異世界へとたどり着く 07
「無事終わったようじゃの」
静まり返ったリビングでエイスは現れた。メディは両手で顔を隠していて、楓はまだ額に手を当てていた。
「見たところ、しっかりと儀式は行われたみたいじゃな。ほれカエデくん。受け取ってみなさい」
そう言うとエイスは何かを楓に向かって放り投げた。メディの行動に呆気に取られていた楓だったが、こちらに向かってくる物と、エイスの言葉で我に返る。
「これは?」
両手でしっかりとキャッチして、その正体を確認する。それは、サイコロのようなキューブ状の物であり、親指と人差し指で摘める大きさで、向こう側見える程に透明色だった。
「それは魔力を測る物じゃよ。パートナーを得た異世界人は魔力を得る。自分の魔力は気になるところじゃろ?」
エイスに言われて、楓の中でワクワクが生まれ、すぐさまワクワク感は増していく。
「俺も魔法が使えるってことか」
「それでは外に行くかの。メディはどうする?」
未だに赤面した顔を見せないように、両手で顔を隠したメディは、そのままの状態で答えた。
「……うん、行く」
「何時までもそうはしていられんぞ。……多少はドラマチックに演出してみたが、まさかここまで
「演出って?」
エイスの呟きにメディは聞き返した。
「パートナーとの儀式に使用する
エイスの口から演出の内容が告げられて、メディは赤面した顔をさらに赤らめた。
「おじいちゃんのバカー!!!」
耳まで赤くしたメディは、リビングから走り去った。足音から二階へと向かったことは丸わかりだったので、エイスは笑いだした。
「ふぉっふぉっふぉっ。流石、良いリアクションしよるわい」
悪びれる様子のないエイスに、楓はエイスに怒鳴るメディを見て、表情が緩んだ。
「大人しそうな子かと思ったけど、案外そうでもなさそうですね」
「そうじゃの。初対面の人の前であんなに感情を出すのも殆ど無かったしのぅ。これもカエデくんだから、見せられるのかもしれないのぅ」
友好的な態度を見せてくれるエイスのおかげで、緊張していた楓の心は徐々に緩んでいった。
「だと嬉しい限りですね」
「……カエデくんよ。突然この世界に来たのにも関わらず、メディとパートナーになってくれてありがとう。あの子は昔、色々あってのぅ。元気そうに見えて、不安定なところもあるワシはキミにあの子を託したいと思っているんじゃよ」
「初対面の自分に託して大丈夫ですか?もし自分が悪い人間だったら……って考えたりしないんですか?」
勿論自分は悪い人間であるつもりはないんですが……と、後付けしながらエイスの回答を待つ。
「……キミが悪い人間ならば、この家に入れておらんよ。元より、メディに近づくことすら許しておらんがな……」
最後の言葉に恐ろしさを感じて楓は身震いした。
「さて、では行くかのぅ」
エイスはゆっくりとした足取りで、外に繋がる扉へと向かった。後を追う楓はメディが向かった二階への階段を見て、一瞬メディに声をかけようと思ったが、エイスを待たす方が悪いと考えて外へと出た。
「カエデくん。渡した物に力を込めて、そこに投げてみてくれ」
「よし……、ふんっ!」
右手でぎゅっと力いっぱい握り、エイスが指示した場所へ投げた。すると、親指と人差し指で持てる大きさから、直径一メートル程の大きさになり、透明色から灰色へと変わった。
「エイスさん、これは何を意味してるんですか?」
「…………」
目の前で変わったキューブを指さす。エイスはキューブを観察するように見てから口を開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます