第56話 キスだと!?

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 タイトル→「地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。」

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 俺は静かにカラオケ部屋から出ると、店の出口に向かって歩いている草柳の背中が見えた。

 あの野郎、外に行くつもりか?

 忍者の様に足音を消しながら、その後を追う。

 俺に尾行されていることに気が付いていない草柳は、そのまま店の外に出る。

 俺もすぐに外に出ると、草柳は店の裏路地に向かった。

 おいおい……。

 こんな時間に路地裏で何をしようとしているんだ?

 路地裏ははっきり言って、全く人の気配がない。街灯は不自然に点滅し、物音一つしない。静かで不気味だ。

 俺は再度気を引き締め、気配を消しながら路地裏を進む。

 すると草柳のさらにその奥に、ひなみがいた。

 少しだけ不安そうな表情を浮かべている。

 こんな場所にひなみを呼び出すなんて、絶対何かあるはずだ。

 俺は適当に物陰に隠れ、草柳とひなみのやり取りを監視する。


「やあ、ごめんね、ひなみちゃん。こんな場所に呼び出して」


「い、いえ。全然大丈夫です。それで……用とは何でしょうか?」


「ああ、それなんだけどさ。聞きたいことがあってね」


 草柳はそう言った後。

 ドストレートにこう質問した。


「ひなみちゃんって、今彼氏とか好きな人いるのかな?」


 こ、この野郎……。 

 ひなみに彼氏とかがいないかを確認してやがる。

 彼氏がいるかいないかをここで聞いて、今後の動きを考えるつもりか。

 ゲス野郎が!

 事情を知っている俺からすればゲスな質問だが、ひなみは何も知らない。

 だから純粋に恋バナをしているのかと考えたのか、一気に顔が赤くなる。


「えぇ⁉ か、彼氏とかいませんよ! それに今までできたこととかないですし……」


「へぇー。ちょっと意外だなー。彼氏が今までいなかったんだね」


「……はい。今は共学ですけど、去年までは女子校でしたから、出会いとかは……」


「そっか。じゃあ好きな人とかいるの?」


 草柳がそう質問すると、ひなみの顔がさらに赤くなり、頭からブシュ―ッと煙が出始めた。

 どんだけ恥ずかしがっているんだよ……。


「す、す、す、す、好きな人は……そ、その……。い、います! 大好きな人がいるんです!」


 勇気を振り絞って強く言い切るひなみ。

 ピュアで天然だからこそ、好きな人に対する気持ちは正直みたいだ。

 本当、ひなみから好かれている男が羨ましい。

 そんな彼女の姿を見た草柳は、ニッコリと微笑んだ。


「そっか。いるんだね。実は俺もいるんだ。好きな人が」


「えぇ⁉ 草柳さんもいるんですか⁉」


「うん。いるんだ。でもその人はさ。俺のことあんまり意識してないみたいだから、ちょっと積極的にアタックしてみようかなって思っているんだ。彼氏もいないみたいだし」


「そうなんですね! 私応援します!」


「ありがとう、ひなみちゃん。じゃあその応援に感謝して、一歩踏み出してみようかな」


 草柳がそう言った直後。

 一歩ずつひなみの方に近づいていった。

 無言でひなみの方を見ながらどんどん近づいていく。

 一方ひなみは、草柳の行動に動揺しているせいか、足が動いていない。

 ひなみの表情がどんどん不安そうになっていく。


「あ、あの草柳さん? ど、どうしたんですか……」


 危機感を感じたのか、ひなみは少し震える。

 しかし、草柳は安心させるために優しい笑みを見せる。

 そして手の届く位置まで近づくと……。

 草柳はひなみのあごにそっと触れた。


「え、え? あ、あの草柳さん?」


 草柳は混乱するひなみを無視しながら、触れている手でクイッと顔を上がる。


「大丈夫だよ。怖がることはない。さあ、目を閉じて……」


 そう言うと、草柳はゆっくりとひなみに顔を近づけた。

 そしてそのまま草柳は目を閉じ、口先を少しだけ尖らせる。

 まるで王子様がお姫様に誓いのキスをするように。




――――

いよいよ明日発売!

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