第5話 再会だと!?

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 タイトル→「地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。」

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――――――


 合格通知を受け取ってから1カ月が過ぎた。

 今日は記念すべき高校生活の1日目、つまり入学式。

 学校に到着してから、妙に俺の心が騒がしい。まあそりゃ新しい生活が始まろうとしているんだ。冷静を保てる方がおかしいかもしれん。

 さて、もうあと15分程度もすれば、体育館で入学式が行われる。だがその前にトイレに行きたいな。

 家を出る前に行っとけばよかった。まあ、体育館の近くにあるだろう。俺はそう思い、歩き始めた。体育館は本館の隣にあるため、迷わず行くことができた。

 しかし。

 女子トイレしかなく、男子トイレが無かった。

 う、嘘だろ。え? 

 男子トイレないの?

 あ、そうか。この学校は去年まで歴史ある中高一貫校。だから男子学生用トイレの設置が遅れているんだ。

 女子トイレに入る訳には行かないし、仕方ない。

 俺は猛ダッシュで体育館を去り、校内を走り回った。何人もの人の間を颯爽と通り抜け、首を振りながらひたすら探し回った。

 だが男子トイレのマークが描かれている標識は1つたりとも見つけられない。

 やばい。漏れる……。

 スピードを上げて走り出していると。

 突如数メートル先の角から、突然女子生徒が現れた。

 や、やべぇ! ぶつかる!

 咄嗟の判断でスピードを落とし、何とかギリギリで止まることができたが。


「きゃっ!」


 と、角から現れた少女は驚きのあまり後ろへ転び尻をついてしまった。

 目の前の少女が転んだのは100%俺に原因がある。

 よく周りを見ていなかった俺が悪い。

 しっかり謝らないとな。


「ご、ごめん! よく前見てなくて。怪我はない?」

 

 俺は尻をついた女子生徒にスッと手を伸ばす。すると、俺の手に気が付いたのか、女性生徒は顔をグッと上げた。

 この時。

 俺の脳内に突如として稲妻が走った。

 モデルですら委縮してしまう程整った顔に、透き通るような声。そしてこの黒髪の長髪。

 忘れもしない。忘れるわけがない。

 間違いない。あの子だ。


 俺が通り魔から守った1000年に1人の美少女あの子だ。


 嘘だろ。

 まさか、こんな所で出会うなんて。一体どんな確率だよ。

 神様、こんな超低確率なイベントを起こすぐらいなら、もうちょいマシな展開にしてくれ。もしバレたら面倒なことになりかねん。

 周囲から尊敬の眼差しで見られるのは確実。

 そんな学生生活はごめんだ。常に皆からの期待に応えるなんてしんどい。それに、この子の俺に対する感謝の気持ちは画面越しでも十分伝わった。

 頼むから面倒ごとだけは勘弁してくれ。

 心の中でそう弱音を吐いていると、

 

「あ、わざわざありがとうございます」


 1000年に1人の美少女は俺の手を掴み、体を起こした。

 にしても女子の手ってこんなにも柔らかいんだな。知らなかった。

 って何を考えているんだ俺は。

 気づかれる前に逃げないと。

 俺は顔と体の向きを変え、さっきまで来た方向に逆戻りした。

 だが、いかにも怪しい行動をしていた俺を、あの子は見逃さなかった。


「あなた……もしかして」


 この言葉に俺の体はビクっと、飛び跳ねた。たぶん釣れたばかりの鮮魚のように飛び跳ねてしまったと思う。

 恐る恐る顔を振り向けると、あの子は納得した表情を浮かべながら、


「男子生徒ってことは、外部からの新入生ですよね。道に迷ったんですか?」


 あ、よかった。バレてない。全然バレてない。かすりもしていなかった。

 あっぶねぇー。

 この好機を無駄にするわけにはいかない。適当に返事して立ち去ればいいだろう。


「あ、ああ。うん。そうなんだ。男子トイレを探しているんだけど、見つからなくて」


「そうですよね。この学校去年まで女子高だったから、男子トイレの数が凄い少ないんです。一番近くのだと、この先の角を左に曲がるとありますよ」


「いやー、助かった。あ、それと、ごめんな、さっきはぶつかって」


「いえいえ! 私も急いでて、周りが見えていなかったです」


 うわ、良い子だよ。めっちゃ良い子だよ。原因作ったのは俺なのに、なんていい子。

 完全な偏見だけど、容姿が優れている人ほど性格に難があると思っていたが、この子は違うみたいだ。見た目も中身も魅力的過ぎるだろ、これ。

 共学の高校だったら、先輩に超アタックされるぞ。


「俺の方が悪いから気にしないで。教えてくれてありがとうな」


「また何か分からないことがあったら、いつでも声をかけてください。私こう見えて生徒会の一員なんです!」


「生徒会?」


 俺は思わず聞き返してしまった。

 生徒会の役員であるということは、別に何もおかしくはない。しかしだ。

 確か俺と同い年だから、この子は今日から高校生。それなのに、もう生徒会の役員になっているのはちょっと変だな。


「1年生でもう生徒会に入っているのか?」


「はい! 中等部の3年生の時に、生徒会長を務めていたんです。それでね、中等部の生徒会会長だった人は、高校進学時も、高等部の生徒会の役員になれるのです!」


「へぇー、そんな校則があるんだ。結構特殊だな」


「中高一貫校にしかできない制度ですけどね」


 確かに公立の学校じゃまずできないだろうな。それにしても、こんなパーフェクトな女子生徒が中等部の生徒会長か。凄いと思うと同時に、何故か納得してしまう。

 こんなに容姿が整っていて、人当たりも良いんだ。そりゃ比例して人望も厚いだろう。

 生徒会長の座を争った人は、さぞ大変だっただろうな。ほぼ負け確だし。

 俺が生徒会長と言う肩書を持っていたことに、納得していると、


「あ、ごめんなさい! 私急いでいるんだった。また後でね!」


 突然、腕時計の針を見つめたと思えば、とっさにあの子は体育館の方へと走って行った。まるで神出鬼没だな。

 また後で、なんて言ってるけど、もう話す機会はないだろうな。クラスが一緒で、さらには席が隣でもない限り、絶対ない。

 あんなタイプの美少女にはイケイケの彼氏がいるのが基本だ。

 さて、俺も男子トイレに行こう。

 入学式が終われば、これから1年間過ごすクラスメイトと顔合わせだ。

 楽しみだな。


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