第35話 分かりやすっ!?

 11月1日にスニーカー文庫から発売決定!!

 タイトル→「地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。」

 予約受付中!

 アマゾンとキミラノの予約リンクを貼っておきます!


 アマゾン↓

 https://www.amazon.co.jp/dp/4041130913

 キミラノ↓

 https://kimirano.jp/detail/32208


――――――


 クソったれ……。

 何なんだよこの手札はっ⁉

 ひなみと友里の手札に比べて圧倒的に多いうえに、ほとんどカスしかない!

 ここからどう逆転したらいいんだよ!

 古井さんの策略にハマってしまったとはいえ、この枚数はアウトだ。

 負ければクラスで気になっている異性を言わないといけない。

 それだけは絶対嫌だ。何としても回避せねば!


「じゃ、じゃあ古井さんがあがったから、次は俺の番だな」


 俺は手札をじっくり見つめながら、必死でこのピンチをどう乗り越えるかを考えた。

 ひなみと友里の手札は少ない。だがこの2人は序盤でかなり強いカードを連発して出していた。

 つまり、2人の手札はそこまで強くないと考えた。

 勿論、これはあくまで可能性の話だ。最後の最後に切り札を残している可能性もある。

 油断は出来ないが、ここは勝負に出るしかない!


「よし、俺は12を出すぞ」


 俺はそっとダイヤの12を1枚手札から出した。

 もしここで12以上のカードを出されたら、かなりまずい。特にひなみの手札は残り2枚。

 ここであがられたら、俺の敗北はほぼ確定する。

 頼む……。何も出さないでくれ……。

 俺は冷や汗を流しつつ、次の番の人、つまり友里の反応を恐る恐る探った。

 

「ま、まあ本当はここであがれるんだけど、そうすると、ちょっと涼が可愛そうだし、ここはパスをしておこうかな~。ど、同情のパスってやつ? い、言っておくけど、手札が弱いとか、ルールを分かってないとか、そんなんじゃないからね! ち、違うからねっ! 絶対に違うから!」


 いや分かりやすっ!

 さっきから目があちこちに動いているし、所々台詞噛んでいるぞ!

 絶対12より強いカード持ってないでしょ! 

 それに同情のパスって何⁉ 初めて聞いたんだけど⁉

 友里の奴……焦りを隠しきれてない。

 何て分かりやすい反応なんだ!


「友里はパスを選択するのか。じゃあ次はひなみの番だな。何出すんだ?」


 何とか友里はパスをしてくれたは良いが、問題はひなみだ。

 この中で一番手札が少ない。次にあがれる可能性が高いのはひなみ。 

 ここでもし12以上のカードがあったら負け確だ!

 ひなみはどう出る⁉ 


「う、うぅぅ。わ、わ、私も友里と同じでパ、パスをします。て、手札が弱いとかそういうのじゃなくて、戦略的なパスだからね。うぅぅぅぅ。どうしよう……。どうしたらいいの……。うぅぅぅぅ」


 ひなみもかよっ⁉

 何その絶望に満ちた顔!

 2人揃ってなんつー分かりやすい反応だ!

 絶対手札弱いだろ。顔赤いし、目がうるうるしてて、今にも泣きそうじゃねーか!

 も、もしかしてこの2人……。

 序盤で強いカードを使い果たしてカスしか残ってないんじゃね?

 もしそうだとしたら……。ただのアホだよ、この2人っ!

 俺が衝撃的な事実に気が付いたと同時に、後ろで静観していた古井さんが「なるほどね」っと小さく呟いた。

 さすがの古井さんも、友里とひなみの状況に気が付いたみたいだな。

 そりゃあの古井さんだ。気が付かない訳がないよな。

 

「同情のパスに、戦略的なパスね。なるほどなるほど。このゲームも盛り上がりそうね。実に面白い」


 おいいおいおい!

 古井さん、気が付いてねぇぇぇぇぇぇぇっ!

 友里とひなみの必死の言い訳を真に受けちゃってるよ!

 何で俺の正体は見破ったのに、この2人の反応から状況を推測できねぇーんだ!

