第34話 心理戦!?
この話は、神視点から解説します。
――――
突如始まってしまった闇のゲーム(大富豪)から、既に10分ほどが経過した。
涼、ひなみ、友里、古井。
この4名の内、早くも既に1人だけあがっている者がいる。
絶対に負けられないゲームの中。ただ1人、まるで当たり前かの様に早あがりした者の正体は……。
主催者である古井であった。
(さぁ。思う存分戦いなさい。最後に残った者には罰ゲームよ)
彼女の最初の手札は、はっきり言って神であった。
元々頭脳明晰な古井だが、それに加えて強カードを引き当ててしまうという幸運の持ち主。
優れた頭脳を持つ者が優れた手札を持てば、最初にあがるのも当然。
神様に愛された彼女は、涼たちの後ろでニヤリと笑みを浮かべつつ、この戦いの結末を楽し気に待っていた。
そんな古井が、笑みを浮かべている一方。
ひなみ、友里、涼の3名の顔は反対に険しくなっていた。
まず最初はひなみ。
彼女の手札は残り4枚。多くはない。むしろ少ないと言うべきだ。
しかし、彼女の顔からはまるで敗北の予感しかしない。目があちこちに泳いでいる。落ち着きがなく、慌てているのが見て分かる。
まあ、それもそのはずだ。
(ど、ど、ど、ど、ど、どうしようっ⁉ 残りの手札が弱すぎるよ! これじゃあ最後まで残っちゃう! 序盤で強いカードを使いすぎちゃったよー!)
そう……。彼女は……。
ただの
ゲーム開始当初のひなみの手札は、かなり強かった。大富豪において勝利のキーとなる、2や8(八切り)、jokerが揃っていた。
強運の持ち主。これなら一番にあがれただろう。
だが、彼女は生粋の天然だ。
手札を早く減らせば早くあがれる。
そう考えたひなみは、考えなしに強いカードを序盤で使い果たしてしまった。
なので今ではもうカスしか残っていない。
(だ、だ、だ、だ、だ、だ、誰か助けてえぇぇぇぇぇ!)
心の中でどれだけ叫ぼうと、彼女の助けを求める声は誰の耳にも届かなかった。
続いて友里。
彼女はポンコツひなみとは違い、こういったゲームにはしっかりと頭を使う。
ひなみより手札が1枚多いがそれでも十分ドベを回避できる……はずなのだが、実際はそうでもなかった。
今の彼女はピクリと動かなくなったかのように固まっていた。
途中口をパクパクと動かし、どこか焦っている様にも見えてしまう。
まあ無理もない。
(うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼ 大富豪ってこんなに複雑なルールなの⁉ カードの効果も多いし、全然覚えられないよ! あれっ⁉ 10ってどんな効果があったんだっけ⁉ 2より強いのって3だっけ⁉)
そう……。彼女は……。
ただの
友里は音ゲー以外のゲーム関連はあまり経験したことがない。こういったトランプゲームもそうだ。
唯一ルールを知っているトランプゲームはと言うと、ババ抜きのみ。
大富豪は生粋の初心者なのだ。
故に、戦い方やゲームの流れを全く知らない。というよりルールすらまだ全部覚えていない。
皆が手札を出しているから、じゃあ私も何か出そう。
という思考の結果、強いカードを無意識に使い果たし、ひなみと同様手札はカスしか残っていない。
それに加えてカードの持つ効果もまだ把握していない。
ポンコツひなみが慌てているすぐ隣で、
(うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ルール分からないよ! 誰か教えてぇ~!)
内心で叫びながら固まっていた。
最後の1人は涼だ。
彼は友里とは違い、大富豪を何度も経験している。
つまり、戦い方や流れ、ルールは把握している。
ひなみと友里の手札がもうカスしか残っていない今なら、2番目にあがることができる……と思っていたが、そうでもなかった。
今の涼は、残業で疲れ切ったサラリーマンの様に目から活力がなくなり、また自身の暗い未来に対し絶望しているかのような顔になっていた。
体全身からネガティブなオーラを出すのも仕方がない。
(おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! 手札が悪すぎるだろ! やべぇだろこれ⁉ 負け確定じゃねぇーかっ!)
そう……。彼は……。
ただの
やはりここでも期待は裏切らなかった。数々の破滅イベントを発生させただけはある。
今回もしっかりと悪運を使ってくれたようだ。
ちなみに今の彼の手札は9枚。他2人と比べるとかなり多い。
だがこれにはちゃんとした訳がある。
ゲーム開始当初から手札が既にカスしかなかった上に、古井からの悪質な嫌がらせを何度も受けていたのだ。
大富豪において、5と7にはそれぞれ面白い効果がある。
5スキップと7渡しだ。
5スキップは次の人の番を強制的に飛ばすことができる。これを使うことにより、次の人は手札を何も出せずに番が終わる。
7渡しは隣の人にいらない手札を1枚渡すことができる。必要のないカードを減らしつつ、隣の人の手札を増やせるのだ。
この2枚の効果を古井は隣の人に対して、つまり涼に頻繁に使った。
5スキップ4回。7渡し3回。
これを見事に食らった涼は、絶望のどん底に落とされてしまった。
(クソったれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 何で俺はいつもこう運が悪いんだぁぁぁぁぁぁ!)
己の悪運に対し、怒りと絶望が込み上がって来る涼であった。
落ち着きがないあまり、目が泳いでしまうひなみ。
ルールが分からな過ぎて固まってしまう友里。
運が無さ過ぎて絶望する涼。
この3名による、何ともおかしな大富豪が始まろうとしていた。
―――
事情があって、以前投稿した内容を修正し、再投稿しました🙇
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