第15話 二人きりの旅行(4)
「いよいよ私の出番ね!」
一日目のガイド?を買って出た雪菜は対価の前払い(昼飯)に満足したのか、軽い足取りで俺の前を歩く。
北に向かってグネグネとした道をひたすら進む。
「なぁ、今から何処に行くんだ?」
さっぱり何処に行くのかも分からない道をさっきから歩いている。
「簡単に教えちゃうとつまらないからクイズ形式にしよっか」
「クイズ?」
「そう!ヒントは日本屈指のパワースポット?」
パワースポットと言ったら真っ先に思い浮かぶのは寺社仏閣の類だ。
あー、でも青山霊園みたいに墓地がパワースポットって場合もあるし……。
でも基本、墓地は寺とセットだ。
「お寺?」
「ブー、残念!神社でした!
デートスポットになってるとか、バブル崩壊後に参拝者が減ったとかそういうことは静岡県民だし知ってる。
「デートスポットになってる場所でしょ?」
「へ、へぇ〜、そうなんだぁっ!」
雪菜のリアクションはどこかわざとらしい。
「まぁ、そんなことはおいといて!創建から今年で1312年なんだって!さっぱり想像もつかないね」
雪菜は強引に話を変えてきた。
なんか不都合なことでもあるのだろうか。
「1312年前だから710年の創建ってことでいいのかな?そういうことならオレたちでも知ってる出来事が一つだけあるよ」
「なんかあったけ?」
「なんと素敵な平城京。鳴くよウグイス平安京。聞いた事ない?」
定番の語呂合わせ、中学校の社会の授業でこうやって覚えたのを思い出す。
「あー!やったやった!」
割とどこでも定番の語呂合わせなんだな。
そんなこんなで境内の到着。
手水舎で手を清めて、いざ本殿へ。
「こういうのってなんかマナーみたいなのあったよね?」
ちょっと不安そうな目で雪菜が見つめてくる。
「二礼二拍手一礼ってやつだな。今言った通りやればいいよ」
母を喪ってからも父と二人で年初の初詣は欠かさず行っている。
小國神社っていう大きな神社があって毎年そこに行っているから自然と二礼二拍手一礼は覚えた。
少し並んで俺達の番が回ってくる。
何をお願いしようかな……無難に家内安全、無病息災か?
それじゃあいつもの初詣と変わらないか……。
チラリと雪菜を見るとお賽銭を投げて既に手を合わせていた。
この旅の目的を思い出す。
雪菜や佳奈さんと家族になれますように、これに決まりだな。
天は自ら助くる者を助く、と言うから神頼みというのは少し変な気もするが……。
祈り終わって俺は頭を上げると雪菜は一生懸命に目をつぶってまだお願い事の最中だった。
なんだかその姿が微笑ましい。
しばらく見つめていると、雪菜が俺の視線に気づいたのか頭をあげてこっちを見る。
「ごめん、待たせちゃった?」
「大丈夫だよ。ちなみに何をお願いしたの?」
あんまり訊くことじゃないかもしれないけどちょっと気になった。
すると雪菜は僅かに頬を赤らめる。
「秘密!」
「そっか。いつか叶うといいね」
◆❖◇◇❖◆
作者は、混んでる場所に行くのが苦手なので初詣は4月に小國神社で済ませています。
いい所なので静岡県西部に来たら是非寄ってみてね!
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