第19話 波乱の予感

 帰宅してまず最初に何をしたかと言えば、溜まりに溜まっていたメッセージの処理だった。

 相手は誰かって?

 わざわざ言わなくてもいいだろう?


 『ふーん、へぇ……私のことよりも優先しちゃうんだ』


 仕方なくかけた電話のスピーカー越しに聞こえてくる花凜の声には感情がこもっていない。


 『家族なんでな』


 そう返すと


 『義妹って言ったってまだ月日も浅いし赤の他人でしょ?』


 と、不機嫌な声が返ってくる。


 『花凜が線引きする話でもないだろう』


 どうしてそこまで言われなきゃならないのか、苛立ちを感じながら言った。

 別に花凜個人のことは嫌いじゃない。

 でも最近、面倒だと感じることが増えた。

 別れた後でも別れる前と変わらない接し方をしてくる花凜。

 どういう神経をしていたらそんなことが出来るのかが分からない。

 ひょっとしたら別れた気になっているのは俺だけで、花凜はまだ―――――と思うこともある。


 『もう切るぞ?』


 折角、雪菜と家族らしくなれた気がしていたところに花凜との電話で水を差されるような気分だった。


 『待ってよ』

 『何だ?』


 あからさまに自分でも不機嫌だな、と思えるような声が自然と出た。


 『勉強教えてくれるって言ったじゃん』


 そう言えばそんなことも頼まれていたっけな……。

 特には予定を決めてはいなかったけど、ゴールデンウィーク後半は元々勉強するつもりでいた。


 『そうだったな。明後日が登校日だしそれ以降でいいか?』


 今年は29日金曜日が昭和の日、月曜日が登校日で火曜日からがゴールデンウィークの後半だった。


 『ありがとう、楽しみにしてるね』


 さきほどまでの不機嫌さは何処へやら、スピーカー越しの声は嬉しそうだった。

 

 『そうか。なら今度こそ切るぞ』


 そう言って電話を切ると、不思議と漏れるため息。


 「やっぱり、気にしてるんだろうなぁ……」

 

 あれだけのことがあって何事も無かったように付き合うことなんて出来ないのは重々承知。

 気にしないように努めては来たつもりだったが、自分自身どこかで気にしてしまっているらしかった。

 本当に最初から最後まで調子が狂うな……。


 ◆❖◇◇❖◆


 「ほんとだ、私の知らないところでだいぶ進展してそうだ」


 迎えた登校日、どこまで見透かしているのかも分からない口調で花凜が言ってきた。


 「ようやく家族らしく付き合っていけそうだ」


 あしらうように返すと「ふーん」と興味無さそうな返事があってその話題はそれで終わりだった。


 「そんなことよりも、勉強なんだけど今夜からじゃダメかな?」


 花凜の言葉にピクっと動いたのはどういうわけか雪菜だった。

 

 「どうしたんだ?」

 「ふ、二人で勉強会するの……?」


 雪菜の問いには花凜が答えた。


 「そうだけど?何か問題あるかな?」


 有無も言わさないような圧力じみた答えを笑顔と共に返す花凜に、雪菜はたじろいだのか


 「べ、別にそういうわけじゃなくてその……」


 と、歯切れ悪く否定した。

 正直言って雪菜が来てくれるなら、花凜と二人きりよりかは幾分、俺自身がやりやすいだろう。

 渡りに船とはこのこと、俺は申し訳なさすら感じつつ雪菜に言った。


 「雪菜も来るか?」

 「いいの……?」


 渋るかと思ったが存外、雪菜は乗り気だ。


 「いいよな?」


 花凜の同意を求めると、一瞬つまらなそうな表情を浮かべたが貼り付けたような笑顔で花凜は、


 「もちろん!!」


 と言った。

 

 「ありがとう!!」


 だが、ホッと胸を撫で下ろしながら言った雪菜を見つめる視線が友達に向けるそれではなかった―――――。



 †あとがき†


 イラストを頂きましたので近況ノートの方に追加しておきます。

 可愛いので是非見てやってください‪(っ ॑꒳ ॑c)

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突然ですがエロ漫画家の義母と義妹が出来ました〜おまけにヤンデレ元カノが復縁を迫ってくるんだが?〜 ふぃるめる @aterie3

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