第11話 いきなりの旅行
「――――というわけで中間がこの後に控えているから、このゴールデンウィークは遊び呆けてないで勉強もするように!」
うちの学校、体育祭が5月末にある影響で中間考査は5月半ばになっていた。
既に4月の末日、明日からゴールデンウィークというわけでそれほど時間があるわけじゃなかった。
「悠哉くん、今回も勉強教えてくれるよね?」
隣に座る花凜が、チラッとブラウスの胸元をはだけさせて言う。
過去に一線を超えてただけあってそれくらいで動じたりはしない。
誓って動じたりはしてないぞ?
そういや別れる前までは、勉強が苦手な花凜のために考査の度に勉強教えてたんだっけ。
「まぁ別にいいけど。変なことすんなよ?」
花凜は勉強は苦手でも要領はいいからコツを掴めば出来るタイプだ。
それ故に付き合っていたときは勉強会と称して体を重ねたりもした。
だからこそ、俺は釘を刺す。
もう花凜とそういう関係になるつもりはないし、なりたくもないからだ。
それでも勉強を教えることに了承したのは、あくまでも幼馴染を邪険に扱うつもりはないというその一点に尽きる。
「しないから安心してくれて大丈夫!」
やったー!と小さくガッツポーズをとった花凜に周りの男子の目は釘付けだ。
無自覚なのか或いは意識してのリアクションなのか、とにかく花凜は男子の目を引くのだ。
◆❖◇◇❖◆
「悠哉、父さん明日から佳奈さんと少し遅めの
家に帰ると定時で上がってきた父親が開口一番に言った。
「え?」
そんな話、これっぽっちもされた記憶がない。
「初めて聞いたんだけど?」
雪菜も同じ感想だ。
二人して互いに首を傾げる。
「そういえば言ってなかったわ〜」
やっぱりこの人のせいだったか……なんか納得。
「実はね、昔の同人サークルの仲間から結婚祝いとして旅行券貰ったのよ」
ほら!と佳奈さんが取り出したのはJTBの旅行券だ。
「ちなみにどこ行くの?」
「金沢行こうかなって」
雪菜の質問に佳奈さんは親父の腕に手を回しながら答えた。
若いカップルもびっくりの熱々ぶりである。
「でもね、実は話はそこで終わらないの」
そう言って佳奈さんは封筒を渡してきた。
「悠哉くんと雪菜で旅行に行ってきなさい」
「それなら二人の旅行に俺達が着いていくでも良かったのでは?」
「それだと新婚旅行にならないだろう?」
親父が笑いながら言った。
なるほど夫婦水入らずで過ごしたいから、ということなのだろう。
「わかったよ。ちなみに俺達の旅行先は?」
「2泊3日の熱海旅行です!」
え、金沢に比べたらだいぶ近くないか?
俺はそんな疑問を抱いたが雪菜の方は違うらしい。
「と、泊まりぃぃぃっ!?」
「2泊3日なんだから泊まりに決まってるでしょ〜?」
佳奈さんは何を当たり前のことを言っているの?と言いたげだ。
でも一つ気になることがあった。
「高校生だけだと同意書とか必要だと思うんですけど?」
一般的にホテルなどの宿泊施設では間違いを避けるために保護者の同意や、同意書を求めることが多い。
なんで知ってるかと言えば、花凜と関係を持っていた頃にいろいろあったからだ。
自動精算機のあるラブホテルを調べたことはよく覚えている。
「その辺は大丈夫だから心配しないで?でもエロ同人的な展開にはならないようにね?」
佳奈さんは笑いながら釘を刺す。
「な、なるわけないじゃん!」
顔を赤らめながら即座に否定する雪菜。
そんな反応だとまるでやましいことがあるみたいだ。
「まぁ、悠哉くんはその辺わきまえてそうだから心配してないよ〜」
「というわけで、二人は二人で準備をしなさい」
親父がその話題を締めくくる。
突然決まった旅行に、どこか釈然としないものを抱えつつ俺は、支度をすることにしたのだった。
†あとがき†
さて次回からは義兄妹の仲を深めるための2泊3日の熱海旅行です。
思春期でいろいろ意識するようになった雪菜と悠哉の間に何が起きるのやら……
引き続きお付き合いくださいまし
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