第7話 席が隣だと!?
どうやら俺は本当に神様から嫌われているようだ。地下鉄通り魔から助けた女の子が、まさかの同じ学校に所属。さらにはクラスまでも同じ。
なんだこれ?
ネット民から1000年に1度の美少女なんて呼ばれている子と、同じクラスになれたら普通は喜ぶ。
だが正体を隠したい俺にとって、嫌な予感しかしないぞ。
やべーよ。
ま、まあ、例えクラスが同じでも席が遠ければ問題はない。教室で話す機会が少なければ、どうってことない。
俺はそんなんことを考えながら、入学式を終わるのをじっと耐えた。
○○〇〇
入学式が終わり、いよいよ新しいクラスメイトと初めての顔合わせが始まった。
俺のクラスは1年A組。少しばかりワクワクしながら、A組の教室に足を踏み入れた。
若干興奮状態にある俺が最初に思ったこと。
圧倒的に女子生徒が多い!
今年から男女共学にしたので、男子の人数が少ないのはしょうがない。体育館でも女子の多さには驚いたからな。
にしてもだ。にしてもだよ。
A組のクラス人数は32人。その内、27人が女子生徒で成り立っている。男子の人数はわずか5人。
パッと女子生徒を見る限りでは、ほとんどの子が可愛い。前後左右どこを見ても、可愛い子しかいねぇ。
なんだここ? モデル育成学校か?
もし男子の先輩がいれば、目を付けれらてグイグイアタックされてもおかしくないぞ。
クラスの女子のレベルの高さに驚きつつも、黒板に張り出されている座席表を確認。これから1年間使う席に俺はずっしりと腰を下ろした。
さて、どうやって友達を作ろうか。
女子が過半数を占めるこの学校でどう青春を楽しむか?
天井を見つめながら考え始めると。
「おお! 涼と私の席って隣じゃん! ラッキー!」
前方から名前を呼ぶ声が聞こえた。
声がした方に顔を向けると、すぐ目の前に友里が立っていた。体育館を出る時に、トイレに行くと言ってたから、今来たのか。
友里は俺の左隣の席に座り、ニコニコしながらこちらを見つめて来た。
「いや~、まさかここでも隣になれるとは、幸運ですな~。音ゲーの話題で色々と話したかったから、近くでよかった~」
「ああ。俺も友達が近くの席にいて助かるよ。話せる人がいると安心する」
知り合いが近くにいるのは確かに有難い話だ。
特に入学して間もない内に、友達ができないとその後の学生生活に支障をきたす。
もし友達ができなかったら、この男女比率がぶっ飛んだ高校で、1人で過ごさなければならなくなる。
それだけは避けたいな。
「おお!
ニコニコしていた友里が、突然視線を俺の後ろの方へと向けるとともに、口角を上げた。
と同時に、誰かが椅子を引きずながら座る音も聞こえた。
どうやら友里の友達が俺の後ろに座ったらしいな。
スッと首を後ろに向けると、あのひなみと引けを取らない程可愛らしい少女がツンッと座っていた。
おいおい。何で俺の席周辺にはこんな可愛い子しか座らないんだ?
