第8話 ちょっとした事件

 「ねぇ、二人って義理の兄妹なんだよね?」


 花凜に俺と雪菜の関係を暴露されたその翌日、義理の兄妹という言葉に好奇心に強い好奇心を抱いたのか或いは単に珍しいだけなのか数人のクラスメイトに席を囲まれていた。


 「そうだけど……?」

 「え、いつからいつから?」


 中でも興味津々!といった具合に質問攻めにしてくるのがクラスでもかなり陽キャの部類な梓道しどうさんだ。

 

 「ついこの前からかな?」

 「わーお、やっぱり男女で同じ屋根の下、なんか起こっちゃったりする?」

 

 もう義母がエロ漫画作家な時点でいろいろ起きまくりだ。

 日常が非日常という異常な生活。

 我ながら上手く韻を踏めてる気がする。

 それは置いといて、ここで回答に時間かけると在らぬ誤解を受けかねない。


 「特には起きてないかなー」


 そう答えるとふーん、と疑うような顔で梓道さんは雪菜の方を見た。


 「ないない!全然ないよ!ホントにないから!」


 慌てて否定する雪菜。

 それを見た梓道さんは


 「まだ何も聞いてないのに……そんなに否定するとか、めちゃ怪しいんだけど?」


 実は雪菜が慌てて否定したのには理由わけがあった。

 時間は少し遡る。


 ◆❖◇◇❖◆


 「悠哉くん、お風呂くめてるから入っちゃって〜」

 

 そう言ったのは、たったさっきまで仕事をしていた佳奈さんだ。


 「分かりましたー」


 言われるがままに俺は、風呂場へと向かった。

 普段、開けっ放しの脱衣所の扉はどういうわけか閉まっていた。

 でも学校から帰宅して疲れていた俺は、中でする衣擦れの音に気づくこともなくその扉を開けてしまった。

 そしてそこに居るはずもない人がいることに気づく。

 それも裸で……。


 「えっ?」

 「あっ!?」


 そこに居たのはつい最近できたばかりの義妹。

 出るところは出た女の子らしい体つきに思わず見つめてしまった。

 仕方ないだろう……?俺だって思春期真っ只中なんだから。

 オマケにお風呂上がりなのか濡れそぼって少し火照って赤くなった肌はとても同人誌的(エロかったって言うと罪悪感が凄いので表現の修正をしておく)だった。

 俺の視線に気づいた雪菜は、慌ててバスタオルで体を隠した。


 「ちょっ……何見てるの!?」


 ようやく雪菜はそこで言葉を発した。

 それまで続いた時間がとても悩ましく長く濃厚なものに思えた。


 「いや、あ、すまん……。佳奈さんがお風呂入っていいよって言うから……」

 「だからって、ノックもせず閉まってる扉を開けないでよ!」


 バンッ!と勢いよく閉められた扉越しに聞こえる声は不満げだ。

 すると後ろの方でクスクスと笑い声が聞こえた。


 「あら〜上手くいかなかったのね〜」

 「あなたが仕組んだんですか……」

 

 同人誌のネタにするつもりなのなちゃっかりメモとってるし……。


 「いや〜仲良くなるためには裸の付き合いが必要って言うじゃない?」


 それはどんな世界線なのだろうか……。

 

 「ここは、エロ同人誌の中ではなくて現実ですよ?」

 「現実をエロ同人誌に寄せるのもいとおかし!」


 そう言うと佳奈さんは、ご飯作る〜と言って去っていった。

 ちなみにその日は一日中、佳奈さんは雪菜に口を聞いて貰えなかった。

 俺としてはいいモノを見せてもらえたので何も不満はないというかむしろ満足、眼福だった。

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