 ドヤ顔で言ってるけど、かすりもしてねぇーよ!

 それに最後の「実に面白い」って何⁉

 ガリ〇オですかっ⁉

 え、何この大富豪……。

 手札が弱くてそれが顔に出ている少女2人と、それに全く気が付いておらずゲームが盛り上がると思っている、勘違い少女。

 何なんだ、このゲームはぁぁぁぁぁぁ!



 あれからさらに時が経ち。

 この闇のゲームもいよいよ最終局面を迎えようとしていた。

 現在ゲーム中のプレイヤーは、俺とひなみのみ。

 そう。奇跡的にも友里があがったのだ。

 まあ。正直あがらせないようにできたんだが、まだ彼女は初心者だ。

 ここで勝ってもフェアじゃない。同情はむしろこっちがしなきゃな。

 ってな訳で、俺とひなみの一騎打ち。

 勝っても負けても恨みっこなしなのだが……。


「う、うぅぅぅぅぅぅ。ま、また戦略的なパスをします……。う、うぅぅぅぅ。もうやめて……」


 何だよ、その泣き顔は……。

 何だよ、その上目遣いは……。

 何だよ、そのうるうるとした瞳は……。

 ちくしょー! 可愛すぎるだろっ!

 1000年に1人の美少女の泣き顔をこんな至近距離で見たら、心苦しくなるわ!

 元々のパーツが良い上に、同情を誘うかのような泣き顔なんて、反則でしょ!

 フェアじゃねぇー!


「じゃあ、俺の番だな。そ、そうだなー。何を出そうかな」


 俺の手札は残り2枚。対してひなみは1枚。

 つまり、勝負はこの俺の番で決まる。

 ひなみの手札より強いカードを出せれば、俺の勝ちが確定。

 悪いがひなみ。この勝負だけは負ける訳にはいかない。


「よし、じゃあ9でも出そうかな……」


 今の俺の手札は4と9しかない。

 ここで9を出して勝負を決める。

 俺はそっと視線をひなみの方に移し、彼女の様子を観察したのだが。


「きゅ、きゅ、きゅ、9を出すの⁉ りょ、りょ、涼君良いの⁉ 私あがっちゃうかもだよ⁉ た、たぶん……」


 な、何て動揺ぶりだ。

 これ絶対9より強いカード持ってないだろ……。

 何このバレバレな反応……。

 4を出してみたらどうなるんだ?


「じゃあやっぱり変えようかな。4を出そうかな?」


 好奇心のあまり、あえて4を出そうかと呟いてみたのだが。


「うん! 4なら大丈夫だよ! やったー!」


 アホかっ!

 何そのストレートな喜び方!

 大富豪のルール知ってます⁉

 間違いない。ひなみの手札には4以上9以下のカードしかない。

 アホだよ、自分で言っちゃてるよ……。


「やっぱり9にしようかな……」


 またしても好奇心でこんなことを言ってみると。


「う、うぅぅぅぅぅ。わ、私は全然9でもいいけど。うぅぅぅぅ。負けちゃうよ……。どうしよう……」


「あー、でも4でもいいかなー?」


「そうだよ! 涼君! さぁ! 今こそ4を出そう!」


「やっぱり9かな……」


「う、うぅぅぅぅ」


 やっぱりひなみは正真正銘の天然じゃねぇーか!

 何だこの100点満点のリアクションは!

 9を出そうとすると、目がうるうるして泣きそうな顔をするのに、4になると途端に満面の笑みになる。

 クソ……。

 可愛いじゃねぇーか! チートだろ!

 このまま9を出せば、ひなみの目から涙が溢れるのは確実。

 だけど、俺が4を出せば、満面の笑みになる。

 勝ちを取って泣かせるか、負けを自ら選び、笑顔にするか。

 何この2択!

 そうか。やっと意味が分かったよ。

 1000年に1人の美少女の笑顔を守るために、自ら罰ゲーム付きの負けを選ぶかどうか。

 これこそが、本当の闇のゲームだったのか!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る