第48話 色々しちゃう!?

「さっさ! ここが私の部屋だよ~。入った入った!」


 友里の部屋に案内された俺は、緊張しながら足を踏み入れる。

 入った瞬間、女の子らしい良い匂いがツンッと鼻腔を刺激してきた。

 ひなみの時もそうだったけど、何で女子の部屋ってこんなにも良い匂いがするんだよ……。

 それにしても……ここが友里の部屋なのか。

 友里の部屋を一言で言うなら……部屋全体が青色で染まっている。と言うべきだろう。

 ベッドのシーツカバーに絨毯、カーテンの色全てが、友里のイメージカラーである青色だった。

 自分のイメージカラーに合わせて部屋をアレンジしているとは、凄いな。

 それに、枕元には可愛らしいクマさんの人形が二つほどあり、これにも驚いてしまった。

 クマさん人形と一緒に寝ている友里の姿を想像すると、ギャップがあってなんか可愛い。


「勉強を始める前に、私の部屋について感想を聞こうじゃないか!」

 

「え? 感想? 何でだ?」


「涼はダメですな~。ただで女の子の部屋に入っているんだよ? こりゃ~感想を言わないと、ダメなんじゃないかな~?」


 友里はキラキラと目を輝かせながら、グイッと距離を詰めてくる。

 まるで、褒めてくれって言っている気がする。

 入学してすぐの頃は、ただ趣味友だったのだが……。

 林間学校を機に、妙に距離が近くなった。

 まるでアピールしている様な……。

 お、俺の考えすぎか……。

 ああ、いかんいかん。そんなことよりも今は部屋の感想について言ってあげないと。


「……うん。友里っぽくて俺は凄い好きだよ。お洒落で可愛らしい」


「えへへ。ありがとう~」


 友里は俺の言葉に満足したのか、可愛らしい笑みを見せた。

 満足していただけたのなら、そりゃよかった。

 その後俺達は、友里の部屋に小さな円形のテーブルを置き、勉強を開始した。

 昨日は何だかんだあまり勉強に集中できなかった。だから今日こそはしっかりと勉強をし、テストに備えよう!

 と思っていたのだが……。


「ゆ、友里……。な、なんか近くね?」


 友里はべったりと肩をくっ付けながら、俺の隣に座っていた。

 ……え? 普通は向かい合わせになるよね?

 な、何故こんなにも距離が近いんだ。

 香水の良い匂いが悪い意味で理性を刺激してきやがる。

 それに友里の体温が直に伝わってきて、全然集中できん!

 

「え? そうかな~? 勉強を教えるわけだし、近い方がいいじゃん」


「確かにそうだが……。やっぱり近くね?」


「いいじゃ~ん。


「い、いやでもだな……」


「も、もしかして……嫌だった?」


 ここで友里は心配そうに俺の顔を見つめる。

 ウルッと潤った瞳に、真っ白な肌。薄紅色の柔らかそうな友里の唇が、俺の目に入った瞬間。

 一気に体が熱くなってしまった。

 ク、クソッ!

 反則だろこれ!

 このまま直視していたら色んな意味で危ないと感じた俺は、反対方向にスッと顔を向けた。


「全然嫌ではない。た、ただ……近いなーっと思っただけだ」


 友里は友達だけど、今をトキメク乙女でもある。だから傷つかない言葉を選んだのだが。


「えっ⁉ 本当! 嬉しいな~。えへへ」


 友里のテンションが余計に上がってしまった。さらにグッと俺の方に体重をかけてきた。

 何だよこれ……さっきよりもお互いの体がくっ付いてるじゃねぇか!

 こんな状況で勉強しろって言われても無理があるぞ!

 

「ねね、涼。昨日の勉強はどうだった? はかどった?」


「え? ま、まあボチボチかな。色々あったけど」


「ふぅ~ん。あの千年に一人の美少女と色々あったんだね~。色々したんだね~」


「お、おい! 友里が想像していることはしていないぞ! 勘違いはやめてくれよ⁉」


 俺の焦った反応が面白かったのか、友里は腹を抱えて大笑いした。


「あはははははっ! 冗談だよ! きっと蜜柑ちゃんとお母さんにちょっかい出されたんでしょ?」


「な、何で分かる……」


「ひなみの家で遊んだことがあるから、何となく分かるよ~。それにひなみはピュアだから、そんなことするわけないじゃん」


「分かってて俺をおちょくったのかよ」


「せいか~い! さっすが!」


 友里は最後に小悪魔の様な笑みを浮かべながら、ウィンクをした。

 ったく俺のことをからかいやがって。

 しかし、反撃をしたいが友里の弱みを何も知らねぇ。何も言い返せねぇ。

 ちくしょう! 悔しい! 友里ばっかり俺をからかいやがって!

 と、一人歯を食いしばる俺だったが。

 この後の友里の言葉に、思わず口がポカンと開いてしまった。


「ねね。じゃあさ……?」


「……え?」


 ん?

 んんんんんん??

 んんんんんんんんんんんんん⁉

 おいちょっと待て。

 それってどういう意味⁉

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