第175話 魔導帝国と竜機の噂

 場所は大辺境に存在するリュフトヒェン領に戻る。

 川上輸送の運搬をもっとスムーズに行うべく、リュフトヒェンは商人連合の商人を呼び出して輸送用の船の購入を行っていた。


「では、さらなる船をお買い上げいただくということでいいでしょうか?

 お代は金か宝石、もしくは食料でもいかがですかどうですか?」


『ふむ、では食料でもいいかな?ちなみに、そちらに食料を売るとどれくらいで買い取ってくれる?』


 幸い、こちらにはシュオールが作り出してくれた”大釜”がある。

 竜都にある大釜には、リュフトヒェンの鱗が張り付けられており、そこにリュフトヒェンの魔力を長距離から注ぐ事によって食料、大麦や小麦が生み出されていく。

 正確にいえば、魔力を食料に変換しているに等しい。

 商人連合ならば、各国の詳しい情報も知っているし、食料に困っている国に売りさばいて儲けを上げるのは当然だろう。


「ええ、それはもう喜んで。こちらのお値段で買い取らせていただきます。

 いかがでしょうか?」


 なるほど、きちんと適正な価格で買い取ってくれるらしい。

 商人は信用こそが命。

 信用を失った商人のところには儲け話はこない、というのが彼らの信条らしい。


『分かった。ところで、君の判断でいいんだけど、周囲の国に何か動きとかある?

 何か動きとかあったら、ウチにも知らせてほしい。それなりの報酬は払うからさ。』


 竜皇国建国のどさくさで、諜報組織の人員がほとんど神聖帝国やら他国に流れてしまい、今この国では深刻な諜報・情報収集不足に陥っている。

 竜であるリュフトヒェンは当然そういうのは疎いし、セレスティーナも本業は魔術師だ。ルクレツィアやシャルロッテたちが諜報員に様々な有用な魔術などを覚えさせようとしているが、中々うまくいっていない模様だ。


「ふむ……。これは伝え聞いた話ですが、竜皇国の北側、魔導帝国で魔導空中戦艦の建造が行われているようです。さらにそれだけではなく、太古の竜と対抗するために作り出された魔導兵器、竜機の発掘・起動にも力を注いでいるようですね。」


 竜皇国の北側、辺境伯と隣接している地域に、魔術が盛んな魔導帝国があるとは聞いていたが、ルクレツィアの力により全て侵攻は防がれており、最近は全く動きを見せていないらしい。

 しかし、まさか空中戦艦を作っているとは初耳だった。

 商人に負けてしまうウチの国の諜報組織を何とかしないとなぁ……。と思いつつも、リュフトヒェンは気になった事を聞いてみる。


『竜機?なにそれ?』


「いや軍事機密ですし詳しくは……。何でも古代の魔術師たちが竜に対抗するために、竜の遺骸を利用して作り出した魔導兵器だとか何とか。

 話によると、高速で空を飛行して竜と戦えるとは聞きましたが、実際見たことはないから何とも……。』


なるほど。簡単に言うと現実世界における戦闘機のようなものか。

高速で空を飛行する竜に対して、地上から攻撃を仕掛けて倒すのは難しい。

ならば、自らも飛行する竜に対抗できる機械を作るというのは、高度な魔導文明を作っている国ならば当然とも言える。

しかも、竜機を発掘し、空中戦艦を作っているということは、あからさまに架空敵はこの竜皇国であることは間違いない。

全くどこもかしこも敵ばかりである、とリュフトヒェンはため息をついた。

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