俺は思わず後ろに座っている子に見惚れていると。
「何かしら? 私に用でも?」
「あ、ごめん。な、何でもないよ……」
まるで猛獣が獲物を狙っている目つきで俺を睨みつけてきた。
こ、怖いぃ。警戒されてる。めっちゃ怖い。
可愛いけど、たぶんこの子超塩対応系女子だ。絶対ドエスだ。
「も~、古井っち! 初対面の人にはもうちょっと優しくしないとダメだぞ!」
友里がつかさず俺のフォローに入ってくれたおかげで、後ろに座っている可愛らしい少女——古井さんは、先ほどよりも穏やかな目つきになった。
「友里、その人誰? もしかして知り合い? もうできたの?」
「そうそう! 受験の帰りにゲーセンで遊んだのよ! そしたら入学式で偶然再会したんだ! いやぁ~、奇跡としか言えないよね~」
「ふぅーん。そうなのね。ってきり友里に近づいて、いやらしいことでも企んでいる、ど変態童貞野郎だと、勘違いしていたわ」
誰がど変態童貞野郎だ⁉
ま、まあさすがに冗談だよな……。きっとツッコミを待っているはずだ。
よし、ここは涼しい顔をして適当にツッコミを入れてみよう。
ファーストコンタクトは大切だ。慎重にいかないとな。
「おいおい、そんな卑劣な事なんて考えてないよ。ただ共通の趣味を持っているだけだ」
「あらそうなのね。さっきの私の言葉の前半部分だけを否定すると言う事は、後半部分は肯定するという訳ね。ふぅ~ん。私の前にど変態童貞野郎さんが座っているなんて、落ち着いて授業が聞けないわ~。いやぁ~ん。ハレンチ」
「おいおい! だから俺はど変態童貞野郎じゃないぞ!」
「ふぅーん。ってことは年頃の女の子に近づいてヤリまくるヤリ〇ンゲス野郎なのね。嫌だわ~、こんな男が私の前に座っているなんて」
「おいぃぃぃぃ! 俺はヤリ〇ンでもないぞ! 女子と付き合ったことなんてない! 生粋のチェリーボーイだ!」
「最低。女の前でそんなことを堂々と言えるなんて、男のおの字もない人なのね。きっと今までのバレンタインは、お母さんからしか貰ったことがないのね。可哀想に」
「ッグ! 反論する言葉が思いつかない……」
な、なんだこの人は。ドエスなんてもんじゃない!
生粋のドエスじゃねぇか!
しかも俺の痛い所を何度もつついてくる。こ、こんな短時間で俺の弱点を探れるなんて、凄いな。
ってなに感心してんだ!
な、何か言い返さないと……。
ああ、でもダメだ!
必死で考えても、あそこまで言われると何も返せなくなる。
反論しようとしている俺の顔を見た古井さんは、
「面白い
鼻で笑いやがった。しかも満面の笑みでニヤリと笑ってやがる!
凄い可愛い笑みなのに、寒気しかしないんだけど!
この人俺で遊んでるよ。俺のことをおもちゃにするつもりだ!
冗談じゃないぞ。こんなドエスが後ろにいるなんて、この先の学生生活がとんでもないことになる。
「随分と面白そうなおもちゃを連れてきてくれたのね、友里。共学になるのに多少の抵抗感を抱いていたけど、ちょっとは楽しくなりそうじゃない」
おい、今俺のことおもちゃって言わなかった?
俺の聞き間違いか?
いや、絶対おもちゃって言ったよね⁉
入学初日から、とんでもないドエス美少女に目を付けられちまったぞ。
「もう~古井っち! そんなこと言ったら、涼がかわいそう! 気にしないでね、涼。古井っちは凄いドエスなの。いじれる人はとことんいじっちゃうの」
「ま、まあいいよ。元々そういうタイプの人だと割り切った方が、メンタルは保てそう」
保てそうとは言ったものの、この先ずっといじられるのは免れないだろうな。
クソ。古井さんの席周辺には、男が俺しかいない。数少ない男子達はこぞって窓側の席に密集してやがる。
運が悪いな……。
ま、まあそのうち何とかなるだろうな。
きっと古井さんもいじるのを辞めるだろうな。
と、楽観的なことを考えていた俺なのだが。
またしても隣の席から声が聞こえた。なんだろう、随分と聞き覚えのある透き通った綺麗な声だな。
「ああ! 友里に古井ちゃん! 私と席が近いんだね! やったー!」
陽気な声とともに、俺の右隣にとある少女が座り込んだ。
俺は視線を横にずらし、誰が座ったのか確認した瞬間。
思わず目を見開いてしまった。
いや、そうせざるを得なかった。
何しろ、長くて綺麗な黒髪が日光をキラリと反射させているため、まるで精霊でも舞い降りたのかと思ってしまった。そして教室の窓から吹く風に髪が踊らされるとともに、洗髪剤の良い香りが俺の嗅覚を刺激して来る。
それに思わず俺はドキッとしてしまったのだが。
その少女の顔を見た途端、俺は神を恨んだ。
恨むしなかった。神だけじゃない。この俺の運命にさえ、負の感情を抱いてしまった。
何でだよ……。何で……。
何であの時助けた1000年に1人の美少女が、俺の席の隣なんだぁぁぁぁぁぁ⁉
――
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