第39話 二人でお話!?
ビリリリリン!
俺の耳元でスマホのアラームがキーンと鳴り響いた。二度寝したいという欲を抑えながら、アラームを止め、そっと起き上がった。
時刻は午前五時。何故こんな速い時間にアラームをセットしたのか?
その答えはたった一つ。
朝早く起きて、こっそりと男子部屋に戻るためだ。
ここは女子部屋。当然、このフロア全ての部屋に女子が寝ている。
もし俺がこの部屋から出ている所を目撃されればどうなるか。
考えただけでも震える。
この時間ならほとんどの生徒が寝ているはず。その隙にこっそりと男子部屋に戻れば、この危機的状況を打破できる。
俺は目を何度かこすり、隣で寝ているひなみに目を向けた。
「すー。すー」
随分と静かな寝息だ。それに寝顔もすげぇ可愛い。まるで王子様のキスを待っている王女様みたいだよ。
さて、ひなみが抱えていた問題は解決したわけだし、部屋に戻りますか。
俺はそっと立ち上がり、ドアの前まで歩く。
すると、ドアに一枚の付箋が貼られていた。
「ん? 何だこれ? 何か書いてあるぞ」
俺は付箋を手に取り、そこに記載されている文字を読み始めた。
『起きたら一階のロビーに来なさい。勿論一人で。待っているわ。 古井より』
古井さんからだと分かった途端、俺は咄嗟に布団の方に顔を向けた。
いない。あの人がいない。ひなみと友里の姿しかないぞ。
ひなみの寝顔を見ていたから、全然気が付かなかった。
えぇ……。何で俺呼び出しされてるの? しかもこの時間帯に。
というか何で古井さん俺の起きる時間把握しているの?
俺は頭をむしゃくしゃとかきながら、静かに部屋を出た。
「ちゃんと来てくれたわね。やっぱり私の読み通り」
ロビーに着くと、ソファーに座っている古井さんの姿があった。
こんな朝早いと言うのに、ちっとも眠たそうな顔をしていない。いつも通り、クールな顔をした古井さんだった。
「何で俺が起きる時間分かったの? 俺言ってないよね?」
俺がそう聞くと、古井さんはクスッと鼻で笑った。
「君の考えることなんて、手に取るように分かるわ。朝早く起きて男部屋に戻るつもりだったでしょ? なら、君が起きる時間より私が先に起きればいいだけの話」
「仮に俺の考えていることが分かったとしても、どうして起きる時間まで分かった?」
俺は起きる時間を女子三人には一切言っていない。にも関わらず、古井さんは俺より速く起き、予め付箋をドアに貼っていた。
俺が起きる時間を把握していないとできない。
「知ってる? スマホの機種にもよるけど、ロック中でもタイマーの設定はいじれるのよ? 君が眠った後に、タイマー設定を覗かしてもらったわ。でも安心しなさい。プライベートには干渉していないわ」
「な、なるほど……。その手がありましたか」
最近のスマホはロック中でもタイマーの設定ができる。それを利用して、俺がいつアラームをセットしたのかを確認したのか。
「ん? 待て。俺が眠ってから確認したのか?」
「えぇ。おかげであまり眠れていないわ」
俺は古井さんのこの言葉に、思わず体が固まってしまった。
古井さんは俺が寝てからスマホを覗いたということは……。
「もしかして、俺とひなみの会話聞いてた⁉」
「聞いてたというより、普通に聞こえたわ。隣で話していたんだから、嫌でも聞こえる。でも友里は熟睡していたみたいだから、君とひなみの会話を知っているのは私だけよ」
「マジっすか?」
「えぇ。随分とカッコいい事言っていたわね」
「や、やめてくれ……。ちょっと恥ずかしいから……」
俺はひなみとのやりとりを思い出し、急に体が熱くなってしまった。
ふ、普通に恥ずかしい。何でよりによってドエス王女が聞いているんだよ。
「俺を呼び出したのって、もしかして夜のやり取りについてか?」
「まあ多少関係しているわね。でも本命はちょっと君とお話がしたいからよ」
「え? 俺と? 二人っきりでか?」
「えぇ」
俺を見つめる古井さんの目は、いつもとは少し違っていた。
それが少々気になったが、俺はあえて聞かなかった。
古井さんと二人っきりで話か……。
やべぇ……、めっちゃ怖い!
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