第3話 花凜
「転校してきました、稲原雪菜と言います。よろしくお願いします」
なんてことのない朝のショートホームルームで俺は、驚きに包まれていた。
教室に響く声はなんてこともない簡潔な自己紹介なのだが……声の主は、昨日妹になったばっかりの雪菜の声だった。
「あの転校生ちゃん、めっちゃ可愛いやん」
隣の席の幼馴染の
「そ、そうかもな」
とりあえず受け流しておく。
「おん?
「興味持ったところで、彼女になるわけでもなし。そんな騒ぐもんじゃないだろ」
嘘だよ!
内心、めっちゃびっくりしてるし騒ぎっぱなしだよっ!
朝、飯食ってるとき、そんな素振り見せんかっただろ……。
今日から同じ学校ですとか何とか、一言あってもいいじゃんか?
すると隣で俺の言葉に納得したのか花凜は
「そりゃそうだよねー。こんな美少女が横にいたら転校生に興味は示さないよね?」
そう言って地毛なのか染めているのかプラチナブロンドの髪を弄びながらこっちを見つめた。
幼稚園からの腐れ縁みたいな関係だ、いくら花凜が美少女と言えどももうドキドキしたりはしない。
何と言うかあれだ、そういう対象として見れないってやつだ。
嫌、見れなくなってしまったというのが正しいのか?
「とりあえず席は……」
担任の
「まぁ悠哉の後ろでいっか」
なんとも適当極まりないようにみえる座席の決定だが俺は列は、他の列よりも座席数が少なく最後尾の俺の席の後ろには余裕があった。
「空き教室に座席あるから、悠哉は手伝ってやれよー」
「はぁ」
気の抜けた返事を返す。
結局、座席を運んだのは俺じゃなくて何故か鼻息の荒い男子たちだった。
◆◇◆◇
「び、びっくりしたじゃない!同じクラスに悠哉君がいるんだもの!」
休み時間に後ろの席となった雪菜からこっそり耳打ちされる。
「俺もだよ。なんで言ってくれなかったの?」
「私もそう言いたいよっ!」
あ……これお互いに知らなかったやつか。
そう考えると佳奈さんの顔が浮かぶ。
サプラーイズ!とか何とかあのゆるふわボイスで言ってきそうだ。
「お、あれぇ?悠哉は花凜にしか興味なかったんじゃないの?」
そこに花凜が声をかけてきた。
なんとタイミングの悪い!
「いつそんなこと言ったかなぁ……」
「え、さっきだけど?」
全く身に覚えのない事なんですが……。
「しょうがないなぁ。さっきの発言、リピートしようか?」
「結構です!」
心なしか雪菜は疑わしげな目を俺に向けている。
花凜はスマホを取り出して音声を再生した。
『おん?
『興味持ったところで、彼女になるわけでもなし。そんな騒ぐもんじゃないだろ』
一連のやり取りを再生したところで花凜は、ニコッと笑って言った。
「ね?」
「いや、ね?じゃねーよ。どこにもそんな要素なかっただろうが」
「ぴえん」
何と言うか、ただの幼馴染じゃなくてちょっと行動と言動がヤバい幼馴染だった。
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気付いたらちょくちょくPVついてたので更新します。
不定期にはなりますが……よろしくお付き合いくださいませ。
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