第154話 社会的幼女、威張る。

「わーっはっは!どうじゃ!見たか妾の活躍を!妾凄いじゃろう!褒め称えろ!」


 一方、アーテル領に帰ったアーテルは、人間形態になりながらアリアたちに、胸を張って威張り散らしていた。

 アーテル領の上空にも映像魔術で彼女たちの活躍が写し出されており、彼らも実際にその活躍を目にしたのだ。

 今まで彼女を侮っていた者、半信半疑だった者、信じていなかった荒くれ者などにもその強さはよく伝わっていた。

 あんな強大な存在がいる地域で、彼女の意にそぐわぬ事をすればどうなるか。

 それは彼らも思い知ったことだろう。


「はい!それはもう!人には及ばぬ強さ!そしてその美貌!流石アーテル様です!我々では到底及びません!ぜひともこれからも我々をお導きください!」


「はーっはっは!!うむうむ!良いぞ!お主たちクソ雑魚人間どもは、やはり妾が導いて庇護してやらんといかんようじゃな!うむ!妾を崇めればやってやらん事もないぞ!!」


 腰に手を当ててふんぞり返りながら哄笑しているアーテルをよそに、アリアは小声で黒騎士に対してこっそりと話しかける。


(今です!黒騎士様も誉めて誉めて誉めちぎってあげてください!アーテル様は誉めれば誉めるほどやる気を出すタイプですから!)


(お、おう。でも調子に乗ってやらかすタイプじゃないか?)


(まあ、そこは私たちがカバーするという事で……。)


 まだ幼い少女なのに、苦労してるなぁ、という不憫な目で思わず黒騎士はアリアを見てしまう。

 もっとも、当の本人は衣食住満ち足りた生活できちんと充実した働きをできているから文句は欠片もないが。


「それでアーテル様。書類仕事を行うために、読み書きのできる人間を雇いたいのですが……。あと勉強なども素質のある人間に教えるための予算なども……。」


「うむうむ!許すぞ!妾の領地を発達させる事ならどんどんやるがいい!きちんと金も払うからしっかりやるがいい!」


 はっはっは!と上機嫌に笑うアーテル。

 ようやく普通?と金銭感覚を覚えてきた彼女だが、こういう上機嫌な時にその枷が吹き飛ぶのが彼女の悪い所である。

 ともあれ、予算を確保して許可を得たのなら至急文官をかき集めるか育成する必要がある。素質のある人間に読み書きなどを教えて雇えば、雇用も生まれるし治安安定にも繋がる。時間はかかるがやるしかない、というのが実情である。


「あ、ところでアーテル様。竜都からこちらが届いています。確認してサインしてくださいね。」


 そう言いながら、アリアはどこから取り出したのか、大量の書類の束をどさり、と彼女の前に置く。リュフトヒェンたちも書類仕事に奔走されているのだ。

 大公である彼女も当然ながら書類仕事から逃れられはしない。

 その量を見て、アーテルは今までの上機嫌を他所に、茫然とした顔になる。


「えっ?これいちいち確認してサインするの?マジで?」


「リュフトヒェン様たちはもっと大量に仕事してますよ!頑張ってください!アーテル様ならできます!」


 そのアリアの言葉に、思わずひぃん、という顔になってしまうアーテルだった。





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