第59話 あんたかい!

前回までの簡単なあらすじ


男子校との合同体育祭が決定

男子校に通う爽やかイケメン(実は性格クソなヤリチン野郎)がひなみを狙う

体育祭で仲を深めて一気に落とす作戦だと、涼は気が付く

それを阻止するべく、体育祭で古井さんと涼が妨害をする 


という流れです。ではどうぞ!


――――——


 …………。

 あー。いかんいかん。こりゃ疲れて幻覚を見ているんだな。

 そんなわけないよな。

 俺はパタンッと紙を一旦折り、そして再度確認してみる。


『千年に一人の美少女』


 そう書かれていた。

 ……え、ちょ。待ってくださいよ。

 どゆこと?

 何でこんなピンポイントにひなみに繋がる特徴が書かれているわけ?

 な、何だこの妙な胸騒ぎは……。

 も、もしかして!

 俺は箱の中に入っている他の紙を適当に数枚取り、中身を確認してみる。

 するとその全てに、


『千年に一人の美少女』

 

 そう書かれていた。


 …………。

 こ、こんなことがありえるのかぁぁぁぁ⁉


 もしかしてこれ全部中身が一緒なの⁉

 だとしたら一体誰が箱の中身をこんなことにしたんだ⁉

 何この嫌がらえ行為はっ!

 こんなことやる人絶対性格悪いでしょ!

 ち、そう思った時。

 不意に古井さんのあのいやらしい笑みが脳内をよぎった。

 ま、まさか……。

 俺は観客席にいる古井さんをジッと見つめる。

 すると俺の視線にすぐ気が付き、そして。


「ファイト」


 そう言いながら親指を立て、あの時と同じ笑みを浮かべた。

 古井さんんんんんんんんんん!!!

 やっぱりあんたかい!

 あの人本当ドSだなおい!

 容赦ねぇ!

 動揺に思わず硬直する俺に対し、古井さんは足を組みながら、ゆっくりと口を大きく動かす。


「は・や・く・う・ご・き・な・さ・い・げ・ぼ・く」


 誰が下僕だこらっ!

 こうなったのもあんたのせいでしょうがぁぁぁぁ!

 何故『千年に一人の美少女』というお題を俺に……。

 嬉しいけど、ちょっと強引すぎませんかね⁉ 

 何故こういう展開になるんだ。

 はぁー。クソォォォォー。

 深いため息が出た後ガクッと肩が落とす俺だが。


 ――あ、そうか! そういうことか!


 ピンッと、まるで犯人のトリックを見破った探偵の様に、俺はあることに気が付いた。

 先ほど、借り者競争に関する簡単なルール説明が流れていた。

 確かその際、『一度選ばれた人を再度選ぶことはできません』と言っていたはず。

 これが正しいなら、古井さんの意図が分かった。理解できたぞ。

 この借り者競争では、前走者が借りた人を、次の走者が使うことはできない。

 つまり、第一走者の俺がひなみと一緒に競技をすれば、第二走者の草柳は彼女を使うことができない。

 古井さんはこれを最初から計画していたのか!

 競技が始まる前に、『普通に競技をしていればいい』と言っていたけど、こういうことだったのか。

 さすが高IQの持ち主!

 そうとなれば、動くしかない!

 やるしかない!

 頑張るしかねぇだろ!

 俺はそう思い、応援席にいるひなみの所まで一気に走り出す。


「ぬおおおおおお! やってやる! どんなお題が来ようと一緒にゴールして、草柳から守ってやる!」


 俺はとにかく全力で足と腕を動かし、風を切るようにして走る。

 そして一分も経たないうちに、応援席に座っているひなみの傍まで俺はたどり着いた。


「はぁー、はぁー。ひ、ひなみ。いてくれてよかった。ちょっといいか?」


 息を切らしながらそう言うと、ひなみはきょとんとした顔を浮かべる。


「ど、どうしたの涼君? 急に走り込んできて」


「はぁー。はぁー。ちょっと付き合ってくれ!」


「え、あ! りょ、涼君!」


 俺は驚くひなみの反応を無視しながら、半ば強引に手首を掴み、走り始める。

 それと同時に、ひなみの近くに座っていた人達が一斉に歓声を上げる。

 だが俺はそれを全て無視して、そのまま走ってレース場まで向かった。

 強引にヒロインを連れて走るなんて、まるで恋愛ドラマのワンシーンみたいだな。

 そんなことを思っていると、俺の後ろで走っているひなみが言葉を飛ばしてきた。

 

「涼君。今って借り者競争中だよね? も、もしかして私……」


「ああ、思っている通りだよ。出されたお題がひなみと一致してたから、連れて来たんだ。悪いな、ちょっと強引で」


「う、ううん。全然大丈夫。むしろ一緒に参加できてちょっと……う、嬉しい。かな」


「え? そうか?」


 強引に付き合わされているのに何故か嫌がっていないひなみに対し、俺は疑念を抱いた。

 俺が応援席に着いたと同時に、他の走者が借りる人を見つけ、レース場まで戻って行っていたのだが。

 周囲の人は、歓声をあげて盛り上がっていた。

 その理由はシンプル。

 借りられた人のほとんどが女子だったからだ。


 どんなお題が出されたのかは分からないが、ほぼ全ての走者は異性を選んでいた。

 周囲の人からすれば、盛り上がる要素でしかない。

 これを機に仲が深まって、恋人になる。という展開にも繋がる。だからさっきひなみを連れて行った時に、場が盛り上がったのだ。

 だけど、ひなみには好きな人がいる。

 本来なら迷惑だと思うのだが……。


「まあ、色々迷惑かけちまうけど、お題がお題だったし、我慢してくれ。本当悪いな、ひなみ」


「う、ううん! 大丈夫だよ。一緒に頑張ってゴールしようね!」


 と、ひなみは頬を紅色に染めながら優しく微笑んだ。

 嫌がっているようには見えないし、ちょっと安心だ。

 よし! 

 さっさとゴールして終わらせるか!



 そう思いながら俺はレース場に再び戻ったのだが……。

 この後のレースに俺は色々とピンチを迎える。


―――

お待たせして申し訳ない……!

これから完結に向けて頑張るぞ~

あと少々本編の方を修正しました。


主な変更点

草柳は2年生でしたが、涼たちと同い年に変更。

また、借り者競争も参戦。


混乱させてすみません!お願いします。

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