第23話 挟み撃ち!?

 果たしてくじを引いた意味はあったのかと思うほど、予想通りの展開となってしまった。

 なんでだ……。

 別に嫌だと言うつもりはないが、どうしてこう破滅イベントが連続して起こるんだ。

 クソッタレ……。


「ランチの時もそうだったけど、私たちって本当くじ運が凄いよね! ラッキーだよ!」


 ひなみはこの不自然な結果に何1つ疑問に思わない顔をしながら、歓喜した。

 女子3人からしてみれば良いかもしれない。

 だが俺はまだ男子の友達がまともにいない。

 せいぜい挨拶をする程度の中だ。

 ここで班が同じになっていれば、きっと友達ができただろうに……。

 不幸だ。不幸だぁぁぁぁぁぁ!

 そんな絶賛絶望中の俺に、古井さんがさらにとどめを刺しにくる。


「どこぞのど変態童貞さんがいるのがちょっとアレだけど、まあこれはこれでありね」


「おい、だから俺はど変態童貞じゃない!」


「あらそう。じゃあ卒業しているのね。随分と早いのね。尊敬するわ」


「すみません……卒業はしてません」


「謝らなくても良いわよ。分かりきってたし」


 こ、この人はぁぁぁ!

 人の痛いとこ本当によく攻めてくるよ!


「まぁまぁ2人ともそのへんにして。それよりもせっかく班のメンバーが決まったんだし、色々決めようじゃないか!」


 友里が仲裁に入ってくれたことで、どうにか古井さんの攻撃から免れることができた。

 助かったぞ、友里。お前は本当に良い奴だ。

 その後俺たちは班のメンバーが決まり、当日の動きなどについて話し合いを始めた。

 この林間学校は生徒の自立心を育成する目標もある。

 当日の朝は✳︎✳︎広場に集合し、そこから貸切のバスに乗る。

 なので集合場所までは班全員で行かなければならない。

 1人で行きたいが、学校が全員で来いと言っている以上、従うしかない。

 まあ、流石に林間学校でも破滅イベントは起きないよな。

 皆でお泊まりするだけだ。

 大丈夫。神様は俺の味方のはずだ。

 何も破滅イベントは起きない。

 そう信じようじゃないか。


 〇〇〇〇


 それから数日後が経ち、林間学校当日の朝を迎えた。

 集合場所の広場までは、古井さんのお母さんが車を出してくれる。

 そんな訳で、ただいま古井さんママの優しい運転で目的地まで向かっている最中。

 変にバスや満員電車を使わなくて済んだの事はありがたい。

 感謝していますよ。

 でもさ。

 でも……。


「も、もうちょっち涼くん右いける?」


「ちょっとひなみ! そしたら私がキツくなっちゃう!」


 肩を小さく縮めた俺の両隣から、ひなみと友里の言葉が飛び交う。両サイドから女子に押され俺はピクリとも動けなくなっている。

 ただいまの車の席順は以下の通りだ。

 前の2席は古井さんとお母さん。

 そして後ろの3人席が俺とひなみと友里だ。

 まあ後ろのメンバーがこうなってしまうのは仕方ない。

 しかし、なぜ俺が女子2人の間なんだよ……。なんか違くね?

 普通端っこじゃない?

 車体は小さいし、5人乗りだから後ろはキツキツ状態。

 両脇から女子に挟まれてはもう何もできねぇよ……。


「すまん2人とも。これ以上はスペースは生まれない。我慢してくれ」


 やっとの思いで言えたのは良いが、状況はまずいぞ。

 友里とひなみ。2人の整髪剤の匂いが俺の嗅覚を刺激してきやがる。

 それに柔らかい肌の感触が制服越しからでもはっきり分かる。

 おいマジかよ。もし興奮して俺の息子が元気ハツラツになっちまったら笑えない。

 絶対にドキドキするなよ、俺!

 頼むからこのまま落ち着いていてくれ。

 と思った矢先のことだ。


「あらやだ、マップだとこの角を曲がらないといけないのね。ちょっと皆! 急カーブするから気をつけてね!」


 古井さんママは甘い声でそう言うと、ハンドルをグルンっと回し急カーブした。

 車内の後部座席にいる俺たちは遠心力に逆らえず、大きくバランスを崩してしまう。


「や、ヤベェ! ひなみ避けろ!」


「うそっ! キャッ!」


 警告したところで、回避できるほどの空きなどない。

 遠心力に引っ張られた俺は、ひなみの方へと投げ飛ばされ、胸元に思い切り顔をダイブしてしまった。

 胸の柔らかい感触に包まれたと思えば、甘い匂いがツンっと鼻を刺激してくる。

 おおおおおおおおお!

 まずいまずい! 

 理性がぶっ飛んじまう!


「ご、ごめんひなみ! 直ぐに顔を退ける!」


「う、うん……」


 目線を上に逸らすと、真っ赤になったひなみの顔が目に飛び込んできた。

 まずい、これ絶対怒ってる。

 直ぐに退けないと!

 ひなみから離れようとした途端。


「うわっ! 涼避けて!」


 今度は隣から友里の慌てた声が聞こえてきた。

 こんな状況で避ける何て無理だ。

 友里もまた遠心力に逆らえずそのまま引っ張られ、俺の背中に思い切り飛び込んできた。

 離れようと思った直後、背後から友里がダイブしてきたため、俺の顔は再びひなみの胸元に言ってしまった。


「んっ! ちょっとくすぐったいよ……」


 ボソッと呟くひなみの声とは対照に、俺の背後からは、


「いった〜。涼ごめ〜ん!」


 友里はこの密着状態に眉1つ動かしていなかった。

 顔からはひなみの胸の感触が伝わり、背中からは友里のが。

 おいおいおいおいおいおい。

 ふざけやがって!

 こんな展開はなしだろう!


「だ、大丈夫だ2人とも。こう見えても俺の体は頑丈だし」


 ようやく通常運転に戻った所で、俺たち3人は体勢を整えた。

 一時は本当にどうなるかと思ったか……。

 変に興奮してそれがバレたら終わりだよ。この女子しかいない空間でそんな展開になれば、気まずすぎて何も話せなくなる。


「皆急にカーブしちゃってごめんね〜。私すごい方向音痴でよく道を間違えちゃうんだ〜」


「い、いえ。俺は全然気にしてませんよ。」


「本当、この年になると色々不便でね〜。老けてきたし、嫌になっちゃうわ〜」


 そう言ってはいるが、古井さんママは全く老けていない。

 というよりもめっちゃ美人だ。

 多分40代だと思うけど、シワなんてほとんどないしスタイルもいい。

 そうか、古井さんは母親から優秀な遺伝子を受け継いだのか。

 美人の子の親は大体美人だよな。

 羨ましい……。

 心の中で静かに古井さんに嫉妬していた時だ。

 古井さんママが静かにブレーキを踏み、車の速度を落とした。

 あれ? なんでいきなりこんなゆっくりに?

 不思議にそう思っていると、


「あらやだ。すっごい渋滞してるじゃない! これじゃあ間に合わないかも」


「えっ!?」


 古井さんママの言葉に、車内にいる全員の言葉が重なった。

 後部座席から前方の方を見てみると、奥までびっしりと身動きがとれなくなった車の姿が。

 どっかで事故でも起きたのか?

 何が原因か分からないけど、この大渋滞はまずいぞ!

 もしこのままだったら、林間学校間に合わないかもしれん!?



ーーー

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