第152話 二日酔いとノックダウン

「うう……。頭いた……。」


 傍に全部ガブ飲みして空になった酒の大樽を転がしながら、朝日を顔に浴びたセレスティーナはよろよろと立ち上がる。

 そこは現在建設中の竜神殿の内部である。

 ほとんど神殿自体は大半が建設が終わっており、竜信仰を行う神官戦士たちもすでにここで寝泊まりしている。

 最終的には、この神殿を竜信仰の聖地として人々に普及する予定ではあるが、まだまだ建設途中である。

 そして、酒に酔ったセレスティーナはこの神殿にリュフトヒェンを引き連れて、力尽きるまでさらに酒をガブ飲みしたのだ。

 竜に仕える竜の巫女としてはあるまじき姿ではあるが、エレンスゲとニーズホッグ分体という強敵に勝利した無礼講ならば、仕方ないだろう。


 傍に転がっている大樽やジョッキなどを蹴り飛ばさないように、ふらふらとセレスティーナは水を飲みに行く。


 と、そこでセレスティーナは足先にこつん、と何かが当たる感覚がした。

 その彼女の足元にあったのは、仰向けになってお腹を空に向けて白目を向いて倒れこんでいる小型化したリュフトヒェンの姿だった。


「ご、ご主人様!?誰がこんなひどい事を……!?」


 アンタやアンタ。と心の中でリュフトヒェンは呟く。

 あの後、止める言葉も聞かずに、リュフトヒェンも彼女の手によって散々酒を飲まされる羽目になってしまったのである。

 竜である彼も酒は好きだし、飲む分には問題はなかったのだが、いくらなんでも大量に飲まされてそのまま寝入ってしまったのだ。

 だが、それをいうと彼女は激しい自己嫌悪に苛まれそうだったので、とりあえず黙っておく事にした。


 二人揃って顔を洗って水を飲んで、すっきりした二人は、リュフトヒェン領のあちこちを見て回る。

 あれだけの大宴会の後で、ほとんどの人々がノックダウンで寝入っている状態だ。

 まともに起きているのは交代制の見張り番と警備隊ぐらいのものである。

 だが、創立以来ずっと苦労をかけっぱなしだった彼らに、今日一日は報いてやるべきだろう、とリュフトヒェンは皆をそのままにしておくことにした。

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