第22話 林間学校だと!?

 入学して早2週間が過ぎた頃。

 高校生活初のビッグイベントが訪れた。


「おーし皆ー。林間学校の説明をするぞー。よーく聞いとけよー」


 担任の教師である成神華先生は、女性ながらも教室全体に大きい声を響かせた。

 

「林間学校はクラス内の交流を目的としたイベントだ。1泊2日と短い期間だが、これを機に友達を沢山作れよー」


 この学校ではクラス内の交流を深めるために入学後すぐに林間学校が行われる。

 毎年恒例の伝統行事だ。

 男女共学になってもそれは変わらないらしい。


「よし、じゃあこれから班のメンバーを決めるぞー。先生が作ったくじできめるぞー」


 華先生はそのまま教卓の上に箱を置き、さらに続ける。


「このくじにA~Hまでの文字が書かれた紙が4枚ずつ入っているから、それで班を決めるぞー」


 このクラスは全員で32人。1班4人とすると、8班できる。

 この班決めだが、滅茶苦茶大切だ。

 林間学校の夜には2人1組で肝試し大会などが行われる。適当に流す訳にはいかない。

 このくじ引きを気に、俺は何としても男子友達を作る!

 俺の席の周りは何故か女子しかいないし、その上男子達が固まっている場所から距離がある。

 さらにはひなみと一緒に登校しているせいか、凄い嫉妬に満ちた眼差しを向けられている。

 2週間たった今も、まだまともに同性の友達ができていない。

 女子一色の青春も嫌ではないが、男友達は欲しい。

 誤解を解いて、友達を作るぞ。


「じゃあ出席番号順にくじを引いてもらうぞー。箱を回すからどんどん引いてくれ」


 この言葉の後、出席番号が若い人から順にどんどんくじが引かれていった。

 1人1人とくじを引いていき、とうとう俺の元にくじが入った箱が回って来た。

 俺はドキドキしながら箱の中に手を突っ込み、くじを1枚引いた。

 な、中はまだ見ないで置こう。

 もうちょっと落ち着いてから慎重に見てみよう。

 心身を落ち着かせていると、隣の席から、


「あれ? 涼はくじの中見ないの?」


 友里が不思議そうに俺の顔を見つめてきた。


「ああ。もうちょっと落ち着いてから中身を見てみるよ。めっちゃドキドキしてる……」


「えぇ⁉ 班決めのくじでそこまでドキドキするの⁉」


「友里。お前は俺の状況を何1つ分かっていないな。俺はな! まだ男子の友達がいないんだよ! この班決めで仲良くなれる友達が欲しいのだ!」


 熱く燃え上がる俺の眼差しに屈服したのか、


「そ、そうなのね……。ま、まあ1人ぐらい班に男子は要るはずでしょ。女子しかいない班にはきっとならないと思うよ!」


「おいやめろそのフラグ発言」


 友里がフラグ立てたせいで、何かちょっと雲行きが怪しくなりそうだ。

 ま、まあでも所詮はフラグだ。

 未回収の時もあるよな。


「誰が班なんだろうな~。古井っちとひなみはどうだった?」


 と、友里はくじを引き終えた古井さんとひなみの方へと言葉を飛ばした。

 友里の言葉に最初に応えたのは、古井さんだった。

 

「私はA班ね」


 この台詞に続き、ひなみも口を開いた。


「嘘⁉ 私もA班だよ! やったー! 古井ちゃんと一緒だ!」


 おお。なるほど。

 A班はどうやら4人中2人が決まったらしいな。

 1人はドエスが似合う古井さん。

 2人目は1000年に1人の美少女ひなみ。

 個性強すぎて草。

 古井さんとひなみがくじの結果を言い終えた後。

 友里は口を大きく開けて何故か仰天していた。


「本当⁉ 2人もA班なの⁉ 私もだよ!」


 え、なにそのミラクル。

 仲良し女子3人グループが同じ班になるなんて凄い確率だぞ。神様大盤振る舞いしたな。


「やったー! 古井ちゃんに続いて友里も同じ班なんだね! すっごく嬉しい!」


 俺のすぐ隣でくじの結果に大喜びをするひなみ。

 一方古井さんは、


「あら、奇跡ってこんな身近にあるものなのね」


 あっさりと受け止めていた。

 相変わらず冷静だ。天然のひなみとは違って、やっぱり落ち着きがある。


「あと1人は誰なんだろうな~もしかしたら、涼だったりして。いや、そんな訳ないか~」


「友里、それ何気にフラグ立ててね?」


 フラグを立てまくる友里に、思わずツッコミを入れてしまった。

 何だろう。この流れ。どこか見覚えがある。そしてこの謎にフラグが立つ展開。

 もうだいたいこのくじの中身が予想できてしまうんだが。

 いやいやいや。

 そんな訳ない。

 これはあくまでフラグだ。

 確定した未来でも結果でもない。

 今回は悪いが、男子友達を作るべく俺はA班以外の班を希望するぜ。

 頼むぞ神様。

 俺に恵みの雨を!

 気持ちが整った俺は手に持っていたくじを開いた。

 そして書かれていた文字を見た途端。

 

 俺は極寒の吹雪の中にでもいるかのように、カチンっと固まった。

 嘘だろう…。


「あれ涼君どうしたの? くじを見た途端固まって……」


 俺の不審な行動に疑問を持ったひなみは、俺の隣からそっとくじの中身を覗きこんで来た。


「えーと、涼君の班は……。えっ? 私達と同じA班だ!」


 ひなみの言葉に、古井さんと友里も動揺を隠しきれなかったのか、すぐさま飛びついてきた。


「本当に⁉ フラグ回収しちゃったね!」


「あら、変態童貞さんが同じ班なのね、ちょっと残念だわ」


 クソったれが……。

 何でだよ。

 何でいつもこうなるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


―――

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