最終話 新たな旅路

 キルバスが消えた後、満身創痍のゼノたちはバタリと倒れた。

 それを、しばらくしてやってきたメリエスマの兵士たちが王宮に運び、治療をした。


 やがて目を覚ましたミエーカは、念話で世界の人々に正直に今回の事の顛末を話した。

 キルバスが妻と息子を弟に殺されたことは、多くの人が知っていたので、大半の人はキルバスに同情的だった。


 その後ゼノたちはキルバスの葬儀を執り行い、次期国王にはキルバスの弟の息子が任命され、その後見はテラスが行うことになった。


 そして、その後は祝宴が行なわれ、人々は隣人と無事を喜び合った。



「いつまでも、じっとしているわけにはいかないからな」


「私の治療を待っている人たちがいますから」


 祝宴の一日目が終わると、ミエーカとフィヤネイトは自分の国に帰っていく。

 ミエーカはまた魔物退治に精を出すのだろうし、フィヤネイトは怪我人、病人の治療を神殿で行うのだろう。


 その後、祝宴は一月行われた。

 その間に各国の特使たちが祝いに来る。

 ムスキルやヴァンヘンもやってきて、ゼノたちに礼を言い、再会を喜び合った。


 そして祝宴が終わるとゼノ、アウレ、キーラは旅立つ。


「研究は任せたぞ」


「そっちも頼むよ」


「ああ、この国は任せろ」


 テラスと別れの挨拶をし、王都サタを出発する。


 そしてしばらく行くと、分かれ道になる。


「ここでお別れですね」


「ごめんね、途中で投げ出すことになって」


「いえ、いつまでも先生に頼っているわけにはいかないですから。先生も研究頑張ってくださいね」


「うん、アウレも。いつでも訪ねてくれていいからね」


「はい」


「キーラも旅を楽しむんだよ」


「うん」


「じゃあね」


 ゼノは母校の魔術学校へ、アウレとキーラは魔無しへの差別を無くすための旅へ、それぞれ別の道へ歩き出す。


 歩きながらアウレは思う。


 先生は二度も世界を救った。

 すごい人だ。

 私とは釣り合わない。

 先生はそんなこと気にしないだろうけど。

 でも隣に立つ勇気なんてない。

 だけど、もし、この旅でたくさんの人を助けて、少しでも世界を変えられたなら。

 その時は……。


 振り返るアウレ。

 ちょうどゼノも振り返っていて、目が合うと笑顔で手を振ってくれる。

 アウレも振り返す。


 よし頑張ろう!と気合いを入れたアウレは、キーラと共に、朝日を浴びながら意気揚々と歩きだした。

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勇者パーティーの魔法使いは魔力を失っても最強冒険者 上田一兆 @ittyou

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