第13話 何だこの可愛さは!?
今現在、俺の隣には誰もが見惚れてしまう程の美少女、九条がいる。
こんな女性とデートできると想像するだけで、興奮する奴は山ほどいるだろうな。
勿論、本来なら俺もその内の1人になるはずだった。
だが、状況が悪すぎる。正体を隠し通したい俺にとって、この状況は昨日と同じく破滅イベントとなってしまっている。
クソ……。古井さんめ……。
古井さんを恨みながら、俺は携帯をしまう。
「九条。その……。話があるんだ」
俺は九条の方に顔を向け、古井さんが今日来れなくなった趣旨を伝えた。勿論、古井さんが来れない理由は体調不良と伝えてある。まあ本人は仮病を使っているけど。
何故俺達が今ここにいるのか。
その全てを知った九条は不機嫌そうな顔つきとは程遠い笑顔を見せてきた。
「そっか……。古井ちゃん今日来れないんだ。もうそうだとしても、涼君が来ることぐらい先に伝えておいて欲しかったよ! ビックリしちゃった!」
う、可愛い……。
ただ笑って喋っているだけなのに、普通に可愛い。ってかこの状況でも笑顔を見せるって女神ですか?
いかんいかん!
絶対に正体がバレてはいけないんだ!
慎重にならないとボロが出るぞ!
「涼君、これからどうする? 本当は私の買い物にこいちゃんが付き合ってもらう予定だったんだけど。どうしよっか?」
今ここで九条に1人で買い物に行ってもらえるなら、有難い話だ。
だが、古井さんから言い渡されたミッションは……。
九条の買い物に今日1日付き合う。
これを達成しないと、後で俺の正体が暴露されてしまう。
本来ならもう帰りたいところだが、そうすれば俺は確実に死ぬ。
逃げる訳には行かない。
いいぜ……。やってやるよ!
1000年に1人の美少女と、今日1日買い物デートしてやるよ!
「まあ、せっかくここまで来たんだ。九条の買い物に付き合うよ。どうせ帰ってもやることないしな。それに交通費も無駄になる」
「え⁉ そんないいよ! だって私と一緒にいてもつまらないよ! ただ洋服見て買い物するだけだし!」
「別にいいよ。さっきも言ったけど今日1日やることがないんだ。さすがに1人で買い物は可哀そうだし、同伴するよ」
「ほ、本当に良いの……?」
九条はぐっと俺に近づき、上目遣いで俺のことを見つめてきた。
至近距離でこの美貌を目の当たりにすると、さすがにドキッとするな。
凄い肌が綺麗で、シミの1つもありゃしない。
常日頃から美容に気を使っていることがすぐに分かる。さすがネット民から騒がれるだけはある。
「ああ。全然良いよ。もう店も開いているだろうし、速く行こうぜ。激混みは避けたい」
「うん! ありがとう! じゃあ早速行こっか!」
こうして、俺と九条の1日限定のデートが強制的に始まってしまった。
1000年に1人の美少女と一緒に買い物できるなんて、周りの男どもからしたら羨ましいかもしれんが、そんな優越感を味わう暇はない!
正体を隠しつつ、バレない様にしつつ、買い物に付き合う。
それが今日の俺の目的だ。
頼むから、破滅イベントだけは起きないでくれ……。
○○○○
現在時刻は、午前11時過ぎ。
ショッピングモールに着いてから1時間ほどが経過。
九条の買い物は俺の予想通り、服がメインだった。新しい高校生活が始まったばかり。それに合わせて最新のおしゃれを取り入れようと、洋服店を何店舗もはしごしている。
「おお! すっごい! この洋服凄く可愛い! おしゃれだしサイズもピッタリだよ! あぁー、でもこっちの服も可愛いな~。え、ちょっと待って! これも全然ありだよ! う~ん迷うな! 悩ましい!」
そして今。
2着の服を両手に持ちつつ、店内の至る所にあるおしゃれな服に、九条は興奮を抑えられなくなっていた。
まるで、誕生日にどのおもちゃを買うか悩んでいる子供の様に見える。
目が宝石の様にキラキラと輝いているし、ずっと喋ってばかり。
このテンションをかれこれ1時間続けている。
意外だ。意外過ぎる。
学校では清楚でしっかり者のイメージだが、プライベートではちょっと幼いんだな。
「ねぇねぇ涼君! この2つだったら、どっちが私に似合うかな⁉」
ど、どっちの服が似合うだと⁉
今九条が持っている服は、白のワンピースとブラウス。
ワンピースは九条の清楚さをさらにブラッシュアップさせ、圧倒的な破壊力を作り出す。黒髪かつ清楚系の九条には持って来いの服だ。
一方ブラウスは、高校生とは思えない大人の女性感を出し、美しさと可愛さの2つをアピールできる。生まれ持った美貌をさらに引き出せるから、最適と言えるだろう。
何この究極の2択⁉
無茶苦茶難しいじゃねぇーか!
俺の目からしてどっちも似合う。というか似合い過ぎて破壊力の塊と言い換えられる!
それをどちらか一方を選べというのか……。
どちらも捨てがたい。どっちが良いんだ⁉
「涼君? 聞いてる? なんかさっきからずっとボーっとしてたよね?」
「あ、あぁごめん。ちょっと考えごとをしていて」
「もう! ちゃんと話を聞いといてよね!」
ぷくっとリスの様に頬を膨らませる九条から、俺はさっと目を逸らし、視線を泳がせた。
良い意味で目のやり場に困るよ。怒っても可愛いなんて反則じゃねぇーか。
「あぁ、わりぃ。どっちでも似合うと思うけどな。2つ共買うは無しなの?」
「買えるんだったら2つ共欲しいけど、お金が足りないの。だからどっちか1つに絞らないと!」
「悩ましいな。究極の選択だ」
「うん、だからすごーく迷ってる」
九条は「うーん。どうしよう……」とつぶやきながら、真剣な顔つきで黙り込んだ。
たぶん彼女の頭の中では、想像力を駆使して、必死で服を着た自分をイメージしているんだろうな。
今をトキメク女子って、服の1つでここまで悩むのか。
九条は数秒間黙り込んだ後、今度は固く決心したかのような目つきで俺をじっと見つめて来た。
「涼君、お願いがあるんだけどいい⁉」
「え? 別に良いけど」
俺の言葉を聞いた九条は、満面の笑みを浮かべると共に、こう言った。
「今から試着したいから、どっちが私に似合うか見て欲しい!」
「はい?」
え……。おいこれまさか……。
九条のプチファッションショーが始まると言うのか⁉
ーーー
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