第52話 爽やかイケメンだと!?

 ひなみ達のサポート役を任命されてから数日が過ぎ、いよいよ星林高校の人達と、初の顔合わせになった。

 現在、俺達は駅の近くにあるファミレスで八人用のテーブルに座りながら相手の方達を待っている。

 本来なら学校で会議をやるべきだが、相手の要望でファミレスで行うことに。

 どうやら、リラックスしながら、ゆっくり話がしたいそうだ。

 

「いや~。どんな人が来るんだろうね~。ちょっと楽しみだな~」


 友里はストローに口を付け、ジュースを一気に飲む。

 飲み干した後、少しだけ目を輝かせながら、こう言い出した。

 

「これ噂なんだけどね、相手は一年生らしいんだけど、その内の一人がアイドルグループに所属しているみたいなんだよね~。ヤバくない?」


 アイドルグループ、ね。多分シャニーズとかかな。

 高校二年生でもう事務所に所属しているとは、驚きだ。相当なルックスと歌声があるんだろうな。

 クソ、ちょっと羨ましい。


「へー。将来大物になるかもしれない人が来るんだ。余計緊張しちゃうね!」


 と、ひなみが食いつく。

 すると友里はまるで悪だくみでも思いついた様に、一人ニヤニヤしだす。 


「ま、私達にも『千年に一人の美少女』って肩書があるひなみがいるけどね~。むしろこっちの方がインパクト強いかもね~」


「もう友里! からかわないでよー! 私その呼び名あんまり好きじゃないんだから!」


 友里の言葉に、ひなみはプクッと頬を膨らませつつ睨んだ。

 ひなみとしては怒っているつもりなのだろうが、傍から見ると可愛さしかない。

 勿論、ひなみは天然だから、そのことに気が付いていないだろけど。

 

「な~に言ってんの。可愛さにおいて、ひなみの右に出る者はいないね! 絶対に!」


「私なんかよりも可愛い子はいっぱいいるよ! 友里とか古井ちゃんだってそうじゃん!」


「いやいや~。ひなみに比べたら私なんてミジンコみたいなもんよ~」


 いや、友里と古井さんも十分可愛いと思うが……。

 その証拠に、さっきから他の客が美少女三人のことをチラチラ見ている。

 ひなみの方に目を向ける人は多いが、それでも友里や古井さんも十分存在感を放っている。

 何で俺みたいな奴が、こんな美少女三人の傍で座っているんだよ。

 場違い感半端ねぇ。

 一人虚しい気持ちになっていると、静かにジュースを飲んでいた古井さんが、口を開いた。


「友里、ひなみ。会話はその辺にして。相手の方達が来たわ」


 その言葉を聞き、二人は背筋をピンッと伸ばした。

 俺も彼女達に続き、姿勢を正す。

 古井さんが見ている方向に目を向けると……。

 星林高校の制服を着た男子高校生四人がこちらに向かっていた。

 四人組の先頭にいる高身長で金髪、ネックレスを付けたイケメンな男子生徒が、俺達に気が付き、目が合う。


「あっ! あそこにいるみたいだ。すみません、遅れてしまって!」


 そう言いながら、小走りでこちらに向かう。

 な、何だこの爽やかイケメンは!

 金髪でネックレスを付けているのに、全くチャラついている感じがしない!

 むしろしっかりしているし、さらに声がカッコいい!

 ま、まさか……。

 この人がアイドルグループに所属している人か!


「遅れてしまってすみません! 星林高校から来ました、一年生の草柳拓哉くさやなぎたくやです! よろしくお願いします!」


 ニッコリと笑いながら、目の前にいる――草柳さんは自己紹介をした。

 な、なんて眩しい笑顔なんだ!

 爽やかでそれでいてどこか落ち着きがある。

 す、凄いな。これがアイドルの力か!


「初めまして! 時乃沢高校の一年生徒会の、九条ひなみです! 今日からよろしくお願いします!」


 ひなみは席から立ち、星林高校の四人にニッコリと笑いながら挨拶をする。

 な、何だこの場は……。

 イケメンと美女が揃っているぞ。

 他の星林高校の生徒も皆カッコいいし、何だここは……。

 生粋の陽キャ共の集まりじゃねぇか!


「いや~、すっごいカッコいいですね~。もしかして草柳さんが噂のアイドルグループに所属している人ですか?」


 友里の質問に、草柳さんは笑顔でこう返した。


「はい。そうです。シャニーズの事務所に所属しています。まだアイドルとしてはひよっこですけどね。にしても、まさかもう知っているとは。ちょっと驚きました」


 そう言いながら、草柳さんは席に座る。

 高身長で金髪だけど、威圧感はなくむしろ爽やかさが伝わる。こりゃ日本最大のアイドル事務所も見逃さないわな。


「時間も限られているし、お互いの自己紹介をしたら早速打ち合わせをしましょう。無駄話を好きじゃないわ」


 イケメンを前にしても全く興味を示さない古井さんは、いつも通りクールなまま本題に早く入る様に促した。


「そうだね。時間も限られているし、そうしましょうか」


 草柳さんの言葉の後、俺達は互いに簡単な自己紹介をし、本題へと入っていった。

 だが俺はこの後知ることとなる。


 この男がクズだということを……。

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