然を司る竜が私欲で供給を行わないとかいけないと思います!とおしおき(物理)が飛んできかねないし……。それなら今のままでいいかなぁって。』
地脈のエネルギーは一度枯らしたら再びエネルギーを注ぎ込むのに苦労する荒れ果てた大地になってしまう。
自然界の化身である竜がそんな偏った事を作為的に行えば、バランスが崩れて大きな悪影響が出てしまうというのがティフォーネの考えである。
敵国云々よりも自然界の調停者であれ、というのが彼女の思想なのだ。
(それに遮断された地脈の力が他の意図しないところに流れ込んで大地震などを引き起こしてしまう可能性も十分あって結果が予期できない、というのもある)
「なるほど……。ところでご主人様。大地母神の分神殿から天候操作の依頼が来ていますが……。」
『あまり操作しすぎると自然界に予想外の悪影響が出るから、必要な時だけ行うって言っておいて。まあ、今回は日照りが続いてるからやるけど。』
それはやるのか……。という顔になるセレスティーナ。
まあ、実際このご利益があるからこそ、農民たちも竜神殿やリュフトヒェンを受け入れて信仰してくれているのだ。
現世利益がなければ人々は神を信仰しないし、現世利益がある神ならば大喜びで多くの人々が支援する。全くどこもかしこも世知辛いものである。
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