第176話 グンタイアリ人襲来
『あーもうクソが!ウザいにも程があるぞ!』
世界樹から少し離れた森の中、竜形態になっているアーテルは、自らの爪を奮いながら人型の異形の存在を吹き飛ばし、切り飛ばす。
それはヒトとは似ているが異なる存在。
上半身の胴体部は外骨格に身を固め、六本の腕に武装を手にして、臀部からアリの腹部に似た器官と毒針を生やし、顔部だけは美少女に似た存在。
すなわち、蟻人である。
ハイエルフの里が再建のために活動を行っている中、急に蟻人たちの襲撃を受けたハイエルフたちは、世界樹と里の防衛のためアーテルに依頼し、里の防衛に参加してくれという話を持ち込んできたのだ。
その蟻人たちは、アーテルの爪の横凪で纏めて数体吹き飛ばされながらも、さらにさらに数十体の蟻人たちがわらわらと武器を持ってアーテルの元へとたかってくる。
そのゾンビ映画さながらの光景の中、蟻人の美少女の顔がいきなり口元にまで裂けて、大きな口と鋭い牙をむき出しにして、次々とアーテルの鱗へと噛みついていく。
さらに臀部に存在する毒針をアーテルに突き刺そうと彼女の鱗に突き立てていく。
それに切れた竜形態のアーテルは、思わず大声で叫びをあげる。
『ウザい!!妾に張り付くな汚らわしい!!』
アーテルの口から咆哮が響き渡ると、それは衝撃破となって張り付いた蟻人たちを吹き飛ばしていく。
さらに吹き飛ばされた蟻人たちに、魔力球から魔力レーザーを射出し、森の木々ごと次々と蟻人たちを消滅させていくが、それでもどこからともなく、さらに蟻人たちはわらわらと森の中から湧いて出てくる。
それをハイエルフたちは攻撃魔術や自らの弓矢などで迎撃していく。
ハイエルフの矢は通常の矢と比べて対狙撃ライフルのように蟻人たちを次々と吹き飛ばしていくが、それでも次から次に沸いて出てくる
『ええーい!面倒くさい!上空から吹き飛ばすとかできんのか!?
世界樹に被害が及ぶかもしれん!?ならこれならどうじゃ!!』
アーテルは自分の喉部に魔力を充電・収束・圧縮させ、吐息として収束させた魔力を粒子加速砲として射出する、すなわち、ドラゴンブレスである。
外骨格で覆われた蟻人たちはお互い自然なファランクス陣形を組み、堅固な防御態勢を行っている。対人にとっては極めて有効ではあるが、大砲すら遥かに凌ぐ威力であるドラゴンブレスにとっては、まさしくいい的でしかなかった。
アーテルのドラゴンブレスは、直線状に森を薙ぎ払い、その線上に存在した蟻人たちをことごとく完全に消滅させる。
およそ300mもの直線状の木々も地面も魔力加速砲により粉砕されている。
当然、蟻人たちも同様だ。だが、それだけ消滅させられても、なおも蟻人たちはわらわらと沸いて出てくるのは、軍隊アリの蟻人たちは伊達ではないということだ。
『あああもう面倒くさい!確かアリって匂いで相手や目標を狙うんじゃったか……。ならば、これならどうじゃ!!』
アーテルは竜語魔術によって、上空に雨雲を急速に発生させ、周囲一面に雨を降らせる。
それにより、今まで連携のとれた攻撃を仕掛けてきた軍隊蟻人たちは、一斉にいきなり混乱状態に陥る。
軍隊アリは、ほとんど目が見えず、フェロモンによって目的に対して攻撃対象を決定したりするが、軍隊蟻人たちもそれは変わらないらしい。
そのフェロモンを雨によって流してしまった以上、彼女たちも攻撃目標を見失ったに等しい。
『今じゃ!撤退じゃ撤退!こんな消耗戦やっていられるか!!』
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