第5話 二人の関係
「はぁー疲れた……てか、なんでそんなに俺達に固執するんだよ……」
学校が終わって放課後、どういうわけか花凜は俺の隣を歩いていた。
「なんででしょーね?自分の胸にを手を当てて考えてみて?」
上目遣いに俺の方を見る花凜、でもその目は笑っていない。
「雪菜は義妹だから、別に何も問題ないだろ?」
高校一年の三月まで俺と花凜は付き合っていた。
でも、常軌を逸した束縛ぶりに俺は疲れ果てそこで関係は、終了していた。
朝から夕方までずっとベッタリで、他の女子と話すのも許されず外出時は、行き先の報告を強要され、挙げればきりがないほどの束縛ぶりに一人でいる時間がなかった。
「いいと思っているの悠哉だけだよ?私は、全然認めてない!」
花凜はそう言って目尻に涙を浮かべた。
こういう仕草が計算されたものなのか或いは天然のものなのか、今でも分からない。
「もう俺達は、別れたんだからお前が認めるも認めないも関係ないだろ?」
「また、そういうこと言うんだ?」
花凜は不意に俺の手を掴んだ。
「ほら触って!私の、こんなにドキドキしてる」
花凜は俺の手を自らの胸へと押し当てた。
「私は、まだ悠哉といたいの……」
そう言って潤んだ瞳を俺に向け上目遣いで花凜は言う。
こういう花凜の仕草に今まで、何度流さられてきたことか……。
どう言ったら傷付けずに俺の言いたいことをわかってもらえるのか、苦慮しながら見つめ合うのだった。
「あーもう、何て言ったらいいのかな……。お前も他にいい人見つけ――――」
見つけろよ、その言葉は俺の口から出ることは無かった。
周りの喧騒を全て置き去りにして、花凜は俺の唇を半ば強引に塞いだ。
「んんっ……」
啄むように何度も何度も…。
強引に引き剥がすべきだというのはしばらく時間を置いてわかった。
また流されてしまっていた。
でも脳裏に焼き付くあの潤んだ瞳と上目遣いの仕草。
例え過去にどんな関係があったとしても引き剥がすのは少し可哀想な気がした。
しかしそれも表向きの言い訳なのかもしれない。
俺は自分が思っている以上に流されやすくて優柔不断なのだ。
本当は本能的にあの頃の熱が恋しくなってしまったのだと気付いたのは、花凛が口を離してからだった。
「久しぶりだね……」
照れ隠しかはにかむように言う花凜、終わったはずの関係に再び熱を灯すような口付けを俺はしばらく忘れることが出来なかった。
◆❖雪菜side❖◆
「え……どういうことなの……?」
突然目の前で始まった男女の睦みあい、そういうことに経験がない故に憧れをもつ、私は目が離せなかった。
そしてその二人は、私の知る人達だった。
「悠哉くん……?」
つい最近できたばかりの義兄と近くの席の女子。
「あの二人ってそういうことなの!?」
今日のやりとりで、仲良さげだなって思ってはいたけど、これはちょっと予想外だった。
「あの二人のことが気になるのかしら?」
二人の行為に目を奪われていると、突然後ろから声をかけられた。
「えっと……」
振り向くとクラスメイトがいた。
でも名前が出てこない。
「
そう言って声の主はニコッと微笑んだ。
「添木さんは知ってるんですか?」
「当たり前よ、花凜と付き合い長いから。稲原さんが気になるなら二人のこと、教えてあげる」
私が望むのなら、と添木さんは言ってくれた。
正直いって義兄といっても元々他人だっただけに関係は薄い。
だから人となりを知るためにも、聞いておくべきだと思った。
「気になります」
「なら場所を改めるから、ついてきて?」
添木さんと私はその場を後にした。
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