第33話 闇のゲームっ!?

 友里とひなみのビンタをくらってから数分後。

 俺が何故ここにいるのかを説明したら、


「本当にごめんなさい!」


 と友里とひなみが同時に謝ってきた。


「別にいいよ。仕方のないことだし」


 ビンタはさすがに痛かったが、悪気があってやった訳じゃないし、怒る程のことでもない。許さない理由なんて逆に見つからない。


「ごめんよ涼。男子にあんな格好見られちゃったからつい」


「私もごめんね、涼君」


「2人とも大丈夫だって。気にするな」


 俺は安心させるために笑顔を見せる。

 頬の痛みがまだ引いておらず、口角を上がるのがつらい。だがそれよりもちょっと気まずさがある。

 女子の部屋に男子1人だけってのも気になるが、それよりも……。

 友里のことだ。

 つい先ほど、頬にキスをされてからもう一度顔合わせしてしまった。

 どんな反応をすれば良いんだ?

 どんな顔をすればいいんだ?

 あ、あれ……?

 俺ドキドキしてんのか?

 そう深く考え込んでいると、


「涼? 大丈夫? なんか暗いよ? 考え事?」


 友里が俺にグッと近づきながら、心配そうに見つめてきた。

 風呂から出たばかりで凄く良い匂いがするし、部屋の明かりが友里の綺麗な肌を照らす。

 や、やべ!

 俺何考えているんだ!


「い、いやなんでもないよ。気にしないで」


「そっか……」


 友里は小さく呟くと、今度は俺の耳元に顔をグッと近づけ、こう囁いた。


「もしかして、さっきの気にしちゃってる?」


「え、ええ⁉ い、いや別に!」


 まさかそんなことを言われると思っておらず、俺は慌ててしまった。

 数歩後退し、取り敢えず友里との距離を取る。このまま至近距離にいたら何だかまずい気がしたからだ。


「ほ、本当何でもないから……。気にしないで」


 つい目を泳がせながら言った俺に対し、友里は小悪魔の様にニヤニヤとした笑みを見せた。


「ふぅーん。本当かな? 本当はちょっと気にしちゃってるとか?」


「い、いや、全然そんなことじゃないから」


「そっかそっか。まあでも」


 友里は一旦言葉を切り、小悪魔らしい笑みを浮かべながらこう言った。


「私は意識してるけどね」


 な、何だその意味深な発言は⁉

 意識してるってどういうことだ?

 

「友里、それってどういうことだ……?」


「さ~て何のことだが分かりませんな~。自分で考えてみてね、この鈍感さ~ん」


 友里は俺にそう告げると、クルっと顔の向きを変え、古井さんの方を見つめだす。   

 すぐ近くで動揺している俺を無視するかのように、友里は古井さんと話始めた。


「それでそれで、古井っち! どうして涼がここにいるのかな~?」


「あら、ごめんなさいね。あなた達の2連続ビンタのせいで、うっかり忘れていたわ」


「ビ、ビンタについてはもう言及しないでよ古井っち……」


「私が涼を呼んだのは他でもないわ。ちょっとゲームがしたいのよ」


 古井さんの口から意外な言葉が飛び出た途端。


「え? ゲーム?」


 俺とひなみと友里は偶然にも同じ言葉が出た。

 俺を女子の部屋に呼んだ理由がゲームをするためか……。

 なるほどな、人生ゲームとかババ抜きして適当に時間を潰そうということか。

 こういう泊りイベントではよくあるよね。うんうん。

 って! そんな訳あるかぁぁぁぁぁぁぁ!

 絶対何かあるぞこれ!

 相手は天下無双のドエス、古井さんだぞ!

 ただのゲームで俺を呼び出すことなんて絶対にしない!

 嫌な予感しかしないぞこれ!


「古井ちゃん、ゲームって何するの?」


 純粋無垢な顔で見つめるひなみ。そんな彼女に対して古井さんはストレートにこう言い放った。


「大富豪というトランプのゲームよ。でもただのゲームじゃない。闇のゲームよ」


 何だよ、闇のゲームって……。どこかで聞き覚えがあるぞ、それ……。

 しかしだ。

 あのドエスがそんな言葉を言うと言う事は、相当やばいんじゃないか?

 今までこの人経由で何度も破滅イベントや、理性ぶっ飛びイベントが発生しているんだ。

 絶対に何かあるはずだ。

 頼むから変なのだけは辞めてくれ。

 せめて一発芸の披露程度にしてくれよ!

 と、心の底から願う俺なのだが。

 あのドエスが俺の願いを聞き入れることなど、あるはずがない。


「最後に残った人は、クラスで気になる異性を皆に言ってもらうわ」


「なにぃぃぃぃぃぃぃ⁉」


 俺達3人は、部屋全体に響き渡る程の大声量をつい出してしまった。

 闇のゲームを言い出したと思えば、次は恋愛話かよ!

 本当この人の言動は予想できねぇ!


「拒否権はないわ。辞退するなら強制的に吐かせる。それともし気になる異性がいないなら、一緒に遊んでみたい異性を言ってもらう。良いわね?」


 キリっとした目つきで全員を俺達を見つめる古井さん。その目からはまるで『逃げるなよ?』とでも言ってるかのようだ。

 

「あの、古井さん。じゃあ何で俺を呼んだんだ? 女子3人でやればいいはずじゃ……」


 仮にこのゲームをやるにしても、何故俺が呼ばれたのかまるで分からない。

 3人で仲良くやればいいのに、異性の俺が居ていいのか?


「今、異性の俺が居てもいいのかって思ってるでしょう?」


「えっ⁉ 何で分かったの⁉」


 おいおい!

 何で俺の考えていることが分かるの⁉

 ドエスだけじゃなくてエスパーなの⁉


「この場で考えそうなことと言えば、それぐらいしかないわ。教えてあげる。理由は簡単。男子がいたら盛り上がるからよ。女子だけでやったらただの女子トークになるし。こういうのは異性がいるからこそ盛り上がるのよ。これこそまさに闇のゲーム」


 闇ゲームの使い方間違ってますけどっ⁉

 盛り上がるために必要な要素として呼ばれただけですかいっ!

 しかも負けたら、気になる異性を言わなきゃならないのかよ!

 絶対に負けられねぇぞこれ!



――――

作者コメント

何とか1カ月間毎日投稿を頑張ったのでちょっと休んでました。

ここからはゆっくり投稿していきます。

コメント返せてなくてすみません!

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