第26話 いつもと違う!?

「この傷、俺が小学1年ぐらいの時に交通事故でできたんだ。友達が道路に飛び出たから助けに行って。それでできちまったんだ」

 

 俺の右肩には生々しい傷跡がある。

 というのも俺が小学1年生の時、出来てしまった傷だ。

 幸い、右肩に車の一部が当たったぐらいで済んだのだが、その傷跡は今も尚消えていない。それに女の子の方はもう引っ越しをしている。今どこで何をしているのかさっぱり分らん。

 だけど、俺はこの傷に関して隠すつもりはない。恥ずかしくもないし、コンプレックスにも感じていない。

 だからいつも人に見られても気にしない。

 しかし、この時だけは違った。

 目の前で俺の右肩の傷を見た友里の反応に、俺は少々戸惑ってしまった。


「もしかして涼ってあの時の……。そんな偶然って……」


 友里の顔はまるでトラウマでも見てしまったかのように豹変している。

 いつも明るく活発で、ちょっとばかりお調子者。

 そんな彼女の印象が、少し崩れかけた。


「ど、どうしたんだ友里? さっきから右肩の傷を見て……。もしかして生々しかったかな?」


「う、ううん全然! ちょっと考えこんじゃっただけだよ!」


「そ、そうか……。なら別に良いけど」


 どこか様子がおかしい。でも深堀はしないでおこう。

 友里のあの様子が若干気になったが、俺はあえて突っ込まないでいた。


 体操着に着替え終えた後、俺達の班はどうにか時間内に昼食を作り終えることができた。

 かなりギリギリだったが、結果オーライ。美味しく食べることができた。

 しかし、昼食中に時折見せる友里の悲しそうな表情が、俺の目に何度か移り込り込み、それが心に引っかかった。


 ○○○○


 昼食を終えてからかなり時が過ぎ、空はすっかり暗くなった。

 時刻は午後8時だが、真夜中とさほど変わらない。

 山の中にあるせいで、辺りは真っ暗。それに加え車の通る音ですら全く聞こえない。

 沈黙と暗闇。この2つが支配する中。

 俺達生徒全員は山のふもとにある、小さな広場に集められた。

 数分もすれば、担任の先生である華先生がドデカイメガホンを片手に、1年生全員の前に姿を見せた。

 大きく息を吸い込み、メガホンに口を当てる。


「よーし、全員揃っているな! じゃあ早速だが、本日最後にイベントである肝試し大会を始めるぞぉぉぉぉ! 青春を謳歌しろ! 我が校の生徒達よ!」


「いえぇぇぇぇぇい!」


 と、華先生の熱量に負けないぐらい、他の生徒達も声を大にした。

 まあ林間学校と言えば、だいたいこれだよな。

 俺達のすぐ後ろには山の途中まで続いている小さな道がある。

 これをくじで決めた2人1組になって、真っ暗闇の中を歩くのだ。

 中々にスリリングだが、道の途中に先生たちの仕掛けもある。

 ハラハラドキドキ要素もあるって訳だ。


「よーしお前ら! 今から各クラスの先生がくじの箱を持ってくるから、ペアを決めてくれ! 準備が整い次第、肝試し大会スタートだ!」


 華先生の言葉の後、各クラスの先生の誘導の元、続々とくじが引かれていった。

 ペアになれるのは同じクラスの人だけ。だが男女共にランダムだ。

 同性同士かもしれないし、異性同士かもしれない。

 誰とペアになるかはお楽しみだ。

 本来ならここでワクワクするはず。緊張したりドキドキしたり。

 だがよ、俺も馬鹿じゃない。

 今まで数々の破滅イベントが連発しているんだ。分かっているさ。くじの結果など!

 どうせいつもの展開になるに決まっている!

 やってやろうじゃないの!

 正体がバレない様に、上手く隠し通してやるぞ! 


「よし、次の生徒は涼か。さぁ、箱の中からくじを引いてくれ。中に数字が書いてあるから、同じ数字同士の人とペアだ。いいな?」


「分かりました、先生」


 俺は分り切っている結果に開き直り、さっさとくじを引き終えた。

 見なくたって分かることだが、まあ見ておこう。

 俺はたった今引いたくじの番号を見てみると。


 『13』


 と書いてあった。

 なるほど。1000年に1人の美少女もきっと13番なのだな。

 俺はくじを片手に握りしめ、既に引き終えたひなみの方へと向かった。


「ひなみ、何番だった? もしかして13か?」


「え? ううん。違うよ。私は7だったよ」


「そうだよな、よしじゃあ準備する……。ちょっと待て。今なんて言った?」


「7を引いたんだけど……」


「7だとぉぉぉぉぉぉ⁉」


 どういうことだ⁉

 今までの流れだと、肝試しのペアも同じになるはずだ!

 おかしいぞ!


「涼君は13だったの?」


「あ、ああ。13だった」


「そっか。涼君と同じが良かったな……」


「え、ごめん。今なんて言った?」


 ひなみが突然声量を下げて聞き取れず、俺は反射的に聞き返した。

 

「う、ううん! 何でもないよ! あ、私ペアの人探してくるね! また後で!」


「お、おう」


 ひなみはそのまま俺の傍から離れて行った。

 ちょっとどこか落ち込んでいるように見えたが、気のせいか?

 いやいや待て。

 そんなことよりも俺のペアって誰だ⁉

 てっきりひなみだと思っていたが違ったんだ。

 一体誰が……。

 俺は真のペアを探すため、首をあちこちに振っていると。

 こんな声が聞こえてきた。


「お~、私のくじの数字は13か~。誰と一緒なんだろうな~」


 ん? 

 今13って言ってたよな。それにこの口調と声。

 もしかして……。

 俺はくじを先ほど引き終えたの元へと歩み寄る。


「友里……。もしかして13番のくじを引いたのか?」


「うん、そうだよ! 涼は?」


「お、俺も13番なのだが……」


「え……。本当?」


「ガチだ」


「じゃあ私と涼がペアになるんだね」


「そうなるな。よ、よろしく」


「う、うん。私の方こそよろしく」


 ちょっと、どういうことですか神様ぁぁぁぁぁぁぁ⁉

 いつものフラグ回収してないんですけど⁉

 これはこれで何か起きそうで不安なんですけど⁉

 頼むから何も起きないでくれよ⁉

 ガチでお願いしますぞおぉぉ⁉

 と、俺は予想外過ぎる展開に、不安を感じていたのだが。

 後の肝試し大会で、俺は衝撃の真実を知ることとなる。


 まさかあんな展開になるなんて……。



―――

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