第25話 あれっ!?

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 タイトル→「地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。」

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――――――


 途中とんでもないハプニングに襲われた俺達だが、緑豊かな山の中にある宿泊施設にどうにか到着することができた。

 遅れて来たのは学年全体を見ても俺達だけ。既に皆昼食の準備に取り掛かっていた。

 林間学校のスケジュールは色々あるが、まず一番最初にすることは皆で昼食を作ることだ。

 ちなみにメニューはカレー。ベターだが、嫌いじゃないし別にいい。

 この昼食は各班ごとに作るため、俺達は野外調理場に着くと急いで料理を始めた。


「よ~し、他の班よりも遅い分、皆で協力して早く作るぞ~」


「友里の言う通り! 頑張るって美味しいカレーを作ろう!」


 友里とひなみは包丁片手に意気込みを見せ、早速ジャガイモやニンジン、豚肉を切り始める。

 ちょっとだけ頼もしい姿を見て安心したが。それも束の間。

 この2人の包丁を裁きを横から覗いてみたら……。


「あれ~? ジャガイモの皮を剥くつもりが実まで結構いっちゃったな~」


「どどどどどどどうしよう友里! ニンジンの皮を剥こうとしたら一刀両断しちゃったよ!」


 お前らどんだけ料理下手なんだよ……。

 この2人のあり得ない包丁さばきに、俺は黙ってなど入れれなかった。

 あんなに大きかったジャガイモが小さくなっているし、ニンジンに関しては意味が分からん。どうやれば皮を剥くつもりが一刀両断できるんだ?


「もしかして、お前ら2人とも料理経験なし?」


「「え? 普通にあるよ?」」


「あるのかよっ!」

 

 2人の口から同時に同じ言葉が出た直後、俺は即ツッコミを入れた。

 嘘だろ。友里とひなみは料理経験があってこれかよ。

 どんだけ手先不器用なんだ?


「友里とひなみ。お前ら2人の得意料理って何だ?」


「え~と、私はカップラーメンかな!」


「私も友里と同じ! カップラーメンなら美味しく作れるよ! 得意分野はシーフード!」


「それ料理じゃねぇーだろ! 誰でも美味しく作れるわ! 味が変わろうと作り方は同じだろう⁉」


 おいまじか! 

 ラブコメアニメだと料理が下手なヒロインはベタだが、この2人はそんなレベルじゃねぇー!

 料理レベル1にも到達していないぞ!

 この2人の手にかかれば、本来なら美味しいはずのカレーも、魔界のスープみたいな地獄絵図へと化す。せっかくの昼食が台無しだ。

 ど、どすればいいんだ?

 2人の料理スキルの無さに絶望していると、希望の光が突如として見え始めた。


「まったく……。友里もひなみも変わらないわね。ほら2人ともちょっとそこどいて。私がやるわ」

 

 こう言って来たのは、天下のドエス王女である古井さんだった。

 そうか!

 古井さんのご両親はレストランを経営しているんだ!

 なら2人よりも包丁さばきができるはず!

 さすが古井さん!


「ちょっと本気出すとしましょか」


 いくつもの修羅場を潜り抜けてきた強者の言う言葉が、古井さんの小さな口から出た直後。

 タンタンタンタンタンッ!

 と、古井さんはリズムよくニンジンを切り始める。

 す、すげぇー! 

 さすが古井さんだ。あんたはやる人だと思っていたよ。


「すごいな古井さん。料理得意なんだね」


「小さい時から親に教わっていたからね。少しだけならできるわ」


「へぇー、そうなんだ。ん? ちょっと待って。少しだけってどういうこと?」


 嫌な予感がしたが、それは見事的中する。

 あれほどリズムよくニンジンを切っていた古井さんだが。

 ブシュッ。

 と、皮膚が切れた音と共に、古井さんの指が軽く切れてしまった。


「ま、またやってしまった……。うぅ……手が痛い」


「えぇ⁉ ちょっと古井さん大丈夫⁉」


「え、えぇ。軽く切ってしまっただけよ」


 う、嘘だろ……。

 あれだけ言っておいて1分もしない間に負傷したぞ! 

