第37話 泊まる!?

 華先生が部屋から去った後、布団から抜け出し静かにドアの方へ近づいた。

 そしてのぞき穴から部屋の前を除くとそこには……。

 

 パイプ椅子に鎮座する華先生がいた。

 

 俺の様に消灯時間を過ぎているのに、部屋から出ようとする生徒を問答無用でしばくつもりだ。 


「何でこの部屋の前で見張りをするんだよ。ちくしょうっ」


 俺の口から、つい愚痴がこぼれる。

 この状況で帰ることはほぼ不可能。絶対に無理だ。見つかったらただじゃ済まない。


「ど、ど、ど、どうしよう⁉ このままじゃあ涼君が帰られなくなっちゃう! どうしたらいいの⁉」


 何故か俺の代わりにあたふたするひなみ。

 そんな彼女とは対照的に、古井さんは落ち着いた態度でこう提案してきた。


「無理にこの部屋から出なくてもいいんじゃないかしら? もうこの部屋に泊まれば?」


「「……え?」」


 俺とひなみの口から同じ言葉がこぼれる。 

 さすがにこの提案は予想できねぇだろ……。


「いやいや古井さん。さすがにそれは無理でしょ」


「今部屋から出れば私達も怒られるわ。それにいつ先生の見張りが終わるのか分からないのよ? それまでずっと起きてるのも面倒過ぎる。大富豪も華先生の介入で滅茶苦茶になっちゃったし、もう寝ましょうか」


「えぇっ⁉ でもさすがに男子がいるのは良くないでしょ!」


 な、何だこのヤバい展開は⁉ 何で古井さんこんなに冷静なの⁉ むしろこの展開は読めてましたっ的な顔しているし。

 ん? 待て。ということはまさか……!

 俺は古井さんの傍までより、耳元で小さくこう囁いた。


「も、もしかして古井さんこの展開を狙ってた? 絶対そうでしょ?」


「さあー?」


「いや、何で茶化す⁉」


「勘違いしているわね。別に私は何もしてないわよ?」


「え、それ本当?」


「ええ。華先生に『就寝時間後に誰かこの部屋から出るかもしれないから、見張っておいた方が良いですよ』って言ったこと以外、何もしていないわよ。ま、華先生が部屋に入って来ることは想定外だったけど。おかげで罰ゲームをする余裕がなくなっちゃったし」


「やっぱり主犯はあんたじゃねぇかっ⁉」 


 また俺をハメやがったな!

 大富豪で罰ゲームを食らわせた後、部屋に帰らせない様に華先生を配置しておいたのか!

 このドSがぁぁぁぁ! 

 本当に俺の予想を超える行動ばかりしてきやがる!


「ひなみと友里はどうする? 私は別に泊めてあげても良いけど、お二人は?」


 古井さんは俺の反応をスルーしながら、二人の方に視線を向けた。相変わらず俺の意見なんて聞きやしねぇ。


「ん~。まあ帰られなくなっちゃったなら、仕方ないか! 涼なら私全然良いよ~。むしろ大歓迎かな!」


 友里のその言葉は嬉しいが、この状況じゃ率直に喜べねぇ。


「ひなみはどうかしら?」


「わ、私は……。二人がそれでいいなら良い……かな。涼君なら信用できるし」

 

 おいマジか。古井さん以外の女子二人も賛成かよ。


「じゃあそういう訳だから、一晩ここで泊りなさい。良いわね?」


「で、でも」


「い・い・わ・ね?」


「は、はいぃ……」


 こうして、俺は夜の時間も友里と古井さん、ひなみと過ごすハメになってしまったのだ。

 ちなみに、寝る順番は一番に抜けた古井さんが一方的に決め、右から友里、古井さん、俺、ひなみになってしまった。

 ひなみと一騎打ちをしている最中に、先生が来たため罰ゲームから逃れることはできたが、この展開はないだろ!

 罰ゲームを回避できたのに、全然違う罰ゲームが起きちまってるじゃねぇか!

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