第20話 またハメられた!?

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 タイトル→「地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。」

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――――――


 異性の人を下の名で呼ぶ。

 これは交際を始めた男女が始める典型的なあるあるだ。勿論、恋人関係でなくても親しい友人の場合も当てはまる。

 だが総じて言えるのは、リア充でなければ起きないイベントだ。

 リア充という単語とは対極に位置する俺なのだが。

 このイベントが、突如として発生してしまった。


「……え?」


 九条の言葉に、俺は思わず固まってしまった。

 まさか相手からお願いされるとは……。

 

「そ、その……。苗字より、下の名前で呼んでくれた方が、嬉しいから。つい……」


 九条は視線をスッと下へ逸らし、小声で呟く。

 どうしていきなりこんなことになったのかは分からない。

 九条は良い意味で天然だ。考えていることなど予想できない。

 でも俺のことを信用してくれていることは確かだ。

 でなきゃ、あっちからお願い何てするはずがない。

 

「……うん。分かった。苗字で呼ぶのは辞めるよ、ひなみ」


 俺が下の名前で呼んだ途端。

 視線を再び俺の方に戻し、ひなみは口角を上げた。

 そんなに嬉しかったのかな?


「ありがとう、涼君。凄く嬉しい……」


 モジモジしながらも、視線だけは俺の目をはっきりと見つめていた。

 照れながら上目遣いするとは……。

 超可愛いじゃねぇーか!


「そ、それじゃあ電車が出ちゃうからそろそろ行くね、涼君」


「あぁ。また月曜日にな、ひなみ」


「うん!」


 最後にとびっきりの笑顔を俺に見せた後。

 ひなみは俺に背を向け、ホームへと向かって行った。

 どこか嬉しそうにスキップしながら……。



 こうして長かったようで短かったデートが終わりを迎えた。

 古井さんの罠にハマった時はどうしようかと悩んだが、案外楽しかった。

 ひなみの色々な面が知れたしな。

 幼くて純粋で素直で。

 そしてよく笑う。

 とびっきり楽しみながら笑う。

 正体を隠し通したい思いとは裏腹に、そんなひなみともっと一緒にいたい。

 そう思う自分が心のどこかにいた。


 ○○○○


「あー、さすがに疲れたな。もうこのまま寝てぇー」


 デートから帰宅した後、俺は自室のベットに思い切り飛び込んだ。

 家に着いたと当時に、緊張と疲労がグッと俺の体を襲って来た。

 さすがに半日近く女子と遊ぶと疲れるな。

 このまま柔らかい感触に包まれながら、夢の世界に行ってもいい気分だ。でも風呂に入ってないし、歯も磨いていない。あと飯もまだだ。今どうせ寝たって、妹に叩き起こされるだろう。

 俺は睡魔に抗いつつ、ボーっ天井を見つめた。

 破滅イベントが立て続けに起こったが、何とか回避はできたはずだ。

 そう思いたい。ひなみが俺の正体に気が付いたら、色々と面倒だ。

 世間から英雄扱いされている中で正体を明かすなど絶対に無理。

 黙って静かに傍にいるのが得策だろう。

 そう考えている時だ。


「お兄入るぞー」


 妹の美智香みちかがノックもせずに俺の部屋へと足を踏み入れてきた。


「あのさ、何度も言ってるけどノックぐらいはしてよ。年頃の男の子の部屋に気安く入れないでくれます?」


「いや普通にノックすんのめんどい。どうせお兄のことだし、エッチな動画でもみてるんでしょう? もうバレバレだし気にする必要なくない?」


「おい、分かっていても言わないのが優しさだろうが」


 相変わらず俺の扱いが雑だな。

 今日お兄ちゃん頑張ったんだから、もうちょっと優しくしてくれます?

 

「それで用件は? もう飯でもできたのか?」


「残念ハズレ。お兄に電話が来てる」


「え? 電話?」


 美智香は俺に近づいた後、手に持っていた受話器を差し出してきた。

 電話か……。

 何故だろう。まだ誰がかけてきたのか教えてもらっていないが、だいたい予想がつく。多分あの人だ。 

 いやまて。速まるな!

 きっと学校関係者の電話かもしれない。

 あのドエスではないはず。絶対に違うはず!

 

「あ、相手の人って誰?」


「古井さんて人。クラスメイトって言ってたよ?」


 クソったれ……。

 またかよ。またあの人からかよ。

 この電話に出たら、次はどんな任務を言い渡されるか分らん。

 それにこんなヘトヘトな時に、超がいくつあっても足りないドエスと電話なんて無理!

 絶対無理!


「美智香、お兄ちゃんは今深い夢の中に入っていて中々起きない。そう伝えておいてくれ」


 悪いが一旦逃げるぜ古井さん。

 気力体力共に回復した後に電話を掛け直しますよ!


「あ、お兄。言い忘れてたんだけど、保留ボタン押してないから、今も通話中だよ。古井さんから保留ボタンは押さないでって言われたから」


 あのドエスがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 俺が逃げることを分かってて、妹にそう頼み込んでいたのか!

 ってことは今までの会話全部漏れてるじゃねーか!

 やられた……。

 一度ならず二度までも!

 

「わ、分かった。お兄ちゃん頑張るから、美智香は部屋から出てくれ」


「はーい」


 受話器を俺に渡し終えた後、美智香はそのまま部屋から出て行った。

 静かになった自室で、俺はそっと耳に受話器を当てた。


「も、もしもーし……」


 数秒後。受話器から古井さんの声が聞こえてきた。

 

「夢の世界はどうだったかしら? 十分楽しめた? それともエッチな動画でも見てたのかしら?」


「は、はい……すみません」


 ちくしょー!!!

 会話全部聞かれてたから逃げられねぇー!

 言い訳もできねぇー!


「私から逃げれるとでも思っていたのかしら?」


「ほんっとすみません……」


「まあ良いわ。お話良いかしら?」


 あはははははー。

 古井さんとお話か……。

 い、嫌な予感しかしねぇぇー!


ーーー

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