第50話 す、すみません!!

 11月1日にスニーカー文庫から発売決定!!

 タイトル→「地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。」

 予約受付中!

 アマゾンとキミラノの予約リンクを貼っておきます!


 アマゾン↓

 https://www.amazon.co.jp/dp/4041130913

 キミラノ↓

 https://kimirano.jp/detail/32208


――――――



 友里のお姉さんが乱入してきてから二時間程が経過。

 長い時間友里の部屋にいたが、いつの間にか空が暗くなっていたので、解散することになった。

 俺は夕焼け色に染まった空の下を、しょんぼりしながら歩く。

 今日の勉強会の成果を発表しよう。

 美女二人に挟み撃ちにされた俺は……。


 全く勉強に集中できなかった。


 普通にできるわけねぇだろ!

 めっちゃ香水の良い匂いがするし、体が触れあっているし。

 勉強中、友里のお姉さんは終始俺にちょっかいを出してきた。


「ねぇ~、今彼女とか好きな人とかいるの~?」


「友里の私なら、どっちと付き合いたい?」


「あっちの経験とかはどうなのよ?」


 みたいな質問を、隣ですげぇーニヤニヤしながら聞いてきた。

 年下の男子にちょっかいを出すのが相当好きみたいだ。

 ギャルらしいな。

 一方、友里はお姉さんの言動に我慢ならず、色々と反抗していた。


「お、お姉ちゃんには涼の恋愛事情なんて関係ないでしょっ!」


「妹の友達を惑わすとか最低! だから彼氏ができないんだよ!」


「お、お姉ちゃんの変態! バ、バーカ! ビッチ!」


 こんな感じで俺を間に挟みながら火花を散らしていた。

 といっても、対抗心を燃やしていたのは友里だけで、お姉さんは落ち着いていて余裕があったが。

 当然、こんな状況では勉強など集中できるわけもなく、本日終わらせる予定だったタスクは、無事未達成。

 はぁー。昨日に続き今日も何もできなかったよ……。

 まさか友里にお姉さんがいて、さらに邪魔されるとは、予想外だ。

 年下の俺をからかうのが相当好きみたいで、ちょっかい出しては一人で勝手に笑い、満足をしていたけど……悪い人ではなかった。

 別れ際にこんなことをこっそり俺に言ってきた。 


「友里からお話は聞いているよ。小さい時に友里がお世話になったね。今後とも私の可愛い妹と仲良くしてあげて! じゃっ!」


 案外良い人なんだな。

 友里のことをちゃんと大切にしている。

 今日は言い争っていたけど、あの姉妹は普段から仲が良さそうだ。

 俺と美智香とは大違いだ。羨ましい。

 

 

 次の日になり、勉強会最終日を迎えた。本日の勉強内容は理科。担当は古井さんだ。

 学校を終えた後、俺は古井さんの部屋に行き、そして……。

 彼女の命令により、正座をさせられている。

 強制的にだ。拒否権はない。

 いや、反抗しようとすれば、できるのだが……。

 今の古井さんの表情を見たら、そんなことできるはずもない。

 実を言うと、数学と英語が全く進んでいないことが古井さんにバレてしまった。

 試験範囲になっているテキストがどのぐらいまで進んでいるのかチェックされ、発覚したのだ。

 ほぼ手を付けていないテキストを見た古井さんは……。

 泣く子も黙るほど恐ろしい目つきで俺を睨み、強制的に正座をさせた。

 右手に鞭が持ちながら。

 怖くて反抗できねぇよ。


「あ、あの……。古井さん。俺も頑張ろうとしたのですが、色々とあってですね……。本当頑張ろうとしたんですよ……」


 古井さんは俺の言葉を聞くと、さらに目つきを鋭くさせた。


「ふぅーん。頑張ろうとした、ね」


 古井さんはさらに続ける。


「一昨日の勉強会では母親とひなみ親子丼を味わい、昨日は、姉と友里姉妹丼を美味しく頂いといて、よくそんな言い訳が言えるわね」

 

「あ、あの古井さん? そこだけ聞くと、まるで俺が変態みたいになるのですが……」


「黙れこの変態! たらし! ヘタレ!」


 バチンッ!

