第17話 またかよ!?
不良を撃退した後、俺達はそのまま昼ご飯を食べることにした。お互いお腹が減っている訳だし、今更他の場所にいくのも面倒だ。
フードコートで席を確保し、俺達はそのまま昼ご飯を食べ始める。
イレギュラーな出来事が連続して続き、少々疲れてしまった。まさか女子と2人っきりで遊ぶ羽目になり、不良にまで襲われるとは思ってもいなかった。
自分でも言うのはあれだが、俺はよく頑張っているよ。
だがそんな俺とは反対に九条は、
「美味しぃ―! やっぱりマクドナルポのハンバーガーとポテトは最高だね!」
元気いっぱいだった。というより元気が有り余っていた。
マクドナルポのハンバーガーセットを3つも注文している。
昨日もそうだったが、九条は本当によく食う。
普通の女子ならそこまで食えんぞ。
「九条……。お前よくそんなに食べて太らないよな」
「私の両親ってどんなに食べても太らない体質なの。だがらその遺伝子の影響だと思うよ」
「全国の女子が羨ましがるぞ、それ。どんなに食べても太らないなんてチートだろ」
「そ、そうかな……。一杯食べないとすぐにお腹がすくから凄く恥ずかしい。大食い女子なんて男子からのウケ悪いと思うし。嫌いになるよね、こんな私なんて」
気持ちは分らんでもない。でもお前みたいな美少女が大食いってなると、それはそれでいい気がする。
タイプの奴には絶対に刺さる。
「男子からのウケなんて気にしない方がいいぞ。それに大食いだからって理由で嫌いになるような男はたいしたことない。自分らしく振る舞いな。それが一番だ」
「あ、ありがとう……。そう言われるとちょっと嬉しい……な」
手に持っていたハンバーガーで顔を隠そうとする九条。
視線をそらし、もそもそとしているその様子は、何とも可愛らしい。
照れ隠しをしているみたいだが、バレバレだよ……。
クソ。可愛いじゃねぇーか。
「じゃあ、1つ涼君に言いたいことがあるんだけどいいかな?」
「ん? 何だ?」
「そ、その……」
な、何を言うつもりなんだ?
顔がすごく赤いし、視線もさっきからずっと逸らしてばかり。
九条は何を言うつもりなんだ?
「ハンバーガーセット、もう1つ頼みに行っても良い?」
「……え? あ、うん。いいぞ」
マジか。すでに3つも注文しているのに、さらに頼むのか。
学校では品行方正で人望が厚い。またかなりの清楚系美女。
しかしプライベートでは幼く、また大食い女子でもある。
おいおい、ギャップ萌えかよ……。
○○○○
昼食を終えた後、俺達はショッピングモールを後にし午後の遊びを始めた。
まだ時間もあるし、ここで帰るのは少々勿体ないと言う事で、九条とのデートは続行。
正体を隠し通したい一方、この展開に喜ぶ自分がいた。
最初は面倒だったが、九条は本当に良い奴だしすっごい可愛い。
こんな子とデートできるなんてそうそうない。
正体を隠しつつ、ちょっと楽しむか。
と言う事で、俺達はゲームセンターに足を運ばせた。
金のない男女の遊び場など限られてくる。
ゲーセンならほどよく時間も潰せるし、楽しめる。
2人で遊べるゲームを探し、早速俺達はゲームを開始した。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! りょ、涼君! ゾ、ゾンビがいっぱいだよ⁉ ど、どうしよう⁉」
俺達が最初に決めたゲームは、ワールドパニックと呼ばれるゾンビゲームだ。
銃を使って、画面にいるゾンビをひたすら打ちまくる。シンプルでスリリングなゲームのため結構人気だ。
俺はこの手のゲームには慣れているから、ライフポイントは満タン。だが九条は残り少し。
まさかここまで九条がゲーム音痴とは思わなかった。
真面目で器用そうに見えるが、結構ドジっ子なんだな。
「これだけの数だと、銃で対応するのは難しいから、手榴弾を使うんだ」
「わ、分かった! でも、手榴弾のボタンは分るんだけどどうやって投げるの?」
「投げ方は簡単だ。銃の側面に十字キーがあるはず。投げたい方向の矢印を押すんだ」
「ありがとう! じゃあ使うね!」
九条はそのまま手榴弾を使い投げ始めたのだが。
どういう訳か、投げた方向がゾンビではなく俺の方だった。
そのまま足元に手榴弾が転がり落ち、その瞬間。
ドバン!
と、爆発した。
爆心地にいた俺のライフポイントは当然だが一気にゼロになりそのままゲームオーバー。
「おい! どこ投げてんの⁉ 俺に投げてどうする⁉」
「ご、ごめん! 間違えちゃった!」
アホだ。この子生粋のアホだよ。
こんな面白おかしいミスは始めて見たよ。
「ど、どうしよう涼君⁉ もうさっきので手榴弾使っちゃたし、ゾンビの数が!」
「九条、悪いことは言わない。もう諦めるんだ。そのライフポイントで生き延びることはできないぞ」
俺の言葉通り、九条はその後秒でゾンビに攻撃され、無事にゲームオーバー。
こんな終わり方は初めてだ。
「ご、ごめん涼君……。私のせいで死なせちゃって」
下を向き、暗い表情を浮かべる九条を見ていると何だがこっちまで悲しくなるな。
「気にするなよ。たかがゲームだ。これはこれで案外楽しめたよ」
「ほ、本当? 怒ってない?」
「この程度のことで怒る訳ないだろう。あーでも」
「でも?」
「九条がドジっ子でゲーム音痴な事は分った。今度学校で言いふらしてやる」
「そ、それだけはダメェェェ‼」
ぷくっと頬を膨らませたまま、至近距離で見つめて来る九条。
怒ったその顔でさえも、可愛らしいと思えてしまう。
「じょ、冗談だよ。他の人には言わないよ」
「本当に? 約束だよ?」
「勿論だ」
九条は膨らませた頬を元に戻し、元の顔に戻した。
どうやら俺の言葉を信じたみたいだな。
約束なんかしなくても、最初から言いふらすつもりはないんだがな。
「じゃあ涼君! 他のゲームもやろ!」
「ああ。いいよ」
気持ちを切り替えた九条は俺の手を強く握りしめ、そのまま歩き出した。
お、おいまじか。
手を繋いでしまった。女子の手ってこんなにも柔らかいものなのか。
ぷにぷにで小さくて、まるで赤ん坊の手のようだ。
初めて女子と手を繋いだことに若干感動していると、先ほどまで歩いていた九条の足がピタリと止まった。
「ん? どうした九条?」
九条の顔を見ると、顔が青ざめており、体もブルブルと震えていた。
お化けでも見たのか?
でもまだ昼過ぎだぞ。霊が出るには早すぎる。
「りょ、涼君。あ、あの人たちって……」
九条の視線をなぞるように追うと、その先には……。
先ほどのあの不良達が、こちらの方へ向かって歩いていた。
―――
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