第151話 勝利の宴会
「我らが王竜様万歳!この地を守る守護王万歳!」
ニーズホッグ分体の撃破がライブ中継で見せられたリュフトヒェン領は、すでに村人総出での大宴会になりつつあった。
あれだけの苛烈な戦いを潜り抜けて、自分たちの土地を守ってくれた存在をリアルタイムで見れば、それは宴会で盛り上がるのも当然である。
隣村からも、ライブ中継こそなかったものの、リュフトヒェンが敵竜を倒したという情報は入ってきたらしく、次々と酒などが送られてくる。
その中では、アリアの妹も一生懸命料理の手をふるっていた。
彼女は竜を満足させるべく料理人の道を目指すべく料理人の弟子入りを行っているらしい。
以前は辺境近くの何もない村だったのが、ゴールドラッシュによる物流と人の流れが極端に多くなったので、こちらにそれだけの物を送れるようになった事は、経済的に大きな発展を遂げた事を意味している。
ともあれ、リュフトヒェン領の皆は無礼講と言わんばかりに送られてきた酒をガブ飲みし、作られた食料を口にしながら各自宴会を初めてしまう。
戦いを終えて魔力を多大に消費して飢えたリュフトヒェンとアーテルが大量に食料を消費してなお、まだ皆が宴会をできるほどの備蓄があるのだから、よく何もない所からここまで大きくなった物だ、としみじみする。
エルフやドワーフや竜人や人間が肩を組みながら楽しそうにジョッキを掲げる。
他の国では見られない光景である。
だが、誇らしさも感じると同時に、リュフトヒェンはその光景に危うさも覚えていた。
今は良くても、いずれ民族独立運動など起きれば、こんな状況は瞬時に崩れ去って血で血を洗う戦いが始まってしまうだろう。
そうすれば、お互いの種族の間に残るのは、融和ではなく種族間の深い溝と憎しみだけである。自分が作り出したこの国も、粉々に砕け散ってしまうだろう。
自分のための作り出した国であっても、知り合った皆の事を考えるとそれだけは絶対にノーである。このような分離独立運動を起こさない対策を今のうちから考えておかなくてはならない、と考えているリュフトヒェンの元に、珍しく顔を赤くしてジョッキを手にしているセレスティーナがやってくる。
「ご主人様~♪こんな時ぐらい暗い顔してないで飲みましょう~♪」
そういいながら、小型化したリュフトヒェンを抱きしめながら、ジョッキを掲げる彼女からは、強いアルコールの匂いがした。
基本的に酒が強い竜の因子を受けついだ彼女たち竜人はアルコールにも強い。
それでもこれだけ酔い酔いになっているという事は彼女も相当な量の酒を飲んだということだ。
『うわっ、酒くさっ!君相当飲んでるね!?』
「ふっふっふ。こんなめでたい席で飲まない方がどうにかしてますよ~。
強大な悪竜を退け、我らを守護してくれるご主人様。
偉大なご主人様にかんぱーいです!!」
やれやれ、とジョッキを振り上げてそう叫ぶセレスティーナに対して、リュフトヒェンは抱きしめられながら呆れた顔を見せた。
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