 古井さんは持っていた鞭を床に思い切り打つ。

 ヒィィィィッ!

 こ、怖い怖い!


「今どんな状況か分かっているのかしら? 小テストで壊滅的な点数を取っておいて、よく親子丼と姉妹丼を味わえる余裕があるわね」


「え、えっとですね……。本当俺も頑張ろうとしたのですが、集中ができなくて」


「お黙り!」


 バチンッ!

 さっきよりもさらに強く鞭を打つ。

 こ、怖すぎる! ってか何で鞭なんか持っているのさ! 普通はいらないでしょ!


「試験まで残り日数も少ないわ。こうなったら、今日ここで死ぬ気で勉強してもらおうかしら」


「え? 死ぬ気で? こ、古井さん。一体何をするつもりなのですか?」


 俺の言葉を無視しながら、古井さんはこう言い出す。


「両足を前に出しなさい。長座体前屈みたいにして」


「え? 足を? 何で?」


「いいから出して。へ・タ・レ」


 古井さんの威圧に負けた俺は、そのまますんなりと、両足を前に出した。

 でも一体何をするつもりなんだ?

 と、疑問に思っていると、古井さんがポケットから何か銀色の物を取り出し、そして。


 ——ガチャリッ。


 変な音と共に、俺の両足に何かを付けた。

 目を向けると俺の両足には……。

 手錠が付けられていた。

 警察官が悪者を逮捕する時に使うあれが、俺の両足に付けられてしまったのだ。


「……あ、あのー古井さん? これは一体なんでしょう?」


 予想外の展開に困惑しながら聞くと、古井さんはこう言った。


「なんでしょうって、見れば分かるでしょ? 手錠を足に付けたのよ。君が逃げられない様に」


 逃げられない様に。

 その言葉を聞き、俺はブルッと鳥肌が立った。


「え、それってつまり……」


「私の教えが君の脳にしっかりと定着するまで、今日は帰さないわよ? でも安心しなさい。夜遅くなってもタクシーを使わせてあげるから。勿論私の奢りで。だから気にせず勉強に集中すること。ただし、もしふざけたら……」


 一旦言葉を止める古井さん。すると俺に不気味な笑顔を見せ、そして。

 バチンッ!

 思い切り床を鞭で打つ音が部屋中に響き渡る。


「わ・か・る・わ・よ・ね?」


 ヒィィィィ!

 やっぱり怖いこの人!

 マジでふざけたら殺されるって!


「返事は?」


「は、はいぃ古井さん」


「よろしい。それと勉強中の返事は『イエスマーム』にすること。分かった?」


「イ、イエスマーム!」


 ちくしょー!

 理不尽だぁぁぁぁぁ!

 だ、誰か助けてくれぇぇぇぇ!

 生きて帰って来られる自信がねぇ!



 こんな感じで勉強会最終日は地獄だった。

 遅れを取り戻すために、理科だけでなく数学と英語まで勉強するハメになってしまった。

 この日の勉強時間は六時間。

 すっかり家に帰るのが遅くなってしまった。

 集中を切らせれば、どこからでも鞭を打たれるため、とにかく余計なことは考えないようにした。

 その結果どうにかタスクを片付けることができた。

 俺がずっと集中していたのもあるが、それ以上に古井さんの教え方が上手く、躓くことなく勉強を進めることができたからだろう。

 古井さんの教えがとんでもなく上手く、一回の説明ですんなり理解できた。

 勉強もできて、教えも上手とは恐ろしい。




 こんな感じで勉強会も終わり試験を迎えた。

 結果は全教科五十点以上を取ることができ、どうにか赤点を回避することができた。

 これもあの三人のおかげだ。(まともに教えたのは古井さんだけだが)

 お礼にあの三人に今度昼食でも奢るか。

 さて、試験が終わり赤点も回避したから音ゲーでもするか!

 あ、そう言えば、試験が終わった後は確か体育祭があるんだっけか?

 高校生活初の体育祭、楽しみだなー。

 何もトラブルが起きないといいけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る