 幸い傷口は深くなく軽傷程度だけど、さっきの料理出来ますよオーラはどこ行った⁉


「あちゃ~相変わらず古井っちは包丁握るとすぐ指が切れちゃうね~」


 古井さんのこの状況に見慣れたかのような目をしながら、友里はそう言いだす。


「相変わらずってどういう意味だ?」


「古井っちは手先器用と不器用な面が半分半分あるのよ~。包丁さばきは見事だけど、すぐ指切っちゃうからね~。昔から変わってないな~」


「……まじですか」


 え、じゃあ何?

 俺以外の班メンバーほぼ包丁使えない訳?

 どうにか林間学校に着くことが出来たと思えば、即詰み展開かよっ!

 仕方ねぇ!

 頭をむしゃくしゃかきながらも、俺は古井さんに代わり包丁を握りだす。

 

「よし! 俺が食材を切るからお前らは他のことを頼む!」


「うん分かったよ涼君!」


「おっ! これは頼もしいね~。じゃあよろしく頼むよ涼!」


「ま、まあ手が切れていなければ私1人でもできたけど、今回だけはあなたに任せるとするわ」


 ひなみと友里、古井さんはそのまま他の準備へと動き出した。

 ひなみは野菜を手洗いし、友里はお米を洗い始める。古井さん手が負傷しているので、は火を焚きだした。

 料理経験何てさほどない俺だが、この中だったら一番マシだろう。

 早く作り終えないと、せっかくの昼食時間が終わっちまう!

 それだけは避けなければ!

 烈火のごとく俺は次々と食材を切りかかる。 

 そんな時だ。


「友里。火が焚けたから釜を持ってきてちょうだい」


「オッケイ古井っち!」


 どうやらもう火が焚けたようだ。古井さんの方を見ると激しく炎が燃え上がっていた。

 よし、案外早く火の準備ができたな。

 古井さんの言われた通り、先ほど洗い終えた米を釜に入れ、友里はゆっくりと火の方へと歩き出す。

 この調子なら、どうにか間に合うだろうな。

 と、油断していた俺に思わぬハプニングが襲う。


「あっ! しまった! 涼避けて!」


 友里の慌てた声が聞こえたので彼女の方へと首を傾げると……。

 友里の手から離れ、俺の頭上一直線に進む釜が目に入った。

 え……?

 ちょっとどういうことですか、これ?

 いきなりの展開に抗うことができず、俺の頭に思い切り釜が当たる。

 ドシャッ!

 と米を含んだ水が降り注ぐ。

 頭は当然だが、制服もビチャビチャになってしまった。


「ご、ご、ご、ご、ごめん涼! 石に躓いちゃってその弾みで釜が離れちゃった! 本当ごめん! ど、どうしよう⁉」


 視線をあちこちに泳がせる友里。わざとじゃないことは見ればすぐ分る。

 確かにこの外調理場は転びやすい。大小無数の石があちこちに転がっているし。


「いいよ、友里。故意にやった訳ではないし。俺のリュックに体操着が入っているから持ってきて欲しい」


「ほ、本当ごめん! すぐにタオルと体操着持ってくるね!」


 友里は慌てつつも急いで走り出す。1分も経たないうちに、友里は俺のリュックとタオルを急いで持って来てくれた。

 本当にすぐ持って来てくれたな。


「このリュックだよね⁉」


「あぁ。合ってるよ。体操着の上を出しといてくれる? 時間もないし今ここで着替えるよ」


「う、うん! 分かった!」


 俺はそのまま制服の上を脱ぎ始める。中に着ていた下着もびっちょりだ。

 女子の前で上半身裸になるのは若干抵抗があるが、仕方ない。

 下着も脱ぎ終えた俺は、体操着の上を着ろうとしたが。


「え……?」


 友里は何故かポカンとした表情で呟いた。

 な、何だ?

 いきなりどうした?

 疑問に思っていると、友里は俺の右肩にそっと手を添える。


「りょ、涼。どうして右肩に傷が……。こ、この傷って……。もしかして……?」


 俺の右肩にある傷を見た友里の目は、どこか悲しみに満ちていた。

 どうして昔出来た傷に、そんな目を向けるんだ?

 友里、お前はこの傷を知っているのか?

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