第27話 告白なのか!?

 いつも通りなら肝試しのペアはひなみになっているはず。

 これまでいくつもの破滅イベントが発生していたので、そう思っていたのだが。

 何と相手は友里だった。

 ちょっと意外というか不思議というか。

 そんな感覚に襲われながらも、俺達2人の番が回って来た。


「よし! 次のペア、そろそろ行くぞ。こっちへ来てくれ!」


 華先生の指示通り、俺達は華先生のすぐそばまで近づいた。


「いいか、涼と友里。私達のすぐ目の前にある山道を真っ直ぐ進むんだ。途中別れ道があるが、看板が立っているから、その指示に従ってくれ。それじゃあ思いっきり青春を楽しんで来い!」


 華先生はとびっきりの笑顔を見せると、俺達の背中をグッと押した。

 俺と友里はそのまま真っ暗闇の小さく細い山道を歩き始める。



 山道を歩み始めてから恐らく10分ほどが経過した。

 最初は5分程度で終わるのかと思っていたが、案外時間がかかりそうだ。

 まだ目的地が見えてこない。

 周囲が真っ暗闇っていうのもあるが、もう少し時間が必要だろう。

 ちょっと歩くのが面倒に感じてきた俺のすぐ隣で、


「いや~、さっきの仕掛けにはヒヤッとしたな~。案外ホラー要素あるね!」


 この暗闇の中で超目立つぐらい、友里はニコニコしていた。

 ここまで来る途中、先生や林間学校運営委員が仕掛けたお化けトラップがいくつもあった。

 突然白装束の人が現れたり、奇妙な笑い声が聞こえたり。

 女子だったら即悲鳴を上げて、腕に抱き着いてくるはずなのだが……。

 友里は違った。


「うわっ! 涼見た今の⁉ すっごいリアルだね!」

「えぇっ⁉ なんか笑い声が聞こえる! ちょっと声のする方に行ってみない⁉」

「お化けと友達になれるかな?」


 などなど。

 恐怖を微塵も感じていなかった。

 

「確かにヒヤッとしたな。にしてもちょっと意外だ。友里はお化けとか平気なのか? 全然ビビっているようには見えないし」


「私なら全然平気だよ~。いや~、昔からお化けには興味意欲があってね~。怪奇現象とか超大好きなんだ!」


「そ、そうなんだな」


 初めて出会ったよ、怪奇現象が超大好きっている人に。

 にしても何だ、このテンプレから外れた展開は。

 逆に嫌な予感しかしない。

 そう思いつつ俺達は足を進めていると、突然友里の足が止まった。


「ん? どうした友里?」


「涼前見て。別れ道だ」


 友里の言われた通り、少し先に別れ道と指示が書かれてある看板があった。

 でも迷う事なんてない。行く前に華先生が言っていたあの看板の指示に従えばいいだけだ。

 俺は別れ道の所まで近づき、看板の指示を読む。


「どうやらこの道を右に進むみたいだ。行こうか」


 俺はそのまま右の方へと進もうとするのだが。

 友里が俺の後を追ってこなかった。


「どうした友里?」


「涼、右じゃなくてさ……。左の方に行ってみない?」


「え? 左?」


「うん。肝試しに行く前に、案内板をちょっと見てたんだ。この道を左に行っても到着地点は同じだよ。まあ左の方がちょっと時間かかりそうだけどね」


「え、でも右に行った方が良くないか?」


「まあまだ時間はあるしさ、左行こうよ。それに……」


 友里は視線をスッとそらし、小さくこう言った。


「ちょっと、涼と話したいことがあるからさ。できれば2人っきりになりたい」


 その後少し話し合いをした結果。

 俺の気持ちが先に折れ、友里の提案通り左の道へと進んで行った。



 左の道は当然だが極めて静かだった。

 さっきまでは仕掛けやらがあったが、俺達が今歩いている道にはそれがない。

 聞こえてくるとすれば、後発組の悲鳴ぐらいだろう。悲鳴を上げているほとんどが女子だけど。

 静まり返ったこの空間には、俺と友里の2人しかいない。

 何故だろうか。ちょっとだけ緊張してきた。

 さっきまではちっとも感じていなかったのに。

 多分原因は友里のあの言葉だ。


 『涼と話したいことがある』


 これが引っ掛かる。

 あえて邪魔が入らない道へ行き、2人っきりになる状況を作る。

 何だ、このシチュエーションはっ⁉

 も、もしや告白でもされるのか⁉

 変な期待で胸を膨らませていると、静かに歩いていた友里が口を開きだす。


「あ、あのさ涼。ちょっと良いかな?」


「え? お、おういいぞ」


 ついに来てしまったのか⁉

 本当に告白されるのか⁉

 それとも俺の自意識過剰な妄想だったのか?


「涼に言っておかないといけないことがあるんだ」


「言っておかないといけないこと?」


「うん」


 あ、告白ではないな、この流れは。

 ちょっとばかり期待してしまった俺がバカみたいだ。

 恥ずかしい。

 自意識過剰に恥ずかしさと情けなさを感じていると、友里は顔を下にして話し出す。


「ついさっき知ったばかりだからさ、ちょっと今でも信じられないんだけど、それでも言わないといけない。だから聞いて欲しい……」


「言わないといけない?」


 俺が聞き返すと、友里はコクリと頷いた。


「お昼の時さ、肩の傷のことを聞いたよね。女の子を助けるために交通事故から守ったって」


「ああ。轢かれそうになったから助けに行こうとして、逆に俺が引かれてしまったんだけどな」


「その女の子が、今目の前にいるって言ったら……。涼はどうする?」


「え?」


 ちょっと待て。どういうことだ?

 友里の言葉がもし本当だとすると。

 あの時助けた女の子って……。


「友里、お前があの時の女の子だったのか⁉」


 友里は数秒間沈黙をした後、下に向けていた顔をグッと上に上げた。


「うん。あの時の女の子の正体は私なんだよ」


 俺を真剣に見つめる友里の口は震えておりそして。

 涙がこぼれていた。

 

―――

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