第130話 村の巨大化
そんな中、リュフトヒェンは、とある資料に目を通していた。
それは、彼が頼んで鉱山夫用に作ってもらった作業用スボンの売れ行きである。
鉱山夫は激しい作業のため、すぐにズボンが擦り切れてしまうため、頑丈なズボンを買い求めるという彼の読みは見事に的中していた。
その売れ行きの良さに、思わず彼の顔にも笑みが浮かぶ。
『よし、試作で作ってもらった作業スボンもバンバン売れてるな。笑いが止まらないで。……所で、ならず者たちの中でもさらにろくでもない奴が失踪していたりするみたいだけど、何知らない?』
「さあ?どうせルールを守らずに好き勝手して魔物に食べられたのでは?よくある事でしょう。」
自分たちのやっている事を棚に上げて、しれっと答えるセレスティーナ。
実際、ここでの秩序維持機関である彼女たち自身が関与しているなら調べる手段はないし、元々厄介者たちが消えて喜ぶのはリュフトヒェンたちである。
そんな嫌われ者たちの事をわざわざ調べるほどもの好きでもない。
「とりあえず、ならず者たちはアーテル領に回そう。元々それ目当てに来た人たちだし、ここよりは金の取れる方に群がるに決まってるし。」
「妾の領地ろくでもない奴らしかこないんじゃけど!?何とかして!?」というアーテルの叫びが思い浮かぶが、まあスルーしておく。
『ともあれ、比較的マシな流民たちを取り込んでウチの村民にしようと思う。皆、不満はあるだろうが、飲み込んでもらいたい。』
そう言いながら、リュフトヒェンは頭を下げる。
村の古参勢がこの村は我々の村であり、新規の者たちを歓迎していないのは知っている。だが、これ以上の村の発展のためには、彼らの力を取り込む事はどうしても必要だということも知っているのだ。
まずは村に来たのはいいが、働く当てのない女性たちに石鹸作りやポーション作り(霊草を植えたり干したりの加工など)を手伝わせて仕事を与えて賃金を与える。
その中でも魔術の資格のありそうな者は、魔術師としての訓練を積ませる。
流れてきた親を失った孤児たちも同様だ。
近くの村に流れてきた者たちを集めて、竜神殿で引き取り、訓練を積ませて神官や神官兵士として育てる。
文字通りの少年兵であり、リュフトヒェンもいい顔をしなかったが、飢え死にするよりもマシ。事実上の福祉政策である、と言われて渋々納得した。
そして、今もっとも必要としている物。それは軍である。
以前の練兵で、今の村人たちは皆連携して戦えるようになっているが、まだまだ数がどうしても少ない。(ついてきた兵士たちもいるが、やはり村自衛の自前の戦力は欲しい)
やはり新入りの村人たちにも練兵の訓練を義務付ける必要があるか、それで文句のいう奴らはここに入ってきても馴染めないだろう。
自分の身は自分たちで守る。それくらいの気合が必要なのだ。
『問題はスパイの方なんだけど、完全に防ぐのは難しいよなぁ。とりあえず様子見するしかないか。』
以前のように心音の変化の確認や、防諜専門の人間も一応はいるが、これだけの人数の確認するのは難しい。
こうして、リュフトヒェン領は小さな開拓村から、大規模な村へと変貌を遂げつつあった。
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