第15話 似ている……

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 タイトル→「地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。」

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――――――


「あの! 何度も言っていますが、あなた達と遊ぶつもりはありません。帰ってください!」


 涼君がトイレに行ったと同時に、不良と思わしき4人の男性が声をかけて来た。

 見た目からして格闘技経験者であることが容易に想像できる。

 筋骨隆々で、高身長。さらには腕の太さが私の2倍近くもある。

 うぅ、凄い怖いな。

 怒らせたら絶対に酷い目に遭うのは明確。でも、言いなりになれば何されるか分からない。

 だ、大丈夫。しっかりと相手の目を見て断れば、諦めてくれるはず!


 。 


 リーダーであろう不良が、いやらしい笑みを浮かべながらスマホの画面を私に見せつけた。

 何かと思い、そのまま画面を見てみるとそこには……。

 地下鉄通り魔のインタビューを受けていた時の画像が映し出されていた。

 

「え~、釣れないこと言うな~。ってかさ君……。ネットで有名になってる『1000年に1人の美少女』本人でしょ? ほら、この画像と超そっくり。本人でしょ?」


 ど、どうしよう……。まさかこの人たち、私の正体を知ってて話しかけてきたの?

 この画像を見せれば、大人しく従う。きっとそう思って近づいたに違いない。

 で、でもここで屈したらお終い。

 頑張って私1人で追い払うんだ!


「そ、そんなことはどうでもいいじゃないですか! あなた達と付き合うつもりはありません!」


「え~、そんなこと言わないでよ~。で~も~。写真について否定しないってことは、認めるってことだよね?」


「そ、それはっ!」


「まさかこんな可愛い子と出会えるなんて、俺達運良いな~。やっぱりすごい可愛いね~。1000年に1人の美少女と呼ばれているだけはあるよ」


「そ、その……。何度も言ってますけど、あなた達とは付き合うつもりはありません!」


「ショックだわ~。でも君の学校知ってんだよね? あれでしょ? 時乃沢高校でしょう? 断ったり誰かに助けを求めたりしたらさ。今度……」


 この言葉の後、不良のリーダーが発した卑劣な言葉に、私は絶句した。


?」


 な、何でこんなことに。

 学校にまで来られたら、友里や古井ちゃんにまで迷惑がかかる。

 ううん。それだけじゃない。

 他の生徒達にも危険が及ぶかもしれない。

 ど、どうしよう……。

 どうしたらいいの?

 この不良達を上手く説得する方法なんて、何も思いつかないよ。

 あ、あれ?

 何で手が震えてるの?

 何で呼吸が乱れてるの?


「ね? どうすんの? 来るの?」


 恐怖で体が震え、怯えている私を前にしても、不良達の目は少しも穏やかにならなかった。

 まるで、勝利を確信したかのような、そんな目をしている。

 無理もないか……。

 この人たちは私がどちらの選択肢を選ぶかなんて、もう分かり切っているんだ。

 涼君ごめんね。

 皆には迷惑かけられないよ。友里や古井ちゃんを守りたい。

 傷つけたくない。


「わ、分かりました……。付いていきます。だからそ、その。学校には来ないで下さい。友達にも手を出さないでください……。全部私が引き受けますから。だ、だから……」


「え? マジで⁉ じゃあ行こうか。君が大人しくすれば、俺達学校には行かないからさ。


「……は、はい。分かりました」


 怖い。怖いよ。

 きっと酷いこと沢山されるんだろうな。

 でも、私だけが傷つくなら、それでいいよね。

 友里や古井ちゃんの傷つく姿何て絶対に見たくない。

 耐えるんだ、私。

 泣きたい気持ちをグッと堪えるんだ。


「そんじゃ、行こうか」


 不良のリーダーが私の肩に手をかけ、この場を共に去ろうとした時。

 

「おい、お前ら。九条から離れろ」


 反射的に声の後方に振り向くと……。

 キリっと不良達を睨みつける涼君の姿が、真っ先に目に移り込んだ。

 誰が見ても委縮してしまう程の巨漢4人を前にしても、涼君は一切身震いを起こさなかった。

 それどころか、今の彼の顔は、不良達を威嚇し脅している様にも見える。

 す、凄い。

 真っ先に逃げ出してもおかしくないのに、どうして逃げないの?

 

「あ? てめぇ誰だよ? この子の彼氏?」


「いや、違う。ただの買い物に付き合っている同伴者だ」


「はぁ? 何訳分からねぇこと言ってんの? とりあえず邪魔しないでくれる?」


 怒りが大爆発しそうなリーダーの顔付きは、先ほどとはまるで違う。

 これから狩りをする猛獣の様だ。

 す、凄く威圧があって、まともに見れないよ。

 でも。

 相手がどんなに殺気を出していても、涼君は一歩も引かなかった。

 それどころか、目と鼻の先まで近づき、私の肩に置いていたリーダーの手を、グッと掴んだ。


「黙って聞いていれば、随分と卑劣なことをするな。今すぐ彼女から離れろ。そして二度と近づかないことを誓え」


「あ? お前覚悟出来てんの? 殺すぞ? 手離せ」


「もう一度言うぞ。二度と彼女に近づかないことを誓え。そうしたら手を離してやる」


「お前随分調子に乗ってるな? 何? もやしみたいな体で俺に勝てると思ってんの?」


 涼君と不良のリーダーの体格には、かなりの差がある。

 格闘家に素人が挑んでいるようなものだよ。

 もしここで涼君まで酷い目に遭ったらどうしよう……。

 その不安に襲われ、私はつい涼君の目を見つめた。


「りょ、涼君。さ、さすがにまずいよ。私が言いなりになるから、大丈夫だよ。涼君が傷つくことないよ」


 私の言葉に対し、涼君はこう返してきた。


「じゃあ、何でお前1人が傷つかないといけないんだ?」


「……え?」


「他人に迷惑かけたくない気持ちは分かるよ。でも、人としてこの場は見過ごせない。それに、強がってるけど、さっきからすげー体震えてるし、今にも泣きだしそうだぞ? お前の本音を聞きたい。どうして欲しい?」


 ど、どうして欲しい?

 そんなの決まってるよ。

 答えなんて1つに決まってるよ。

 震える口で、私は静かにこう言った。


「た、助けて……」


 この言葉を聞いた涼君は、先ほどまで睨みつけた顔から一変し、にっこりと笑いだした。


「その言葉を待ってた。大丈夫、


 その顔を見て、言葉を聞いて、私は不思議と安心してしまった。

 な、何だろう。この感じ……。

 あれ?

 涼君のこの笑顔を初めて見た気がしない。

 どこかで見たことがあるような。

 不思議に思っていると、突然過去の記憶がフラッシュバックした。

 地下鉄通り魔に襲われたあの日にも私は、 


――俺が何とかする


 この言葉を聞いていた。

 そうだ……。

 それにあの笑顔も見た記憶がある。

 地下鉄通り魔の事件は2カ月近く前の出来事で、あまり鮮明には思い出せない。

 事件当時は頭が真っ白で、とにかく怖かったことしか覚えていない。

 それでも、私の脳が。

 ううん。

 本能がこう言っている気がする。

 涼君があの時助けてくれた男子学生に酷似している、と。

 もしかしてあの男子学生の正体って……。

 まだ確証がある訳ではないけど、いつかタイミングを見てこう聞いてみよう。



―――

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